103 剣士と拳士
「なるほどね。貴方、魔闘家タイプなのね」
魔闘家とは魔法を使う武闘家のことだ。冒険者職の一つであり、魔法剣士と対になるように魔法拳士と呼ばれることもある。
剣士と拳士では読みが同じなため分かりにくいから、ベリーはあえて魔闘家と呼んでいたが。
「だったらワタクシもそのスピードに見合ったスピードを出さなければいけないわね」
魔闘家は剣などの武器を持たない代わりに、剣士などよりも速いスピードを出すことが出来るのが特徴とされている。己の拳とスピード、状況に即した魔法を使って戦っていくのが魔闘家の戦闘スタイルだった。
ベリーの足元に風をイメージした翠色の魔法陣が浮かび、その光が全身にまとわれていく。風魔法による身体強化であり、よりスピードに重きを置いた強化だった。
ベリーの手に現れていた魔法陣が消え、その代わりとして庭園の上空に閃光色の魔法陣が浮かび上がる。
「『ライトニング』!」
その魔法陣からアリエスへと向かって雷が落ちていく。雷魔法であり、辛うじて避けていくアリエスへとベリーもまた跳び出していく。
上空からの落雷の雨と、ベリー自身による高速剣撃の嵐。
「…………っ!」
頭上と正面からの絶え間のない連続攻撃に、アリエスは辛うじて回避を続けていっていた。雷撃も剣撃も、一撃でも直撃してしまえばそれだけで致命傷になりかねない。またたとえかすっただけでも、体力は少しずつ確実に失われていくだろう。
その戦いを、傍目でしか見ていることが出来ないシャンディーははらはらし続けていた。アリエスはいまはなんとか避け続けているが、いつその均衡が崩れてダメージを受けてしまうか分からなかった。
「反撃して! アリエスお姉さん!」
だから、シャンディーのその言葉は自然に出たものだった。ベリーの連撃を止める手っ取り早い方法が、反撃に転ずることだと直感的に思ったのだ。
「…………っ」
「あはは、ですってよ! それが出来れば苦労はしてないわよね!」
ベリーが笑いを含みながら言う。いまだにアリエスが反撃に転じていないのは、つまるところそれが出来ないから、自分の連続攻撃が強すぎて出来ないからだと判断して。
「避け続けて疲れたでしょう、いま終わりにしてあげる! 『ファイブエアスピード』!」
風魔法による五倍スピード強化。いまのベリーの剣撃の速度はいままでの比ではなく、傍目で見ている観戦者からでもそのスピードは捉えきれていない。まるで無数の閃光が走っているようにしか見えていなかった。
遠くの観戦者達がそうなのだから、間近にいるアリエスにとっては、もはや目で視認することすら不可能だろうとベリーは内心でほくそ笑んだ。実際、アリエスの頬や肩や膝などには細かな斬り傷が増えつつあった。致命傷を受けていないのは、ひとえにアリエスが魔力を今度は全身にまとい防御力を強化しているからだった。




