表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

5

 


 長い道がようやく終わり、彼女と私はその鬼の里というのに到着した。私が想像していたのはザ・江戸時代みたいなものだったが実際には普通の田舎の光景だった。今でも都市から離れれば見れるような自然豊かな田舎の町。


「…普通じゃん。つまんない。」


「住み易さ重視、鬼も人間もそこまで変わらないから。」


「ふーん、鬼ヶ島か日本って感じのを想像してたわ。」


「鬼ヶ島は今でもある、此処への入り口。昔、そこを使っていた鬼達が人間…俗にいう桃太郎に殺されたから、今はほぼ使わないよ。」


「へぇ…殺されたの、あれって?」


 彼女は歩いくの止めた。静かな声だけが響く。


「…殺された。惨殺だったよ。人も鬼も変わらないのに。」


「……」


 何かある。それはわかるがそれ以上私が踏み込む理由もない。そう思い私は黙った。また歩き進めるが、鬼っ子一人いない。


 彼女は私を連れたまま、この中で一番大きな平家に入った。地主とかお金持ちが住んでしそうな豪華な家。中はちょっと古そうだが掃除が行き届いているようで綺麗だった。

 靴を脱いで上がる。おばあちゃん家があるならそれを大きくした感じ、と言えばいいか。昔ながらの感じで襖で大きな部屋が区切られている。


「ここは?」


「私の家。鬼の首領が住む、人間からすればラスボスのいるところみたいな。」


「夜慧さんが首領なの?」


「違う…ていうか、ずっとそうだけどなんでさん付け?夜慧でいい。」


「あそう。じゃあ夜慧、契約って、昨日言ってたよね?それはここでするの?あと具体的になに?」


「奥に契約用の部屋があるから、そこで。具体的…西洋の伝承とかで悪魔との契約ってあるでしょ?それと同じ。人が悪魔に願いを叶えてもらうために契約するの。基本は命を代償にね。悪魔と鬼は種族的には違うけどやることは同じ。」


「え、私命かけるの?聞いてないんだけど。」


 そんな使い捨ての駒みたいなものなのか、嫌だな。


「その予定だったんだけど…月ちゃんの願いが特殊だからこっちからすると損しかない。だから代償を変えるつもり…待って。」


「んん…」


 突如、彼女は私の口を塞いだ。苦しいんだけど、と文句を言おうとしたが彼女の目が黙れと訴えている。仕方なく大人しく従った。

 彼女の前の襖から声が聞こえる。内容までは聞こえないが、彼女には聞こえているんだろう。顔を歪めていた。


「最悪…顔伏せて。見つかると面倒だから。」


 言われるがままに従うと、腕を掴まれて引かれた。そのまま歩かされる。すると微かだが声が聞こえた。


「…主様はもう……だから早く姫様を…」


「だが……は……」


 姫様、というのは多分彼女のこと。主様?よくわからないが、彼女が私を隠したことと何か関係があるのだろう。

 私はスタスタと前を歩く彼女の背中をちらりと見た。彼女は何を抱えているんだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ