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次の日、学校に行くと普段と変わらない花那の姿があった。昨日の出来事が夢みたいに、夜慧の面影はない。ただただ違和感の塊がそこにあった。
「おはよー。」
「おはよ。」
「…はよ、ゲームで徹夜しちゃった。」
沢山の声が聞こえる。けど私に話しかける声は無い。まるで私が異分子のように見える。おかしいのはあっちなのに。
「月ちゃぁん、おはよ!」
「ああ、うん。」
花那だけが私に近づいて来て挨拶をしてきた。ちょっとびっくりして反応が微妙だったが、花那は笑ってる。
「…ねぇあの子。誰だっけ?」
「え、あたしも分かんない…一緒のクラスだよね?」
「存在感ねーんだよ。なんで花那はあいつに話しかけてんだ。」
「はーな!私達と話そうよ!」
「あっ、うん!」
じゃあね〜と笑う花那。ただ最後に目が合った時、目は笑っていなかった。はいはい、今日ね。
クラスメイトの様子が異様に見えるのは昨日彼女がぼさいていた事が原因だろう。一つの違和感を無くす為にその他全てを違和感に変える。違和感である自分から見ると自然だが、側から見ればオカシイ。
クラスメイトに囲まれている花那からの視線を感じた。逃げるつもりもないのになぁ…と一人スマホをいじり始めた。授業は相変わらず暇だった。特に変な感じもない。
◇◇
またあの場所に行く。今日は授業が少なくて早く帰れた。そのおかげで夕暮れ時にあの山道を通ることは無さそうだ。さくさくと歩いて行くと普通に昨日場所に行くことができた。廃墟と化した神社。彼女は既にそこにいた。
「来たか。」
「うん。で、今日その契約?をするんでしょ。」
早くしてよ。と私は催促をした。彼女は一応隠しているようで昨日みたいに角は見えなかった。
ぷいと彼女は黙ったまま神社の中に入って行く。ついてこいと言わんばかりの態度。ここで戻ればまた同じ。仕方なく着いて行く。神社の建物は踏むとギシギシと鳴り響く。彼女は振り返らない。
暫く無言の時間が続いて、やっと気がついた。
「ねぇ。夜慧さん、これ何処に繋がってるの?」
「…鬼の里。本当は部外者が連れていけないんだけど、やっぱり月ちゃんは変だね。」
「鬼の里、なぁ…」
妖術というものだろうか、知らんけど。長い建物の中は景色が変わらず暇だった。彼女は表情も変わらない。慣れているのだろう。
「そろそろ着くよ。あ、これ被っておいてね。」
「これは…お面?」
「そう、あの場所にいた者は知っているけど、それ以外にばれると危険だから。」
「ふぅん。」
般若みたいな白い顔に鬼の角が付いている。変なのと思いながら大人しく従った。