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カウンセラー

真実にたどり着いたヒトミは、高揚する気持ちを抑えながら冷静に行動しようと決意する。この花びらが人々の目に触れることは避けたいと考え、ヒトミは周りの動物たちに花びらの回収をお願いする。リスや子猫たちは地面に散らばった花びらを集め始め、小鳥たちは舞い上がる花びらをくわえて自らの住処へと運んでいく。あっという間にその場は元の姿に戻り、ヒトミは静かに歩き続ける。


「いつも通りに、平静に」と自分に言い聞かせながら、中央から西側へと進む分かれ道を選択し、出口に向かって進んでいく。周りの動植物を眺めながら、植物園を後にする。


植物園のルーティーンが終わると、新しい日常の最後のルーティーンが続く。それは、保健室でのカウンセリングだ。カウンセラーのアリアナが部屋の中でヒトミを待っている。銀色の髪を軽く揺らしながら、細長い目と端麗な鼻が特徴の顔から、ヒトミはアリアナのどこか緊張している様子を感じた。


ヒトミの存在に気づいたアリアナはこちらに振り向き、微笑みを浮かべた。ソバカスがちな顔が笑うと、彼女の目の鋭さが和らぎ、人懐っこさが増す。ヒトミはアリアナの前に用意された席に着き、いつものようにカウンセリングが始まった。


「今日の気分はどうだった?」

「何か気になることや難しいことはあった?」

「施設や授業中、何か印象に残ったことは?」

「アイリスのことを思い出すと、どのような感情が湧き上がる?」

「その時、どのように自分を落ち着かせる?」

などの質問に対して答えると、次から次へと新しい質問が続く。いくつかの質問を繰り返した後、最後に「今日のセッションで特に心に残ったことや気になる点はある?」という質問で締めくくられる。


今日もいつものように質問と回答を繰り返し、最後の質問に「ない」と答えた。カウンセリングがこれで終わると思った瞬間、アリアナが「一つ質問を忘れていたわ」と言って口を開いた。


「あなたの将来の展望について、まだ話していないのね。今後、自分がどうなりたいと思っているのか、何をしたいと思っているのか、教えてくれる?」


ヒトミは突如として心の中を見透かされた気分になった。まるで後ろから後頭部をいきなり打たれたような、不意打ちの衝撃を感じた。「動揺してはいけない」と心に誓いながら、ヒトミが今後の行動を予見している風に見える口ぶりのアリアナに、慎重に言葉を選び答えた。


「特にないわ」

と、全力で平静を装って答えた。


アリアナはヒトミの目をじっと見つめた後、

「わかったわ。今日のカウンセリングはこれで終了よ。寮に戻りなさい」

ヒトミはうなづき、アリアナのいた部屋を後にした。


ヒトミが部屋を出て行った後、アリアナは独り言のようにつぶやいた。

「ここには『将来の展望』なんて存在しないはずなのに。あの子は「ない」と答えた。それは「ある」ということの裏返し」

アリアナはその言葉を静かに残し、何かを決意したような面持ちで部屋を出て行った。



今回アリアナというカウンセラーが登場したのですが、彼女が行ったカウンセリングは3つくらいのアプローチを使ったものです。


感情について自己認識を促進させる人間isticアプローチ、ストレスを管理するための認知行動療法、そして未来についてポジティブにとらえるソリューションフォーカス・セラピーといったアプローチが使われています。


この度、心理カウンセリングのアプローチを勉強して感じたことは、「人間は言語的な動物」であるということです。過去の出来事の感情に目を向けるのか、未来に向けて目を向けるのかといった手法によって焦点の違いはあるものの、共通して行われるのは患者自身が言語化をひたすらしていくということです。


おばけが怖いのは、人間の認識を範囲を超えるから。逆に言語化をすることで、対象を認識下に置くことができれば、人間はそれを支配することが可能ということになります。だから、言葉にすることで安心し落ち着くんですね。


逆を言うと、この世は認識でしかないということも言えるんですね。なんか、すごい話になりそうなので、今日はここまでにしましょうか。


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