五英最強の男チェダーvs最恐の女エダム
ゼロとロックフォールが死闘を繰り広げる裏で、もう一つの戦いがあった。
己の正義のためにチェダーは最恐の五英エダムと勝負をすることになったのだ
砦の中は広く、土がむき出しの訓練所だった。
外壁こそ立派に見えるが、中には何もなくただチェダーを縛るために、帝国が急ごしらえで作らせたのだ。
その訓練所の真ん中でチェダーと、透き通る青い髪に帝国の黒い軍服。腰にサーベルをつけた女性が対峙していた。
「よもやよもや、この三年この国を腐らせていたのが身内とは……」
「やはり気づいていたか。まあ、そのせいでこんな砦も用意したんだがな」
チェダーの言葉に女性はおかしそうに笑って、そう返す。
「なんと!? ここは俺に訓練が必要と皇女さまが用意してくださったのでは?」
「愚かだな。ここは大臣の野望到達に邪魔なお前を閉じ込めるために、奴隷に作らせたのだよ。知らなかったのか?」
「そうかそうか。あのクソデブか……して、五英が一人エダム貴様はどちらにつく」
「おいおい、分かりきったことを聞くなよ? 私は人が斬れればそれでいいんだ」
「つまり、大臣につくと……」
チェダーはそう声を出し、刀の柄を掴む。
「さて、五英最強の実力見せてもらおうか」
エダムは胸の前で手をクロスして、構える。
「炎神獅子乱舞」
チェダーは刀を抜きエダムに向かって、回転しながら斬りかかった。
「アイスシールド」
その声とともに分厚い氷の壁が現れて、チェダーの攻撃を阻む。
「やはり、強いな。しかし、斬る」
「やれるものならやってみろ、アイスクラッシュ」
無数の氷がチェダーに向かって飛ぶ。
「応用がすごいな……」
その攻撃を的確に撃ち落としながら、距離を詰めていく。
「仕方ない、アイスバーン」
エダムはサーベルを抜き、剣先から巨大な氷を生成する。
その氷をチェダーの頭上に落とす。
「炎神富嶽――」
氷に刀を振り、爆発を起こす。
その爆風に、エダムは目をふさぐ。
「勝機」
その隙を逃さず、エダムにチェダーは距離を詰め斬りかかる。
「愚かだぞ、チェダー。アイスプリズン」
目を閉じたまま、チェダーの気配にエダムは反応し技を発動させる。
「な、な。これは……」
何かを察し、そう声を出したのを最後に、チェダーは声はおろか体が動かなくなった。
「この技を使うことになるとはな……」
今発動した技はエダムの秘技で、寿命を縮める代わりに時を十秒間止める恐ろしい技なのだ。
「まあ、これで終わりだ」
無抵抗のチェダーをサーベルで切り刻む。
「ぐ、ぐはぁぁ。無念……」
時が動きだすとともに血を吐き、そう言い残してチェダーは地面に倒れる。
「これで、帝国に仇なす者もいなくなったか……しかし、魔王の娘を殺しに向かわした部下からの連絡が来ないな……」
そう声を漏らし、顎先に指を当て思案する。
サーベルに付いた血を振って落とし、鞘にしまう。
「まあ、斬るものが増えるのは良いことだな!」
エダムは満面の笑みで笑い、軽やかな足取りで帝都へと戻っていた。
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