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第7話 全財産の価値


 翌朝。玄関口でスカーレットはダヴィにギュッとしがみつく。


スカーレット 「ダヴィ…。あたし…」


ダヴィ 「大丈夫だ。俺がついている。スカーレットの家に向おう」


 スカーレットがコクリと頷くとダヴィは肩を掴み外へ出る。ダヴィは昔、両親に買って貰ったいっちょうらんに着替え、肩には2つの大きな袋を背負いスカーレットの後をついていく。


 歩き続ける事、1時間が経過した。スカーレットはダヴィが住んでいるいる家よりもボロボロな家に指を差す。


スカーレット 「ここがうちなの」


ダヴィ 「入ろうか」


スカーレット 「うん…」


 不安気な表情を見せるスカーレットだがダヴィは肩を掴み抱き寄せる。スカーレットの硬い表情が少しは解かれ家の扉を引くとギィと鈍い音が鳴り中へと入っていく。


 「あんたっ!!どこいってたんだ!」


 家の中に入ると肥満体の女性は、乱暴な口調で声を荒げるとスカーレットの髪を掴み引っ張る。


スカーレット 「い、痛い!!お、お母さん!ご、ごめんなさい!」


 スカーレットの背後に立っていたダヴィは髪を引っ張る母親の元まで歩き手を力強く握る。


 「イ、イタタタ。何だいあんた!」


 ダヴィの握る手から痛みを感じた母親は咄嗟に引っ張っていたスカーレットの髪から手を離す。


ダヴィ 「初めまして。私はダヴィと申します」


 丁寧にお辞儀するダヴィに対し、母親は服装を上から下へ見つめ終えると鼻で笑う。


 「なんだい男なんて連れてきて。まさか、あんた…。こんな貧乏臭い結婚するだなんて言わないだろうねぇ?」


スカーレット 「そ、そ、それは…」


ダヴィ 「えぇ。本日は娘さんを頂きたくご挨拶に参りました」


スカーレット 「えっ?」


 はっきりと答えるダヴィにスカーレットは唖然とする。母親は額にシワを寄せダヴィの顔を睨みつける。


 「こいつの嫁ぎ先はもう決まってるんだ!娘がどこに嫁ぐかは親であるあたしが決める!とっとと失せな!貧乏男!」


 凄い剣幕で怒鳴り散らす母親に、ダヴィは気にも止めず抱えていた1つの大きな袋をテーブルの上に投げるようにドンッ!っと置くと母親の身体はビクッとし家の中は静まり返る。


ダヴィ 「ここに700万のお金があります。こちらのお金で娘さんとの結婚を了承して頂けないでしょうか?」


 大きな袋から物を取り出すと鍵付きの箱が現れ、母親は息を呑む。


スカーレット 「えっ!ダヴィ!そのお金は大切なお金なんじゃ…」


 ダヴィは小さな鍵をポーチから取り出し開錠し開あける。中には大量の札束と金色に輝く通貨がたんまりと入っていた。


 「なんだ、スカーレット。あんた良い男を見つけたじゃないか!あぁ、700万で大丈夫だ。とっとと失せな!」


 突き出した箱に母親が手を伸ばすと、ダヴィは箱を一度閉じる。


ダヴィ 「あぁ。それともう一つお願いがあります。今後、スカーレットと関わるのもやめて頂きたい」


 母親はダヴィが述べる条件に舌打ちをする。


 「あぁん?娘とどう関わろうがあたしの勝手だろ!?」


 ダヴィはもう1つ抱えていた小さな袋から物を取り出すと分厚い札束をテーブルの上に置く。


ダヴィ 「こちらは100万。計、800万でどうでしょう?もしダメなようならこの話は無かった事に———」


 「あぁ!わかったわかった!800万で良い!そんな娘なんて好きにしな!」


 ダヴィは予め書いた契約書をスカーレットの母親に突き出す。


 結婚承諾の契約書に直筆のサインと血で拇印を押させ契約を完了する。


ダヴィ 「契約完了ですね。娘さんは絶対に幸せにしますのでご安心を」


 母親はダヴィに出された大量の金銭を手に持つ。実の娘であるスカーレットが別れの挨拶の言葉を述べるが札束を持ち一人で笑う。


ダヴィ 「さぁ。スカーレット。行こう」


スカーレット 「うん…。お母さん、さようなら…」


 スカーレットは金に酔いしている母親の醜い姿をジッと見つめると家を後にしダヴィと共に外へ出る。


スカーレット 「ダヴィ…。ごめ…ごめんなさい…。私のために大切な…大切なお金を…」


 ダヴィがコツコツと貯めた貯金を出させた事にスカーレットは罪悪感を抱き涙を流す。


ダヴィ 「800万でスカーレットと結婚出来るなら安いもんだ。父さんと母さんはこの日の為に使うように取っておいてくれたんじゃないかな。君と初めて逢ったあの日からきっと俺の貯金を使う道は決まってたんだ」


 スカーレットの両肩を掴みダヴィはニッコリと笑う。


スカーレット 「ありがとう。ありがとう…ダヴィ」


ダヴィ 「良いんだ。さて。結婚の手続きしないとな!スカーレットの必要な物も買わないといけないし!やる事が沢山あるぞ!」


スカーレット 「うんっ!ダヴィ!大好き!」


 スカーレットが勢いよく抱きつくとダヴィは応えるように身体を腕で包む。


ダヴィ 「あぁ。俺も愛しているよ。スカーレット」


 笑いながら涙を流すスカーレットの頭をダヴィは優しく撫でる。

この時のダヴィ、最高にかっこいいです!

読んで頂きありがとうございました!

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