第9話 恋心を抱く少女
———【現在】
ダヴィはスカーレットの話しを終えるとフィーネは両手を合わせる。
フィーネ 「キャーーー!なんて素敵な話~~!」
ダヴィ 「そうか?全部、本当の話だぞ」
フィーネ 「15年間も貯金したお金をスカーレット様を嫁として貰う為に出すだなんて!何てかっこいい話なんだろ~!本当に王子様みたい!」
ダヴィ 「て、照れるな…」
興奮気味に話すフィーネにダヴィはついつい照れてしまい髪をクシャクシャにする。
フィーネ 「でも、スカーレット様は凄く辛い過去があったのですね…」
ダヴィ 「あぁ…。母親の良い金稼ぎとして働いてばかりだったな」
フィーネ 「その後、スカーレット様のお母さまはどうしたんですか?」
問われたダヴィは以前、親友のジョージから聞いた話を思い出す。
ダヴィ 「あれから800万はすぐに使い果たしたらしい。危ない所に手を出して金を借りたらしいが返済出来なくて最後は自殺したって知り合いの伝手で聞いたな」
フィーネ 「そうなのですね…私も自由になりたいな…」
フィーネはテーブルに腕を置きため息をつく。
ダヴィ 「君とエトナは同じ年ごろに見えるが…」
フィーネ 「えぇ。私とエトナは18歳です。20歳になると周りは結婚し始めたり、安定した職業につきますよね」
ダヴィ 「そうだな。16歳から働き始めて20歳には成人の儀式をして結婚…かな。俺は31歳にスカーレットと結婚したけどな」
頬を赤く染めたフィーネは何か言いたげにそわそわする。
ダヴィ 「どうしたんだ?」
フィーネ 「わ、私も結婚したい…な…って…」
急の言葉にダヴィは動揺し手を振る。
ダヴィ 「えっ!?お、お、俺はまだ妻の事―――」
フィーネ 「私!エトナの事が好きなんです!同じ年なのに1人で生活して凄いなぁって!」
ダヴィは先程、言い掛けた言葉に恥ずかしくなり口元を手で覆う。
ダヴィ 「コホンっ。なるほどな」
動揺していたダヴィは咳払いをし誤魔化す。
フィーネ 「私とエトナの出会いは16歳の2年前だったんです。お互いに冒険者の初心者でよく一緒にダンジョンにいってて」
ダヴィ 「そうか。2人は元々、親しい仲だったんだな」
フィーネ 「エトナは冒険者になってから半年後、急に両親が急病で他界しちゃって…。それでも彼は直ぐに立ち直って…かっこいいなって惚れたんです!でも、私は魔法使いだから…庶民の彼にとって周りの目が気になるかなって…」
フィーネは徐々に声が小さくなっていく。
ダヴィ 「そうか…。それで話を聞きたがっていたのか」
フィーネ 「はい。実際に結婚してどうだったのかなぁって聞きたかったんです」
ダヴィ 「案外気にする事がないくらい、俺達夫婦は周りから祝福されてたよ」
フィーネは予想外の返答に目を丸くする。
フィーネ 「っ!?そう…なんですね…。私、今日から胸を誇って彼が好きだと堂々と言えそうです!」
ダヴィ 「ふふ。それは良かった。じゃあ、喋る箱について明日確認してみるよ。今日はもう遅いし、君も家に帰った方が良い」
フィーネ 「わかりました!では、明日よろしくお願いします」
フィーネが深々とダヴィに対し頭を下げると席から立ち上がり、冒険者ギルドの外へ出る。
ダヴィ 「家の近くまで送っていくよ」
ダヴィの提案にフィーネは手と首を横に振る。
フィーネ 「えぇ!だ、大丈夫ですよ!」
ダヴィ 「いやいや。こんな夜道に女性が1人で歩いていたら危ない」
フィーネ 「あ、その…ありがとうございます…」
2人は歩き出すと冒険者ギルドへと迫る姿が見え止まる。徐々に迫ってくると見覚えのある少年の姿にフィーネは瞳をくっきりと開ける。
エトナ 「僕の大切な斧を忘れたーーーーーーっ!!」
全力で走るエトナは2人が立つ位置まで迫ると大きく手を振る。
エトナ 「ダヴィさん!フィーネ!まだいたんだ!」
フィーネ 「うん。今、話し終わって帰る所だよ。ダヴィ様が送ってくれるって」
手が触れそうな距離で立つダヴィとフィーネの姿にエトナは鋭い目つきで見つめる。
エトナ 「へ~~…。じゃあフィーネは僕が送るよ。ダヴィさんは今日、喋るボーンナイトを見に行ってくれたし疲れているだろうしね!」
エトナはフィーネに向い微笑む。
フィーネ 「えっ———?」
エトナ 「じゃ、フィーネ!斧を取ってくるから待ってて!」
フィーネ 「う、うん!わかった!」
エトナが冒険者ギルドの中へ入る後ろ姿を2人は見つめるとダヴィはフィーネに向いウィンクする。
ダヴィ 「エトナが送ってくれるみたいだな。じゃあ、俺は先に帰るからまた明日な」
フィーネ 「はいっ!よろしくお願いします!」
フィーネに別れを告げるとダヴィはランタンを持ちながら夜道の中を歩く。夜中の街は静か吹く風も僅かに肌寒い。
満天の星空と欠けた月が照らす夜道をダヴィは歩き続けると、自宅へ辿り着きドアを引くと中へ入り手に持っていたランタンをテーブルの上に置く。
ダヴィ 「ミミックかぁ…。懐かしいな」
小さな声で呟くと椅子に座りダヴィは過去の出来事を思い返す。
エトナもフィーネの事が———!?
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