第3話 彼女との出会い
———【6年前】
名前はダヴィ。彼女いない歴と同じ年齢31歳、独身。父親は1年前に他界し母親はショックの余りに食が細くなっていき後を追うようにすぐに他界。
ダヴィは両親に恩返しをする為に、15年前からダンジョンに籠りコツコツと貯金をし続けていたが恩を返す事が出来ぬまま大切な家族を亡くした。
金を稼ぐ理由すら無くなってしまったダヴィだが、16歳の誕生日に両親の前で夢を語った"最下層にいるドラゴンを倒す"のみが果たせずにいたのでダンジョンに通う理由は十分にあった。
ダヴィ 「昨日はダンジョンの地下20層まで攻略したんだよな…。ドラゴンがいる階層は地下30層。後もう少しだな」
ダヴィは15年の年月を経てようやくダンジョン地下20層まで攻略し最下層まで後10層と迫っていた。ダヴィはメモをポーチから取り出す。
ダヴィ 「確かギルドの情報だと地下21層のモンスターは動く骨の兵…。ボーンナイトだな」
ページをめくっていくと地下21層の攻略!と汚い字で書かれたメモの文字を眺める。
ボーンナイトは甲冑を装着し、剣と盾を器用に使う!と書かれているメモを心の中で読み上げると再びポーチの中へと入れる。
ボーンナイトの攻略を頭の中で描いているとあっという間に冒険者ギルドに辿り着き中へと入っていく。
ジョージ 「よう!ダヴィ!おはよう」
ダヴィ 「あぁ。ジョージか。おはよう」
顔なじみのジョージと挨拶を交わすとダヴィは錬金術師が売買するショップへと向かう。
ダヴィ 「おはようございます。今日は移動書が欲しいんですが…」
「なんだ。またお前か。庶民のあんたも懲りずにダンジョンに通うねぇ」
赤い瞳をした女性の錬金術師はダヴィに対し不愛想に返答する。錬金術師は魔法が使えない庶民をあからさまに見下す。
ダヴィ 「冒険者ギルドに年齢制限は無いんで…。何歳になってもダンジョンの中に入れるのは光栄ですね」
魔法使いは国の宝として丁重に扱われ、身分も必然的に高い。お貴族様の気分を損ねないようダヴィは当たり障りの無い言葉を選び口にする。
「5万だ。我々が作る物にしてはかなり安価な設定だ。光栄に思え」
ダヴィは要求された金銭を取り出すと錬金術師に渡す。
ダヴィ 「ありがとうございます」
礼を言うとダヴィはその場を後にする。
ダヴィ (何が安価だ。5万は俺達にとって2週間分の生活費と同等だ)
心の中にモヤモヤを抱えながらダヴィはすぐ近くにあるダンジョンへと向かう。冒険者ギルドを後にし歩き続けているとまっさらなコンクリートで出来た地に辿り着くと深呼吸をする。
ダヴィ (ドラゴンを倒せば錬金術師は目の色を変えて素材を欲しがるはずだ。辛抱だ辛抱)
心の中で渦巻くモヤモヤを落ち着かせるとダヴィは階段を下りダンジョンの中に入っていく。
ダンジョン内は小さなたいまつがあちらこちらと壁に設置され視界をハッキリと確認する事が出来る。
ダヴィは階段をひたすら下っていくと壁には地下21層と文字が書かれた位置で横にずれ、奥に長い部屋へと入っていく。
ダヴィは警戒しながら歩いていると背後から何者かの歩く音が聞こえ剣の取ってを握る。
「おい。そこの野郎。あたしにここら辺一体のモンスターをよこしな」
背後から女性の声が聞こえダヴィは剣を鞘から抜き構える。金色の長い髪をハーフアップに結び赤い瞳をした女性はダヴィに向い杖を前に出す。
「あ、あ、あ、あ…あなた様は!!」
ダヴィの顔を見た瞬間、女性は動揺しながら小走りで顔まで迫る。
ダヴィ 「な、な、なんだ…」
「あたしの白馬の王子様ではありませんか!―――えっ…シワが多い?何か違う!!」
ダヴィ 「ひでぇ……」
ダヴィの顔をじっくり見つめ終えると、女性は大きな声を出しダヴィから距離を離すよう後ずさる。
「おい!オッサン!あたしの半径1メートル以内に近づくんじゃねぇ!!そしてここら辺いったいのモンスターをあたしによこしな!!」
再びダヴィに杖を前に出し女性は乱暴な口調に戻る。
ダヴィ (な、なんだぁ?)
警戒する女性を挑発しないようダヴィは剣を収める。
ダヴィ 「それじゃ美人が台無しだな。ここを離れてあなたが美人に戻るならどくよ」
「えっ!ちょ、ちょっと!」
ダヴィ 「ん?」
振り返ると先程の振舞とは真逆のスカーレットがいた。吊り上がっていた目は穏やかになり、柔らかな表情。ダヴィが話した通り、可憐な姿に一変した。
「普通の人は反論してくるのに!女のくせに生意気だって!」
ダヴィ 「ん~。まぁ、冒険者ギルドに加入している奴等は元々、気性が荒いからな。俺は違うぜ?んじゃ」
ダヴィは背中を見せ歩き出す。
「あたし、あなたの事が好きになっちゃった」
ダヴィ 「……へ?」
ダヴィは突然の言葉に驚愕し振り返る。
乱暴な口調だった彼女は顔を真っ赤にし頬に手を当てる。彼女の振舞から察するにどうやら惚れやすい性格らしい。
スカーレット 「あたしの名前はスカーレット。あなたのお名前は?」
ダヴィ 「俺はダヴィだけども…」
スカーレット 「愛しのダヴィ!結婚はいつにする??あ!住まいはどこ?一緒に暮らしましょう!」
徐々に迫るスカーレットの剣幕に、ダヴィは後ずさる。
ダヴィ 「距離の縮め方が下手なのか?さっきあったばっかの人にそんな事を話すの普通に怖いって」
スカーレットは腰に手を当てるとダヴィに向かい指をさす。
スカーレット 「じゃ、じゃあ!あたしがあなたの事を絶対に惚れさせてみせるから!覚悟してなさい!」
ダヴィ 「ふふ。お手並み拝見だな」
真っ直ぐな瞳を見せ、言い放つスカーレットにダヴィは笑みが溢れる。
どこかズレているスカーレット!
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