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ハクとの再会


『待っておったぞ、テオドール』


聞き覚えのある声だった。

ハッとして目を開けると、そこは真っ白な空間で、目の前にはぼやけた黒い塊が浮いていた。

驚いて凝視していると、ぼやけた黒い塊はだんだんとハッキリした形をとっていき、ついには黒い亀の形になった。

黒い亀が目を開けると、琥珀色の瞳がまっすぐに自分を見ていた。


その琥珀色から目を離せず、しばらく見つめ合っていると、急にそれまで生きてきた記憶とは別の記憶が脳の奥底から溢れてきた。前世の、記憶だった。

止まらず溢れ出てくる記憶に息が詰まる。たくさんの感情と情報が自分の中に渦巻き、耐えきれず涙が溢れた。


「う……ぅあ…………あ…………」


いつの間にか座り込み、苦しさに時々呻きながらしばらく涙を流していた。




……どのくらいそうしていたのか。時間感覚は分からなかったが、記憶の奔流は収まっていた。


そうだ、俺は、トウノカケルという人間だった。事故で死んでしまったことも、伝えたいことがある大事な人たちが地球にいることも、転生するという選択をしたことも、思い出した。そして、この亀は……



『……落ち着いたかの?』


琥珀色の瞳が気遣わしげにこちらを見ていた。


「……あぁ、一旦は。」


そう返しながらも、自分の涙はまだ止まらなかった。記憶が溢れかえる現象は落ち着いたので言ったことは嘘ではないが、思い出したトウノカケルとしての記憶と想いは強烈で、未練、後悔、哀愁、愛情などの感情がどうにも消化しきれない。


「……お前は、ハクか?」

『そうとも』


目を手で拭いながら聞くと、肯定の言葉が返ってきた。


「じゃあ、今思い出したこの記憶も、嘘じゃないんだな」

『そうじゃ』

「……そうか」


消化しきれない感情を持て余しながら、肯定された現実を呑み込む。呑み込んで、やっていくしかない。決心は転生前にした。

必ず見返りを受けてとって、伝えに行くんだ。そう思い、顔をあげる。

変わらず、琥珀色の瞳はこちらを見ていた。


『現状やこれからのことについて共有したいと思うが、問題ないかの?』


5歳だったテオドールはすっかりトウノカケルの記憶と溶け合い、母さんであるアルベル、ばばさまであるテレーゼを家族と認めながらも、精神年齢や理解力はトウノカケルのものとなっていた。

未練も後悔も悲しさも愛しさも、この小さな胸に未だ渦巻いて苦しいが、それでも。ここで泣いて止まっているわけにはいかない。


「ああ……、大丈夫だ。説明を頼むよ」


その言葉を聞くと、琥珀色の瞳の黒い亀……ハクは頷き、説明を始めた。




この惑星の名はテラスフィア。転生前に話をされた、ハクたちが目を付けた惑星の名だそうだ。

降り立った大陸で生物の進化を見守り、時には少々手を出し、地球と似た環境になるように手を尽くして、知性を獲得した生き物たちからハクたちは信仰を獲得し消滅を免れた。

知性を獲得したものたちには国を作らせた。ハクが守護神となっているこの国はマール王国という名で、大陸の北の方に位置するそうだ。


『やってほしいことは色々とある、と話したと思うが、一番最初にやってほしいことは、この国、マール王国での地位の確立……ではなかった。その前に能力の特訓じゃな。外交に加われる、あるいは任せてもらえる地位を目指してほしいが、その前におぬしの価値を上げておかねば話にならん』


……えっ?能力??


『うむ。能力の訓練は必須なんじゃが、まぁワシも一緒におるし安心するとよい。』


思っていたことが表情に出ていたのだろうか、ハクはそのように言葉を足した。


『おぬしが思っていることはだいたいわかる。つながっているし、今は意識の中で話をしているからの』

「ぅえっ??」


思わず変な声を出しながら、言われた意味を考える。

……つながっている?つながっているって何??意識の中??


『うーむ、そうじゃなぁ。例えじゃが、頭を作業部屋に見立てるとするじゃろ?作業机の引き出しにはたくさんの記憶が詰まっていて、考えていることは作業机の上に置いているとする。ワシとおぬしの作業部屋は鍵のない扉一つでつながっていて、ワシは引き出しを開けることはおぬしの許しがないとできないが、作業机の上は見ることができる。といった感じじゃろうか?』


ふむ、なるほど。……そうしたらハクは俺の作業部屋に無断で入ってきたってことかな??


『入ってはおらんが扉は開け放してあるような感じじゃの。意識の中で話をしなければ秘するべき話をするのにも困るし、記憶を思い出した後落ち着くのにかかる時間が読めなかったしの。大目に見るがよいぞ。まぁ、そういうわけじゃから、今は思ってくれてもよいし、口に出してくれてもよい。うまく言葉にできない部分は言わずとも読み取るので任せてよいぞ』

「なるほど……」


とりあえず納得はした。許容できるかはさておき。……うーん、その扉に該当するものを開けるときに合図がほしいけど、それは追々話せばいいか……。


『さて、少し話は飛んだが能力の話じゃったな』


ハクが続きを話し出す。

ハクによると、この惑星では地球上で認識されていた科学系の法則の他に、魔術の法則もあるそうだ。さらに、科学系の法則を神力で無視することもできるらしい。……どういうこと??


『おぬしの魔術的な属性は水じゃ。ワシが水を司っているからの。神力の方は、何でもできるようにすると効果が弱まるから、ある程度絞った。ワシを地水火風に当てはめると地っぽいからのー、ワシに紐づく神力は重力操作……みたいなもんじゃ』


厳密には違うそうだが、今はとりあえずそう認識すれば良いそうだ。訓練時に感覚的に分かるらしい。

これからは定期的にハク指導の下訓練して、使いこなせるようにしないといけないらしい。


……しかし地っぽいからって、結構適当な理由だなー…………


『細かいことを気にするでない!訓練して使えるようになることの方がよほど重要じゃ!おぬしも5歳になったことだし、ワシとのつながりも強くなったし、耐えきれるようになっているはずじゃ。バリバリ訓練するから、覚悟せぃ』


ハクの琥珀色の瞳が細められ、ニヤリと笑っているように見える。


じとりとそんなハクを眺めながら、ふと、自分の体が5歳になっているということは、自分が転生してから5年経ったのだということに思い至る。


「ハク」

『なんじゃ?』

「俺が5歳だってことは、俺が転生してから5年も経ったんだよな?」

『うむ』


俺の考えを分かっているせいか、特に慌てることもなくハクは頷く。


「じゃあ……俺がハクからの見返りをもらうためには、あと何年かかる見込みなんだ?俺は……間に合うのか?」


読んでくださりありがとうございます。

半分くらい、駆け足な説明回でした。そしてもう少し説明が続く予定です。

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