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小説・人狼ゲーム  作者: iris Gabe
ルール確認編
1/10

1.名もなき村

登場人物

アメンボ (A)   青年

ボス   (B)   おじいさん

チイ   (C)   少女

ドロシー (D)   少女

エリカ  (E)   若い女性

フォックス(F)   年齢不詳の男性

グレイ  (G)   中年の男性

ヒミコ  (H)   美しい女性

アイリス (I)   私(若い女性)

ミスズ  (M)   司会者(若い女性)



目次

『出題編』

1. 名もなき村

2. 汝は人狼なりや?

3. 初日の出来事 

4. 二日目の出来事

5. 三日目の出来事

6. 四日目の出来事

7. 読者への挑戦


『解決編』

8. 続、四日目の出来事

9. 五日目の出来事

10.感想戦



 本編は、多数の人物が登場し、それぞれの考えに従って独自の行動をとってゆきます。彼らがする発言や行動の順番などのひとつひとつが、読者が真相にたどり着くための貴重な手掛かりとなっています。しかし、その情報は複雑かつ膨大なものであり、とても頭で覚えきれるものにはなっていません。

 そこで、読者の皆さんには、ノートなどのメモ用紙をご用意いただき、気が付かれたことを逐次書き留めながら、本編を、地面をはうがごとく、ゆっくりと読み進めていただくことを推奨いたします。

 まことに勝手で七面倒な要望ではございますが、こうすることで、見事に本編の正解をお当ていただいたあかつきには、これまで感じたことのない満足感にひたることができるような内容になっていると、自負しております。

 さあ、賢明なる読者の皆さん。私が文中にこっそりと忍ばせた手がかりをひとつたりとも見過ごすことなく、どうか真相を暴き出して、至福の喜びを得てください。

 なお、本編は、できれば「縦書きPDF形式」でお読みいただくようお勧めいたします。(作者)


 


 ここは、名もなき村――。

 こんな平穏極まりない寒村で、五日間にもわたる世にも残酷で猟奇的な連続殺人がくり広げられようとは、はたして誰が予測できただろう?

 しかし実をいうと、かつて、この村では今回の忌まわしい事件と酷似した血なま臭い惨劇がおこっていたのだ。

 それはもう百年以上も昔のことである。周囲から閉ざされた山間やまあいにポツンとたたずむ名もなき村には、当時四十二名の村人が細々と暮らしていた。国家の中心部では革命が勃発し、王が暗殺され、君主制から共和制に移行するという歴史的大事件のときでさえ、自給自足のこの村では変化らしき変化は全くなかった。村人は滅多なことでは山をくだろうとせず、また近隣の村落に住んでいる民も、まれにこの村に訪れることがあっても、せいぜい、一夜の宿を借り、一言礼を告げてからたち去る、くらいなものであった。

 そんなある日、となり村の狩人の若者ふたりが、獲物を捕えることに夢中になって、森のおく深くに迷いこんでしまう。さんざんの苦労の末に、ようやく彼らは、名もなき村まで無事に辿り着くことができたのであるが、そこでふたりが目のあたりにした光景たるや、とても文章で表現することがはばかられるほど、陰惨この上なくおどろおどろしいものであった。

 村のあちこちに無数の死体がころがっており、あたりには異臭がたちこめていた。死肉をあさるカラスの黒たかりのわきには幼児の足と思しき肉片が散乱し、水車小屋に出向けば、両目をカッと見ひらいた農婦が、内臓をえぐられたまま仰むけになって倒れていた。たわわに実った黄金こがね色のトウモロコシ畑のど真ん中で、三人の首なし死体が互いをいたわるように折り重なっていた。

 ふたりはしばらくの間、我を忘れ、ただ大声で意味不明な文句をわめき散らしていた。しかし、いくら声を張りあげても、固く戸を閉ざした家屋から誰ひとり姿をあらわす気配はなかった。

 やがて陽も沈み、ふたりは心ならずもここで一夜を過ごさなければならないことに気づいた。夜は刻々と更けていき、村は漆黒の闇につつまれる。村のすみっこに残る廃墟をどうにか見つけ出したふたりは、そこでささやかな眠りについた。

 死のような静寂を、片方の若者の悲鳴が破った!

 もうひとりの若者が武器をたずさえて駆けつけると、相方は、ひとりの大男と格闘の最中であった。そいつは、およそ人とは思えない邪悪な容姿をしており、不気味な低いうなり声をあげていた。強靭な肉体には獣のような体毛がびっしりと生え、大きく切り裂けた顎からは大量の唾液がしたたり落ち、獲物を見すえる瞳孔は狂気のあまり爛々とぎらついていた。

 猟銃を持った若者は、無我夢中で数発のたまを魔物に乱射した。まもなく、魔物は動かなくなった。襲われた方の若者は、左腕のひじから先を喰いちぎられていたものの、幸い命に別状はなかった。

 翌日、村中を探索したふたりは、隠れひそんでいた村人の生きのこり十三人を見つけ出した。結局、この忌まわしい事件の憐れな犠牲者は、魔物自身も含めて総勢二十九名にものぼった。

 程なく、オスカーという名の村の若い青年医師が書いた手記が発見される。それによれば、この青年は凶狼病という原因不明の病におかされていたらしく、深夜に人間のにおいを感ずると、手足が震えて意識が遠のいていき、気がつけば、変貌した強靭な顎で、村人を次々と噛み殺していた、と記述されていた。やがて、この異常な症状を自覚したオスカー青年は、気が狂いそうになるのをえ忍びながら、手記に自らの病状を克明に記していく。彼は幾度となく自殺を試みたようだが、いざ実行に移そうとすると、意識が遠のいて身体が人狼に支配されてしまうことも、そこには記載されていた。手記の最後は、これを発見せし者はすみやかに我が身を撃ち殺してくれるよう切に願う、と締めくくられていた。

 かくして、この呪われた惨劇は、名もなき村の生存者たちによって、親から子へ、子から孫へと代々語りつがれていくのである。

 あれから、もう百年の月日が流れている。名もなき村は以前のような平穏さを取り戻したと、誰もがそう確信していた。まさか、今になってあのおぞましき凶狼病の感染者が村人の中にひそかにまぎれこんでいようなどとは、ゆめゆめ思うこともなく……。

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