102 殺すつもり
シャンディーが再びアリエス達へと顔を向ける。アリエスは花壇のなかで片膝をつきながらも、なんとか身体を起こしていた。
そんなアリエスを見て、ベリーは余裕のある声で言っていた。
「へぇ、いまのを防げるなんて、なかなかやるじゃない。ボディガードにほしいくらい」
「……そんなもの必要ないくらい強いでしょう?」
「まぁね。でもこれで分かったでしょう? ワタクシと貴方の力量の差が。貴方はワタクシには勝てないの。素直に負けを認めなさい」
「……申し訳ありませんが……それは出来ません……シャンディー達がわたしのことを信じていますので……」
土ぼこりにまみれながらも、アリエスがまた立ち上がる。ベリーは呆れを込めた小さな息をついた。
「そぅ、残念ね。貴方みたいな優秀な人材を台無しにしてしまうなんて」
言葉は濁したが、つまりは殺すということだった。メークが言ったように、敗北を認めないのなら、どちらかが死ぬまで続くのだから。
ベリーはアリエスを殺すつもりだった。これは正式な決闘であることを示すために、取り巻き達とシャンディー達……ベリーとアリエス双方の味方による立ち会いもさせているのだ。
ベリーの剣を持っていないほうの手のひらに小型の魔法陣が浮かび上がる。剣と魔法による連撃……魔法剣士としての攻撃準備だった。
「…………」
アリエスもまた手足に魔力をまとわせていく。手首から先、足首から先だけにまとわせた、必要最低限とも見える魔力のまとい。
ベリーが地面を蹴るようにしてアリエスへと跳び出していく。アリエスが魔力を手足にまとったということは、必ずや何かしらの魔法や魔力装備を使うと踏んでの先制攻撃だった。
魔法や魔力による攻撃準備をさせる前に叩く。それが魔法や魔力を用いた戦闘における、必勝かつ常勝戦術だとベリーは思っていた。
「ハァッ!」
ベリーが魔法剣を振り下ろす。それを後方へと跳んで避けるアリエスに魔法陣が浮かんだ手を向けて、彼女が着地するのとほとんど同時に。
「『フレイムボール』!」
火球の雨を連打していく。火の手が花壇や木立に引火し、煙と土ぼこりが夜の庭園に立ち上っていく……観戦者達が目を見張るなか、地面付近に燻る黒煙から、横側へと跳び出すようにアリエスが姿を見せた。
「アリエスお姉さん!」
シャンディーが安堵を含んだ声を出す。しかしベリーはその逆で、舌打ち混じりにアリエスをなじるように口を開く。
「しぶといわね。『ロックニードル』!」
続けて手のひらから岩石で作られた全長数十センチから一メートルほどの棘を連射していく。先に撃った風の刃や火球と同様に、直撃すれば大ダメージは免れないだろう連続攻撃。
それを、アリエスは高速で駆け続けることで回避していく。土の棘がぎりぎり間に合わない速度で、彼女が駆けた直後の地面に土の棘がまるで氷筍のように突き刺さっていく。




