111 地獄絵図
パーティー会場が地獄絵図のような様相を呈しているとき……ベリーは仰向けに暗い空を見上げていた。視界の端には炎の腕や巨人の顔が映り、肌にはメラメラと火傷しそうな高熱を感じていた。
(……何が……起きたの……?)
覚えているのは、あのとき目に映ったのは……いまベリーは身体の上に重さを感じていた。数十キロの重さ、身体の重さ、人の重さ……アリエスが覆い被さるように身体の上にいて、二人は陽炎に照らされる地面に倒れ込んでいた。
「……生きていますね、ベリーさん?」
声が降る。アリエスの声。ベリーの視界の間近に、アリエスの顔があった。生きていて良かったなどというお人好しの表情ではなく、至って真面目な顔つきだった。
「……どうして……ワタクシを助けたの……?」
「…………、誤解しないでください。わたしはベリーさんが大切だから助けたんじゃありません。あなたには、わたしがお金を返済し終わるまで生きていてもらわなくてはいけないからです。いまあなたに死なれては、わたしの気が済まないからです」
それはアリエスの本心であると同時に、あくまで本音の一部だった。いまのベリーにはこう言うのが正解だと思った、これ以上の言葉は、彼女をまた怒らせるだけだと思った。
ベリーはアリエスのことを見ていた。何の感情も表さず、ただ無表情に見上げていた。
「…………」
「そんなことより、このフレイムタイラントをなんとかしてくれませんか? 召喚者のベリーさんなら出来るでしょう?」
炎の暴君は、いま屋敷のほうへとノソノソと近付いていた。今度は屋敷を完全に壊滅させようとしているらしい。
「…………無理ね……アレはワタクシの言うことを聞いていない……ワタクシが召喚時に注いだ召喚体への魔力が尽きるまで、破壊の限りを尽くすでしょうね……」
「そんな……」
アリエスが炎の暴君へと振り返る。暴君は屋敷へと、そこにいるシャンディー達へと近付きつつある。
暴君が召喚者のベリーの言うことを聞かない以上、残る方法はベリーが言ったように魔力が尽きるのを待つか、もしくは……。いずれにしても、いまの満身創痍のアリエスには不可能なことだった。
そうでなくても、相手は魔界の領土の統治者の一体、『炎の暴君』を冠せられた存在なのだ。たとえ万全の状態だったとしても、アリエス一人だけでは刃が立たない相手だった。
いくら本来の力ではない召喚体だとしても、高い実力を持つ高ランク冒険者が数人は必要な相手だった。




