てめーら皆殺しだ覚悟しやがれこの野郎ッ
派手なドンパチの始まりでございます。
「そういやこの作戦、名前まだだね」
「『ワルキューレ』」
「それ駄目」
「失敗したじゃん。ヒッキー暗殺」
「あ。ト×・ク×ーズ」
「そ」
「何回殺しても死ななかったんだよね、オリジナルって」
「まるでゾンビか吸血鬼」
「蝮は頭を潰さなくちゃ」
「精力剤じゃないんだから」
「じゃ『あんこうぎも作戦』」
「どつくぞ」
「真面目にやれっ」
「んじゃんじゃ、敵はワーグナーっつーより、北欧神話系でしょ。ウチはやっぱ、ギリシア系だし」
「んー、ヘラクレスかな」
「それよかテセウスにあったよーな」
「それそれ、ミノスの迷宮の怪物ミノタウロスを退治した」
「あ。彼を迷宮から脱出させたのが」
「クレタの王女アリアドネ」
「ウチらそれじゃん」
「決まった」
「という訳でどーですか姐御」
「んー、いいんじゃないそれで」
──「アリアドネ作戦」開始。
自衛軍の迫撃砲弾が教団施設の主要三棟の屋根を直撃し、爆炎が噴き上がると同時に、我らの即席装甲車(誰があんこう号なんて呼ぶものか)は公道から施設に直行する脇道に折れ、突進を開始した。
さすがは武装教団、早々に敵襲を告げるサイレンがけたたましく鳴り響く中、自衛軍迫撃砲小隊による限定攻撃は各棟三発ずつで完了した。
姐御は由美の手によりHE弾(榴弾)装填の無反動砲を構えて、助手席上ハッチより半身を乗り出し、急速に迫る施設正門──縦三メートル、横六メートルの重厚な木製門扉──に照準を合わせた。
フロントからは正門向かって右横の詰所より、あたふたと現れた警備員風の番兵がシュマイザーを構え、こちらに向かって発砲するのが見える。装甲板、フロントガラスを覆う金網、バンパーなど、そこかしこに銃弾が命中し、火花を散らす。
私と美貴、それに由美は、各々の担当武器を我が子の如く抱え込み、側面と床の取っ手をつかんで、衝撃に備えている。
運転席のケイロンが、ハンドルを握り締め、アクセルを踏み込み、それでも冷静沈着な表情で、迫り来る正門を睨んでいるのが目に浮かぶ。
そして姐御。ビュンビュンと我が身をかすめる銃弾に身じろぎひとつせず、照準器をのぞきながらこう叫ぶのがはっきりと聞こえた。
「チンタラ戦争ごっこしてんじゃねーッ!!」
その声が聞こえたものか、正門を必死で守ろうとしていた番兵達は、銃を放り出し、左右にすっ飛んで逃げ出した。
姐御は引金を引いた。
後方に猛烈な爆風を噴き出しながら、無反動砲は砲弾を撃ち出した。姐御はすぐさま砲を抱えて車内に飛び込み、ハッチを閉じ、砲をかばって、取っ手につかまる。無反動砲のガスが車内にも入り、私達は咳き込んだ。榴弾の直撃をほぼ中央に喰らった正門は、爆発炎上、だが大穴こそ開いたものの、完全に粉砕するには至らなかった。
ケイロンは躊躇無く、まだ爆炎の渦巻く中で、門扉の開いた大穴めがけて装甲車を体当たりさせた。
たび重なる衝撃によって正門と塀をつなぐ蝶番はもぎ取られ、正門は四枚の燃え上がる板切れと化して飛散した。激突のショックは凄まじく、私達は取っ手を握り締め、足を懸命に踏ん張って、大事な武器をかばい、こらえ抜いた。
施設内に踊り込んだ装甲車はほんの十秒ばかり停車する。
私達はただちに行動を起こした。
銃眼の下には滑り止めのゴムが張られ、落下防止の縁の付いた受け皿状の銃座がある。私と美貴はそこに5・56ミリ機関銃MINIMIの銃身下に装着されている二脚架を立て、銃身を銃眼から突き出し、槓桿を引いて、射撃準備を整える。ずっしり重い二〇〇発入り箱形弾倉コンテナは装着済みだ。
一方由美は姐御から撃ち終えた無反動砲を受け取り、榴弾装填済みのもう一門を軽々と差し出す。姐御はそれを手に再び上部ハッチを跳ね上げ、身を突き出して発射の姿勢を取る。両者共、実に無駄の無い、流れるような連携プレーで、状況がこうでなければ、ずっと眺めていたいとさえ思える。
教団施設内は中央にローマ式敬礼をやっている初代総統閣下の巨大な銅像がそびえており(真っ先にぶっ壊してやりたいけど辛抱だ)、向かって右の営舎、左の講堂は、三発ずつ喰らった迫撃砲弾によって、安普請らしい燃えっぷりで半分崩壊していたが、正面の三階建て鉄筋コンクリート造りの教団本部はさすがに頑丈、屋上より黒煙こそ上がっているけど、建物自体はまだ無傷に見える。
周囲は鳴り響くサイレンの中で右往左往したり、押っ取り刀(のたのたの意味で使ってる人たまにいるけど違うからねッ)でシュマイザーやらモーゼルライフルやら、とりあえずのルガーやワルサーで反撃しようとしている武装信者(ドイツ兵コスプレ共)であふれていた。
姐御はまずは御挨拶とばかり、教団本部のほぼ中央に榴弾を叩き込む。同時にケイロンが装甲車を再スタートさせ、私達は銃撃を開始した。
私達の施設突入のきっかり三分後、雑木林の中に身を潜めていた救出チーム二十名が、縄梯子を使って塀を乗り越え、営舎と正門側の塀の間にある地下工場からの緊急脱出用ハッチから、痩松刑事の先導によって突入するのだ。
脱出用ハッチと言っても、地下に閉じ込められている気の毒なおじさんおばさん達を逃がす為のものではないから、常に外から施錠されている。だけどそれは安い南京錠に過ぎないので、工具ひとつで簡単に外せるものなのだ。
改めて言うけど、作戦の第一段階は彼ら救出チームの突入から徹底的に武装信者共の目をそらさせる陽動である。私達は装甲車で施設内広場を時計回りでぐるぐると駆け巡り、建物とドイツ兵コスプレ共を攻撃しまくって、連中の注意を可能な限り引き付ける、おとりの役に徹さなくてはならない。
鳴り続けるサイレン、敵味方の銃撃音、爆発音、エンジン音、もう気も狂わんばかりの騒音に、あたりは満たされている。
かっちん美貴が何やら叫んでいるのが、その凄まじい騒音の中から聞こえて来た。
「生意気ー! こいつら武装親衛隊のコスプレやってるーッ!」
武装親衛隊といえばドイツ国防軍とは別組織で、総統閣下の文字通り親衛隊。数々の残虐行為で後世に汚名を残した連中だが、精強な事は精強で、連合軍も散々手を焼いたのだ。まあ教祖様が自称四代目総統閣下なのだから、その信者がイコール親衛隊なのはある意味当然の話なのだけど、ミリヲタかっちんからすれば生意気なんだなやっぱ。
姐御は飛び交う銃弾をものともせず、由美との完璧なコンビネーションを維持し続け、次々と無反動砲をぶっ放し、施設の破壊を拡大させていく。だがその一方で、本来真っ先に叩くべき教団本部の正面玄関──今も武装信者共がわさわさとゴキブリの如く湧いて出てる──ここに直撃弾をぶち込む訳にはいかなかった。その奥にはガレージがあり、そしてそこには地下工場につながる唯一の大型リフトがあるのだ。そこを破壊したり、瓦礫で埋もれさせてしまっては何にもならない。
さらに作戦開始前、車内で姐御は改めて私達に言ったのだ。
「私が銃弾で斃れた場合、ケイロンが無反動砲を撃ち続け、メドゥサが運転する。その間、私の身体に一切触れてはならぬ。作戦は第二段階、拉致被害者の脱出ルート確保に全力を注ぎ、第三段階、教団の物理的壊滅は放棄、以上肝に命じよ、いいな!」
「はいっ!」
私達は緊張に身を震わせながら一斉に応じた。姐御が世界各地の戦場で如何に「勝利の女神」として称賛され、また畏れられているかを、私達は実感した。
私と美貴は銃撃を続け、敵も猛烈に撃ち返して来る。銃眼からも時々飛び込んで来て、ヘルメットをかすめたり、車内で跳ね回ったりする。だが私達はひるまない。アイツがまた叫んでる。
「おらおらあんこう音頭でも踊りやがれーッ!」
そういえば例の監督の持ちネタのひとつが大笑い海水浴場って私まで何考えてんだッ。
その時、私達の突入からきっかり三分が経過したらしく、正門側の塀を乗り越えて、ブルーのヘルメットとプロテクターで身を固めた警視庁救出チームのメンバーが、施設内への突入を開始するのが見えた。あれに銃弾を当ててしまっては大変だ。私はインカムの送信ボタンを押して叫んだ。
「救出チーム、突入開始!」
武装信者共の目をとことんこちらに向けさせるべく、私達はますます気合いを入れて攻撃を続行した。ほらほらこっちだこっちだよ。
そう、おとりといえばレイテ沖海戦。日米最後の決戦において、日本の主力艦隊のレイテ湾突入を助けるべく、北方に展開した空母・航空戦艦六隻(中身はほとんど空っぽ)を中心としたおとり艦隊は、敵主力部隊の北方誘致には見事成功したものの、味方艦隊の「謎の反転」によって、その努力は水泡に帰したのであった。だがこのアリアドネ作戦でそれはあってはならない事だ。で、アイツがまた叫んでいるのである。
「ハルゼーをもっと引き付けよーッ! ヤクショやタテやトヨダのヤマモトじゃないの、タンバのオザワがサイコーなのよーッ!!」
どさくさまぎれに何を喚いておるのだアイツは。まったく女ヲタは度し難い。誰か何とかしてよーっ。前まで聞こえてなきゃいいけど。
営舎端のハッチが開け放たれ、中に次々と救出チームのメンバーが飛び込んで行くのが見える。ハッチの横に立って拳銃を構え、油断無く周囲を見張っているのが、粟田口警部に違いない。こうした場合、映画やドラマだと主役級を目立たせるべく、ワイシャツに防弾チョッキとホルスターだけのラフなスタイルというのが普通だけど、痩松刑事も粟田口警部も他の隊員同様に、ちゃんとヘルメットとプロテクターを着用しています。突入は今のところ順調に進んでいるようなのでホッとした。
早々と二〇〇発を撃ち尽くしてしまったので、私は空になったコンテナを外し、収納ボックスの新しい物と交換すべく急いだ。ところが銃眼から見えた光景は、教団本部玄関から一人の武装信者がパンツァー・ファウストをかついで現れ、こちらに照準を合わせているというものだった。
「パンツァー・ファウスト!」
インカムの送信ボタンを押して私は叫んだ。姐御は講堂の方に一発ぶち込んだ直後だ。左後方銃座の美貴の機関銃が教団本部の方を向くように、反転してる暇があるのか。最悪。私は焦った。
パンツァー・ファウストは元祖RPG、第二次大戦末期に作られた使い捨ての対戦車無反動砲で、ベルリン市街戦などでは老人や女子供にもこれを持たせてソ連の戦車と戦わせたという代物だ。射程は長くても百メートル程度と大した事はないが、成形炸薬使用の弾頭は大型で、直撃を喰らおうものならこんな即席装甲車などひとたまりも無い。
ケイロンは反転ではなく、ジグザグ走行で何とか狙いをそらそうとしている。アレは素人でも扱えるが命中率が低く、ぎりぎり近寄らないとまず当たらない(当時アレで戦わされた老人や女子供は、ソ連と米英の戦車を前にしてどんなに恐かった事だろう)。おじさんはそちらに賭けたようだ。南無三。私がコンテナの再装着を終えるのと、そいつがパンツァー・ファウストを発射するのとがほぼ同時だった。
後方に猛烈な爆風が噴き出し、不用意に後ろをうろうろしていた数人の味方がひっくり返って(だから後方確認しろっての)弾頭は発射されたが、火薬ガスに押し出されたそれはやっぱりあさっての方向に飛んで行き、既に無数の流れ弾で穴だらけになっていた中央の総統閣下の銅像に見事命中、これを木っ端微塵にしてしまったのだ。
装甲車内は安堵の溜め息に満ち、私はバンザイ三唱したくなるのをこらえて再び機関銃の銃把を握り、槓桿を引いた。
見ると総統閣下の銅像を吹っ飛ばしたおまぬけくんは当然の事ながら顔面蒼白、パンツァー・ファウストの用済みパイプを放り出して頭を抱えている。そこにハリウッドの戦争映画に出て来るような酷薄そうな顔付きの親衛隊将校(のコスプレ野郎)が、つかつかとそのおまぬけくんの背後に歩み寄り、ホルスターから引き抜いたワルサー拳銃の銃口を彼の背中に向けて、問答無用で鉛弾を数発ぶち込むのが見えた。何て奴だ。こんな素人集団相手にちゃんと指導してこなかったお前らの責任だろうが。おまぬけくんに同情した訳ではないのだが私は怒り、そいつをただちに蜂の巣にした。まったく最低の組織だ。SCSが優良企業に思えて来る。
しかし敵の攻撃というのも何と言ったらいいのか、兵も武器も数だけはやたらにいるしあるもんだから、無闇に弾丸は飛んで来るけど、シュマイザーもライフルも拳銃も次から次へと作動不良、弾詰まり、銃身破裂を起こしたり、今のパンツァー・ファウストみたく弾道もろくに定まらず、ふらふらのションベン弾(失礼)を飛ばしたりで、元々骨董品の粗悪コピーである上に、地下のおじさん達のレジスタンスが予想以上の効果を上げているようだ。ありがとう!
かてて加えてよくもこんな代物で、しかもどいつもこいつもへっぴり腰の連中が、何様のつもりで世界征服だ。ふざけんなバカ野郎ッ。私は改めて怒りに震えた。
そのへっぴり腰共が柄付手榴弾を何本か投げつけて来たが、ケイロンがその都度スピードを上げてはね返し、投げた奴やその周囲の連中を逆に吹き飛ばしてしまっていた。美貴なら信管抜いて相手が逃げられないぎりぎりのタイミングでぶつけてるとこだろうけど、こいつらそんな訓練なんか受けて無い事一目瞭然。素人共め。また腹が立って来た。
その時美貴がインカムで(ちゃんと判ってはいるのよね)叫んだ。
「救出チーム、突入完了!」
現在の私の視野からは反対側だが、情景は目に浮かぶ。十九人目の隊員が脱出口に飛び込み、粟田口警部がこちらに手を振ってからその後を追い、中よりハッチを閉ざしたのだ。
これで装甲車はあと一周回っておとりの役を終えるのだ。作戦は第二段階、即ち脱出ルートの確保に移行する。ここまではスケジュール通り、順調に進行しており、今のところケガ人も出ていない。願わくは地下工場の見張りの連中が、みんな地上におびき出されているように。
姐御は脱出ハッチ手前の営舎の端めがけて最後の榴弾をぶっ放した。崩壊した営舎の残骸がハッチを埋め尽くす。これで敵がハッチから飛び込んで救出チームの背後から襲いかかる心配は無くなった。
私達は最後の一周で思いっ切り5・56ミリ機銃弾をぶちまけまくった。てめーら皆殺しだ覚悟しやがれこのヤローッ!
そして装甲車は予定通り、教団本部正面玄関前で反転し、姐御のいる助手席をそちらに向けた。姐御は役目を終えた無反動砲を車内に戻し、上部ハッチを閉めた。さすがに四方八方から銃弾が飛んで来て、車体にガンガンぶち当たる。ケイロンがエンジンを切ってキーを抜き、愛銃六四式小銃を取り出して、ドアを半開きにし、反撃を開始する。由美は姐御から無反動砲を受け取ると、二門のそれを隅の方にそっと並べる。そして私と美貴は次の行動を始めていた。
「あんこうチーム、パンツァー・フォー!」
「やめろっつーに!」
私達は機関銃左側面のレバーを押し、銃身の掲げ手をつかんで、焼けた銃身を予備のそれと交換し、空っぽのコンテナを外して、ぎっしり二〇〇発詰まった新しい物を装着、引金を引けばすぐ撃てるよう槓桿を引き、肩当てを前にして銃本体を抱え、車の前部へと向かった。床一面薬莢だらけで、うかつに踏むと足を取られる。これをぼんやり待ってる姐御ではない。助手席ドアを半開きにし、9ミリ拳銃を撃ちまくっている。由美は自分の9ミリ機関拳銃を右手に取り、いつでも飛び出せるように構えながら、私達に残りの二丁を手渡すべく、待ち構えていた。
「姐御!」
私が叫び、美貴と共にMINIMI機関銃二丁を差し出した。拳銃をホルスターにしまった姐御は、
「おうっ」
と答えるなり、機関銃二丁の銃把を鷲づかみにして軽々と持ち上げ、助手席ドアを蹴り開けて表に飛び出した。六四式小銃を構えたケイロンと、9ミリ機関拳銃を手にした私、美貴、由美がそれに続く。
「ウオ━━━━━━━━━━━ッ!!!」
姐御は絶叫しながら二丁機関銃を、教団本部の正面玄関と窓という窓めがけてぶっ放し始めた。窓から狙撃していた連中が片端から血しぶき上げて吹っ飛ぶのが見える。私達は姐御の背後を固め、群がる敵の撃退に努めたのだが、姐御のその勝利の女神に鬼神阿修羅が合体したような凄まじいばかりの姿を目の当たりにして、ドイツ兵コスプレ野郎共はあまりの恐ろしさに震えおののき、銃を投げ捨て、腰を抜かし、へたり込み、這って逃げ出す奴が続出した(これが狙いだったんだけどね)。
「姐御ノリノリ」
「サイコー」
「カッコいい」
ウチらは改めて我が師の素晴らしさを実感するのであった。MINIMI機関銃というのは普通伏射するものと前に触れたが、射撃競技で腰射や立射する事はあるけど、連続した反動で屈強な男性兵士でもその扱いには手を焼くと聞く。それを平然二丁掲げて反動ものともせず撃ちまくるのであるからこれはもはや人間技ではない。やはり鬼女神。ごめんなさい。
姐御のいわば「女房役」(くすっ)のケイロンは、六四式小銃を腰撃ちでセミオート、一発必中、無駄弾は一切撃たず、敵を一人一人、確実に仕留めていく。うんと遠方からへっぴり腰で柄付手榴弾を投げようとする奴を見つけると、ケイロンはすかさずそいつを撃ち倒し、周囲の数人を巻き添えに爆発させてしまうのだ。ふらふら飛んで来るのがたまにあっても、余裕でクレー射撃の如く撃ち当てて、空中爆発させちゃうのだからさすがだ。
「おじさん決まってるーっ」
「後でキスしてあげよう」
「うん」
そして私達。9ミリ機関拳銃はフルーオートでぼーっと撃っちゃうと、すぐに弾倉マガジン空っぽになるから、私達は指切りのバーストショット、つまり数発ずつの射撃を心がけ、弾丸を節約しながら敵の接近を退ける事に専念した。
轟々と炎上を続ける講堂、そして営舎は、ほどなくガラガラと音を立てて崩壊し、コスプレ共は悲鳴を上げて逃げ惑った。教団本部の建物も姐御の榴弾攻撃と機銃掃射であちこちから火と煙を上げており、窓ガラスは全て粉砕され、壁は穴だらけ亀裂だらけ、もはや廃墟も同然の有り様だ。
姐御は二丁機関銃を撃ち尽くし、いったん装甲車に退く。私達はそれをカバーする。機関銃の一丁は車内に残し、もう一丁に新たなコンテナを装着した姐御は、装甲車のドアを閉めた。
弾痕だらけの正面玄関は一見無人に見え、敵の銃撃も今や散発的だ。姐御は装甲車横にかがんでトランシーバーを取り出し、地下の救出チームとの交信を試みたが、すぐに舌打ちして引っ込めた。やはりダメっぽい。立ち上がり、そして言った。
「第二段階」機関銃を構え、「突入!」
私達は姐御を先頭に、教団本部正面玄関めがけて突っ込んで行った。
次回は屋内戦闘に移行します。