101 信じて見守る
「逃がしませんよ、『ダブルスピード』!」
今度は自身の速力を二倍にして、ベリーがアリエスへと迫って剣を横に振り抜く。生身の身体で直撃すれば、胴体が真っ二つに切断される一撃。
「…………っ!」
それを、アリエスは胴体と剣身の間に腕を挟むようにして防御する。まるで格闘技のファイティングポーズのような格好にも見えた防御だが……アリエスは剣撃の威力を防ぎきれずに、横側の花々が咲き乱れる花壇に吹き飛ばされていく。
取り巻き達が歓声を上げるなか。
「アリエスお姉さん⁉」
「アリエス⁉」
シャンディーとピナが叫んだ。シャンディーがメークへと訴える。
「メーク⁉ あれって本気の剣だよね⁉ 死んじゃうよ⁉」
「……決闘ですから……」
「……っ……!」
神妙で重い顔つきで答えるメークに、シャンディーは驚きを隠せない。メークは二人の戦いから目を離すことなく、続けて諭すように言った。
「……お嬢様、これが決闘というものです。どちらかが敗北を認めるか、死ぬか、そうなるまで終わることは基本ありません」
ただし例外も少なからずある。お互い動けなくなり引き分けになったり、あるいは途中で何かしらの邪魔が入って中断された場合などだ。
無論、そういう場合はまた日を改めて決闘することになるのが常だが……。
「……だからといって、決して二人の邪魔をしてはいけません。アリエスさんもベリーというかたも、それを承知で決闘しているのですから。それを邪魔するのは、二人の誇りを……少なくともアリエスさんの誇りを傷付けることになります」
アリエスの場合は誇り、ベリーの場合は自尊心といったほうがより正確かもしれない。似た言葉ではあるが、その両者には明確な違いがある。
「……だからこそ、先ほども言いましたように、アリエスさんを信じて見守るのです。アリエスさんなら、必ずや何とかしてくれるはずです」
「……っ」
シャンディーを不安にさせないために言わなかったが、実のところ、メークにも自信はないのだった。もし自分がアリエスと同じ立場なら、さっきシャンディーが言ったようにこの決闘からそもそも逃げていたかもしれない。
この決闘は、引き受けること自体が、負けを認めているようなものなのだ。メークに考えられた最善の手段は、そもそも決闘を受けない、だった。
「……アリエスさんはこの決闘を受けました。どう転ぼうが結果は変わらないはずの、負け戦なのにもかかわらず、です。……アリエスさんには何か考えがあるはずです……それを信じるのです」
「…………」




