100 決闘
ベリーにはアリエスの言っていることが分からない。一瞬目を丸くする彼女に、アリエスは続ける。
「ベリーさんは覚えていませんが、わたしも、正確にはわたしの家族もピナさんと同じように、あなたからお金を借りているのです。とても大きな額を」
「はあ?」
「たとえベリーさんや皆さんが忘れていても、わたしは覚えています。とても歪んだ形で、素直に感謝は出来ませんが……わたしもピナさんと同じようにあなたに助けられたことは確かですから」
果たしてそれは事情を知っている第三者……ピナ達が聞いたら呆れ返ることだろう。ベリーからは恩赦よりも迷惑や悪意のほうをより多く受けたのに、それでも義理を返そうとしているのだから。
実際、二人の会話を遠くから聞いていたピナは内心呆れて……けれどそれがアリエスらしいとも思っていた。
「それが、いまのこの人生でわたしがまず果たすべき義理だと思いますから。ピナさんと同じく、時間はかかってしまいますが……」
「さっきから何をごちゃごちゃと言っているの? 意味不明なことを言うくらいなら、さっさと決闘を開始しますわよ」
「……はい……そうですね……」
そして二人が黙り込む。ついさっきまでのパーティーの喧騒が嘘のように、静まり返る場と空気。シャンディー達も取り巻き達も固唾を飲んで、二人を見守っている。
暗い夜の庭園、正面から対峙するアリエスとベリーは、まるで荒野で決闘するガンマンのようだった。二人も見守る者達も、そのときを待っている……。
そのとき、庭園に小さな風が吹き抜けて、庭園を取り囲む木立の葉群れを揺らしていく。かさかさ、かさかさ……ささやくような小さな音が皆の耳に届き、とても小さなその葉が一枚、ひらひらと落ちていく。
そして。葉が地面へと到達した。
「『エアスライサー』!」
「『ガードドーム』!」
ベリーが手をかざして風の刃を飛ばし、アリエスが自身の周囲にドーム状のバリアを張ってそれを防ぐ。しかしベリーはすぐさま飛び出して、腰から引き抜いた剣をアリエスのバリアへと振り下ろした。
ガキィン! バリアと剣が衝突する。一見防いだように見えたが。
「無駄ですわ。『ダブルパワー』!」
ベリーが持つ剣身に小さな魔法陣が出現し、魔法の光が剣にまとわれる。攻撃力強化の魔法……その倍率は二倍だった。
バリアにひびが入っていく。魔力を新たに注いで修復と強化をすることも出来たが……アリエスはバリアが破られる直前で後ろに跳んで、ベリーの剣撃を回避する。




