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「ねぇ、月ちゃん本当に何者?はっきり言っておかしいよ。」
彼女__夜慧の前で落とされ、私は正座して見上げる形で向き合った。
「おかしいのは私じゃなくて夜慧さんじゃない?私そろそろ帰りたいんだけどなぁ。」
「…しらばっかくれるつもり?まぁいいわ。本当にただの人間ならば、こちらとしても都合が良い。」
「生贄にでもするつもり?それならば全力で抵抗するけど。」
「いいえ。私達に協力してほしいの。とある神具が欲しくて。でも鬼…妖は触れられないの。」
「しんぐ…寝具?え、妖が寝れない寝具って。」
「は?」
冗談だって。そんな、此奴アホか?みたいな視線を向けないでもらって。
神具、と彼女は言ったがそんなもの存在するのか?鬼が存在するならそれも信じるしかないが、私はまだ信じきれてないのだ。
「協力するだけなら良いけど、私からも条件がある。」
「一応聞きましょう。」
「─────。」
私はずっと願っていたことを口にした。彼女は顔を歪めた。
「変な願い。人間とはやっぱり思えない。」
「んで?叶えてくれないの?」
「嫌、と言いたいけどいいよ。叶えられるかは分からないけれど。」
彼女は俯き考えながら言っていた。でもそれでいいや。もう。私の望みは叶う方が奇跡だ。
彼女はすぅと息を吸うと表情を変えた。真面目で、冷たく感情の無い表情だった。
「夏炉、契約の儀の用意を頼んでも良いか?」
「はっ。お任せ下さい。」
田中 花那と同じ声。でも違う。何かが確実に違った。でもこちらが正解な気がした。むしろ花那の方が違和感があったのだ。
「じゃあ、月ちゃん。また明日ここに来て。その時に契約をするから。もし此処のことを誰かに話したら…。」
「はいはい。殺されるでしょうね。流石にしないよ。」
「ならいい。では、」
──また明日。──
私達は同じタイミングで言った。どちらも抑揚のない声だった。
太陽の光は残り一欠片。最後に見た彼女は一欠片の光に照らされていた。凛々しく見える表情。その裏についていない感情。角が光を反射して綺麗だった。