前編
婚約破棄ものですが、あまり恋愛と関係ないのかもしれません。
※残酷な表現は後編に、暴力的な表現があります。
『子猫ちゃん。ここがどんなところかわかっているのか?帰れ。な、何、金貨の山だと、お前、何者だ!何を知りたい!』
と胸毛を強調する服を着ている日焼けをしている美中年とか
『僕~お姉ちゃん気に入ったよ!僕を楽しませてくれる限り情報を提供するよ!』
と素早く動きそうな線の細い美青年だとか。
・・・・・・
そういった人が情報ギルドマスターをしているものですわ!
そして、情報ギルドのエージェントはナイフ投げの上手そうな人に違いないのですわ!
なのに、なのに、何故、貴方方は・・
「【老人と孫】なの?!」
はあ、はあ、私は公爵令嬢エリザベスですわ。情報ギルドを探していたら、怪しい人気のない場所に、「情報ギルド」の看板があったの、これ幸いと入ったら中には、ご老人とそのお孫さんがいたのですわ。
「と言われましてものう。とにかく、お嬢さんコンブ紅茶を飲んでいきなされ、ソフィアよ。お茶をお出ししてくれんかのう」
「はい、おじいちゃん」
話を聞いたのよ、このおじい様。ゼムおじい様と言って、元大工さんよ。お知り合いの家主さんに、空家が多い通りに、家賃タダでいいから、何か商売をやってくれと言われたそうよ。誰もいないと、治安が悪くなるからですって
それで情報ギルドを始めた?本当にふざけていのでございます!
「何の情報を取り扱っておりますの!」
「その~、ここは知り合いが集まって情報を交換するところじゃて、市場のお得情報とかのう~」
「はい、お茶をどうぞ」
「!!お茶、いらないわよ!帰るわ!」
「そりゃ、すまなんだ。若者の欲しがる情報は持っていないのじゃ」シュン
私は前世の記憶があるの。私はこのままだと、聖女様をイジメたとして、殿下から婚約破棄をされ、修道院行きを命じられるのでございます。その途中で暗殺者に命を・・・
そして、聖女様が、私の公爵家に養子縁組をして入るとても悲惨な末路。
もう手詰まり。義弟まで、聖女様の味方。
私はワラにもすがる思いで、情報ギルドを探しているのに・・・
翌日
しかし、
また、公爵令嬢はゼムじいさんの情報ギルドにやって来た。
「昨日は言いすぎたのでございますわ。お茶悪かったわ。コンブ紅茶に合うお菓子を持ってきたから食べて下さいませ!」
「おお、ええって、ええって、ソフィアよ。コンブ紅茶を出しておくれ」
「はい、おじいちゃん」
私は、ソフィアです。お針子です。両親が早く亡くなってからおじいちゃんとおばあちゃんに育てられていました。
お婆ちゃんも去年、亡くなりました。
おじいちゃんの情報ギルドと言っても老人のお茶友達を集めて、老人の憩いの場という感じ。
初日に、美人だけど目がつり上がって、性格がきつそうなお貴族様のご令嬢が来店したわ。
最初は、プンプン怒ってらしたけど
それから、その令嬢は数日おき、最近は毎日お茶菓子を持ってくるようになったわ。
令嬢の話だと、ここは「おとめげーむ」の世界で前世の記憶がある。
ご令嬢は悪役令嬢で、婚約者の王子様と、宰相の息子さんと、宮廷魔導師長の息子さんと、義弟と、騎士団長の息子が、新たに現れた聖女様に夢中で・・『私、手詰まりなの。イジメをしていると、卒業パーティーで断罪されて、修道院に行かなくてはいけないの・・・』とお話になったわ。
「大変じゃのう。アメちゃんを舐めて元気お出し」
「そいつがダメだったら、うちの働き者を紹介してやるぜ。元気だしな」
あら、ご老人が増えているわ。本屋のアンリお婆ちゃんと、魚屋のハンスおじいちゃんも加わって、ご令嬢のお話を聞いているの。
「もう、手詰まりで、やってもいないイジメをしていると・・皆に噂されて・・情報ギルドが突破口になると思ったのでございます。でも・・・ここで話を聞いて下さって気が晴れたわ。今まで有難うございました。ゼムおじい様。ハンスおじい様。アンリおばあ様。私、悪役令嬢として、この世界から退場しますわ」
「そんな、若いお嬢さんがのう。世知辛いのう・・」
「もう、疲れたのでございます。今日は卒業パーティーなのに、殿下はドレスも贈ってくれなくて、聖女様をエスコートするって・・・グスン・・」
「元気をだしなされ」
「アメちゃんお食べ」
「今度、弟子のトムを連れてくるぜ・・いい男だぜ」
「エリザベスさん・・お元気で」
こうして、悪役令嬢と言われたお嬢様は、情報ギルドを後にしたの。もう、来ないのね。私もハンカチもらって、私はスカーフを贈ったの。お友達になれたかな。寂しいわ。
でもお貴族様の事情に私たち平民は首を突っ込めないのよね。
「・・・・わしらを、おじい様、おばあ様と呼んでくれる良い子をこのままにしていいのかのう?」
「おう、久しぶりに暴れるぜ!」
「ケケケケケケ~わしらの孫同然のエリザベスをイジメる奴は容赦しないのじゃ」
お嬢様が行った後、おじいちゃん達は豹変し、服にバッチを付けたの。おそろいよ。
老人会の仲良しバッチかな?
「ソフィアもくるのじゃ、ソフィアのお針子スキルも必要になるのかもしれないのう」
「ええ、と何ですか?どこに行くの?」
おじいちゃん達は私を連れて、貴族学園まで、行ったの。ここで、外でエリザベスさんを応援するのかな。
え、おじいちゃん達、門の中に入ろうとしているわ。
あ、門衛さんが、私たちの方に来たわ。
「こら、こら、ここは今日は陛下も来られる・・」
「スリープ!」
バタン
「ケケ、三日は眠るようにしといたぞな」
アンリお婆さんが指を門番さんの前に指を立て眠らせ、私たちは学園の敷地に入ったの。入ってしまったのよ。
・・・・・
卒業パーティー会場
「エリザベスよ。私は真の愛に目覚めた。だから、お前のイジメを見過ごすことは出来ない!」
「国を導く宰相候補として、未来の王妃には慈悲が必要だと思いますね」
「魔導師として、意見するよ~聖女様は国が大事にするって決まってる。そんなこと子供でもわかるよ~」
「義姉さん。僕は貴方と姉弟だなんて、たとえ、義理でも恥ずかしい!」
「おう、俺は騎士として、か弱き者の味方だ。聖女様が平民出だからとイジメるお前を断罪する!」
「エリザベス様、あたしは一言謝ってくれればそれでいいのーーー」
「殿下、私はやっておりませんわ!」
とエリザベスは胸を張って答えたが、やっていないことの証明は難しい。
しかも、殿下達は声が大きい。そして、物証も持って来た。エリザベスがやったという証明にならないが、周りの者達に対する印象操作は・・・出来るだろう。
「見ろ!これは切裂かれたドレスだ。可哀想に、聖女様のドレスを、取巻きを使って、聖女様を押さえつけて、ナイフで切裂いたのだ!証人もいるぞ!」
「ひでえ、怪我をしたらどうする気だ!宰相候補として、犯罪として断罪する!」
3人の令嬢が現れたの、皆、公爵家と敵対派閥じゃない・・
「「「エリザベス様に言われて、仕方なく、聖女様、ごめんなさい!」」」
「いいのよ。謝ってくれたから、キャサリン許しちゃう!」
「「「何と慈悲深い聖女様!」」」
疲れましたわ。もう、認めた方が傷は浅いかも・・いいえ、それだけはしてはいけなのでございます。例え家族が味方にならなくても、あの情報ギルドのおじい様とおばあ様が応援してくれたから、信じてくれたから・・
私、エリザベスは胸を張って答える。
「やってませんわ。その方々たちは、私の友人ではございません」
「酷い、トカゲの尻尾切りだ!」
騎士団長の息子は剣に手を掛ける。
殿下は大声で、会場にいた者に問うた。
「エリザベスは国母に相応しくない。平民出と聖女様をイジメるとは悪しき貴族の典型例だ。私は友愛と平等に満ちた国を、この聖女キャサリンと共につくろうと思う!皆の者、どう思う!」
と、その時、殿下が周りを見渡し、同意を求めた時、4人の乱入者が現れた。
【馬鹿馬鹿しい茶番じゃのう~~とワシは思うのじゃー】
【イワシをくわえて、市場を裸で走るぐらい恥ずかしい台詞だぜ!】
【ケケケケ~~わしの旦那様。ゼファーじいさんはわしの目を見てくどいたぞな。皆に同意など求めなかったぞな】
「皆様、こんばんは・・」
ゼムじいさん達は大きな声で、殿下を嘲笑しながら現れた。
最後までお読み頂き有難うございました。