プロローグ
無尽蔵の荒野に、孤独な存在として幼き生命が立ち尽くしていた。
風に舞い上がる塵、太陽の下で焼けつく大地、そして昔の獲物を示す草食動物の白骨。その荒涼とした光景の中、白銀の瞳を宿した小さな子は、歩みが滞りながらも前に進もうとした。
周囲には、死の匂いを纏った肉食動物たちが、餌の到来を待ちわびていた。まるで闘技場の観衆のように、8頭の獣たちが獲物の弱みを伺っていた。
幼児は遂に立つ力を失い、大地に崩れ落ちた。
その瞬間、一匹の獣が一歩を踏み出した。その堂々たる姿は、群れのリーダーであることを示していた。彼の目は飢餓の輝きを放ち、他の獣たちも待ちきれずに幼児の方へと進んできた。
しかし、その時、大地が揺れるような音と共に、巨漢が姿を現した。彼の姿は鬼のようでもあり、人間のようでもあった。明瞭でないその存在であったが、圧倒的な存在感を放っていた。獣は彼に向けて牙を剥いた。獰猛に首筋を目掛けて襲いかかるが、巨漢はそれを辛うじて避け、獣の牙は彼の肌に触れることなく、わずかに彼の衣服を引き裂いただけだった。地を蹴るようにして立ち上がる獣に、巨漢はその巨大な足で強烈な一撃を下ろし、リーダー格の獣は大地に倒れた。
肉食獣たちは震えながらも敵意を向けたものの、その巨人の前では力を発揮できず、退散するしかなかった。
その男は、繊細な命をその大きな腕に抱き込み、荒野の彼方へと進んでいった。幼児は、意識が遠のく中で、その救世主の顔を一瞬見上げ、苦渋の表情を浮かべた後、再び気を失った。