第14話 宝の神
ダヴィは薄っすら目を開けると青い空がぼんやりと見え見開いていく。
ダヴィ 「ここ…は…?」
大の字で寝ていたダヴィは身体を起こす。辺りを見渡すと色鮮やかなユリの花に蝶々達が舞いダヴィの鼻の上に止まる。
ダヴィ (俺は黒いドラゴンを倒して金の箱を開けたんだよな?)
ダヴィが首を傾げた途端、止まっていた蝶が飛んで行き顔を見上げる。雲一つの無い青空に太陽は輝き小さな島が幾つも浮かんでいる。一番天辺に浮かぶ島から滝のように流れる水に七色に光る虹が架かっている。
ユリの花畑に包まれ神秘的な場で座り込んでいたダヴィは立ち上がると目の前から金色に輝く少年が現れる。
クベーラ 「ようやく宝箱を開けてくれたんだね。私は宝の神、クベーラ。私はあなたの願い事を叶えてあげるよ。その代わりにダンジョンの階層がまた増えるけどね」
ダヴィ 「願い事…」
ダヴィの頭に1年前から想っていた言葉が脳に浮かぶ。
ダヴィ 「死んだ妻を生き返らせてほしい」
クベーラ 「死んだ者を生き返らせる…。それは禁忌に触れる事だ。残念ながら無理だ」
ダヴィ 「……」
クベーラに願いを断られダヴィは口元を歪ませると顔を俯け黙り込む。
「オイ!テメェ、あたしの愛しい旦那様を悲しませるんじゃねぇよ!」
クベーラ 「イテテテテテテテテテ!!!」
今でも鮮明に覚えてる女性の声が聞こえダヴィは顔を見上げる。クベーラの首を背後から腕を回し絞めるスカーレットの姿があった。
ダヴィ 「スカーレット!!」
スカーレット 「ダヴィ~~~!」
スカーレットはクベーラから腕を離すとダヴィは勢いよく抱き着く。
ダヴィ 「逢いたかった…夢でも何でも良いから本当に逢いたくてたまらなかった!」
スカーレット 「あたしもだよ~!なんでお墓にきてくれなかったの~~~?」
ダヴィ 「あっ……」
問われるとスカーレットを力強く抱き着いていた腕の力が弱くなる。ダヴィは言葉に詰まると再び黙り込む。
スカーレット 「この神様がダンジョン内のモンスターなら自由に操って良いって言われて言葉を残したんだけど…」
エトナ、フィーネから体験談を聞き、ダヴィは出向いたダンジョンで喋るボーンナイトと箱の言葉を思い出す。
ダヴィ 「あの奇妙な言葉を口にするモンスターはスカーレットが仕組んだのか?」
スカーレット 「うんっ!」
クベーラ 「自由にしていいなんて言ってないよ…。この子が無理やり———グフッ!」
スカーレットはクベーラに向いタックルをする。
スカーレット 「だまらっしゃい!」
「何者だ。騒がしいぞ」
上から声が聞こえダヴィは顔を見上げる。浮遊した人物は天辺にある島からダヴィ達が立つ地まで下降し現れる。
白銀の光を放出し、風格のある男性がダヴィ達の前に現れる。
クベーラ 「全能の神ブラフマー様~~!お助け下さい~~~!」
スカーレットの足元で倒れているクベーラは全能の神ブラフマーに助けを求める。ブラフマーはスカーレットに対し睨むと手を前に出し握りしめる。
スカーレット 「っぐ!!」
ロープの縄で締め付けられているような姿勢でスカーレットは苦しむ。
ブラフマー 「人間風情が神に逆らうのか!?お前の魂を消滅するぞ!!」
ダヴィ 「お、お待ちください!彼女の無礼をお許し下さい!何でも…何でもしますから!どうか、どうかそれだけは!!」
地に頭をつけ涙ながらに土下座をするダヴィに全能の神、ブラフマーは動きを封じていたスカーレットを解くと地に落ちる。
スカーレット 「で、でもブラフマー様!この世界は理不尽すぎます!」
ブラフマー 「何?」
すぐに立ち上がり世界の理を否定するスカーレットの言葉にブラフマーは眉を寄せる。
スカーレット 「産まれた時から身分…そして才能も決まり過ぎています」
ブラフマー 「本来、ダンジョンは人間の成長を手助けするシステムだ。現に人間は強くなり文明も発展している。そうではないか?」
問われたスカーレットは胸に手を当てると大きく息を吸い吐いていく。目をカッと大きく開くと全能の神ブラフマーの険しい顔を恐れずに見つめる。
スカーレット 「そうかもしれませんが、それを活かせるのは産まれた瞬間に才能がある人だけです!皆対等となって本領を発揮するのが本来のあるべき世界なのでは!?」
大声を出すとユリに止まる蝶々達が一斉に逃げるように飛び立っていく。神秘的な場所にスカーレットの声がこだますると彼女の赤い瞳から信念を感じブラフマーは言葉を失う。
全能の神を前に臆する事もなく発言するスカーレット。
勇敢すぎます。
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