最強の防御ロックフォールを斬る
砦の前にたどり着いたゼロ達の前にチェダーという男が現れる。
敵のはずのチェダーに共闘を持ちかけられる。
今回の敵は五英が一人ロックフォール果たしてその強さは……
俺たちは早朝キャラバンの一団を見つけて、砦の近くまで乗せてもらえることができた。
リリには悪いが、起こさないようにこっそり抜け出してきた。
俺たちに深くかかわるのは、彼女の身に危険が及びかねない。
「しかし、五英とはどのような奴なのじゃろうな?」
「さあ、俺は少しでも強いやつであることを願うだけだ」
プラムと砦まで歩きながら話す。
「どうしてじゃ?」
俺を見上げて、小首をかしげる姿がなんともかわいらしい。
「お前を惚れさせたいからな、強い所を見せたいんだ」
「なぜそこまで淡々と、お主はそんなことが言えるのじゃ」
「好きだからな」
その返答にため息をつかれた。
「どこが好きなのじゃ?」
「すべてだ」
「いや、回答になっておらんのじゃが……砦とはあれかの?」
話の途中なのに間が悪い。
言われて前に視線を送ると、確かに砦が見える。
砂漠の途中に不自然に生える、木々の生い茂った森を通っていけそうだ。
奥からなんかすごい破裂音とかも聞えてくる。
「何事だ?」
「様子を窺うのじゃ!」
俺達は音の出所に向かう。
「死ね、チェダー」
「我ら、帝都に仇なすものよ」
草陰からのぞくと、緑色の鎧を着た短髪の少年と、青いローブに身を包んだ男が、赤い袴姿の男に斬りかかるのが見える。
「よもやよもや、欲にまみれ、大臣の犬になったか……我が炎刀で燃やしてくれる」
そう言った直後、あたりの空気に熱がこもったような感じがして、斬りかかった男に刀身の赤い刀を向け、ひと振りする。
「「ギャあああああああああ」」
二人は一瞬で灰になってしまう。
「おい、そこの草陰の者、出てまいれ」
俺達に気が付いていたのか、俺達の方に視線を向け声をかけてきた。
「バレていては仕方ないのじゃ、お主がこの砦の主か?」
俺より先にプラムは飛び出して、赤い袴姿の男を指さして聞く。
「いかにも、俺はこの砦の主。チェダーだ、貴様たちは何者だ?」
俺はプラムの前に守るように立つ。
「我らは、腐った帝都の主を斬るべく、邪魔になりそうな五英を斬りに来たのじゃ」
プラムは正々堂々と目的を話す。
魔王の娘とは思えない潔さだ。
「なんと、そうか……目的は同じようだな」
チェダーはそう言って、刀を砦に向ける。
「どういうことだ?」
俺の質問に男は俺達を見ずに、答える。
「今し方、帝都をこのままでいいと思うやつと俺とで争っていてな。加勢を頼みたい」
チェダーは俺達を敵と思ってないようだ。
「相手は誰じゃ?」
「今この場に五英が二人いるのだ。そこで五英が一人、ロックフォールを頼みたい。……来るぞ警戒しろ」
突然目の前の地面が割れて、三メートルはあろうかという岩の魔人が飛び出してきた。
「何だこのちびと優男は」
俺達を一瞥し、バカにした声を出す。
「な、何じゃと? ゼロ斬ってしまうのじゃ」
「ああ。一の型、紫電一閃」
俺は体を低くして、一気に切り込む。
ガキンッ。
と音が反響し、岩の体に俺の刀がはじかれた。
「なっ」
「うん? 何かしたのかな?」
ロックフォールと思われる魔人が口元は見えないが、ニヤニヤと嫌味な笑みを向けているのが、隙間からのぞく目だけで分かる。
「ぜ、ゼロ? こいつできるぞ」
「ああ、俺に惚れてくれよ」
俺は刀を鞘に戻し、プラムの頭を撫でて笑いかける。
「どこまでお主は余裕なのじゃ?」
危ないので離れておくようにプラムに言って、魔人を睨む。
「さて、チェダーの仲間かと思うが、俺の下僕になるなら命だけは助けてやるぞ?」
「ロックフォールというのだったな、俺はプラムの刀だ。お前に媚びたりはせん」
「俺の名を知っていたか。まあいい、そうかよ、なら死ぬがいい」
ロックフォールは拳を俺に振り下ろす。
俺はそれを左に飛んでかわして、刀を抜く。
「仕方ない。全力で行かせてもらう」
刀を構え、敵の体をくまなく見る。
隙間なく岩でできていて、目元だけしか隙間はない。
「無駄無駄無駄無駄無駄、無駄ー」
ロックフォールはこぶしを連続で叩き込んできた。
「二の型、雷鳴迅雷」
俺は拳の動きを見切り、高速でかわす。
「どうなっておるのじゃ? さっきからゼロの姿が見えないのじゃ」
後ろからそう聞こえてきて、嬉しくなる。
「はぁぁぁぁぁ」
ガキンッ。
やはり刃が通らない。
「ちょこまかと邪魔だな、死ね。ロックフォール」
地面からとんがった岩が無数に飛び出してきた。
「っと!」
俺は上に飛んで回避する。
その瞬間を狙って、ロックフォールが俺より高く飛び両手を組んで俺を殴ってきた。
「ぐはぁ!」
なんとか平らな地面に落ちることができたが、骨にひびが、はいったような感じがした。
「フハハハハハ、もう立てまい。とどめを刺してやろう」
ロックフォールゆっくりと俺の方に歩いてくる。
「ゼロ、立て。立つんじゃ、お主は妾の刀なんじゃ。こんなところで折れてる場合か? 妾を惚れさすのであろう?」
プラムが泣きそうな声で叫ぶ。
(ああ、そうだよな。俺は刀だ、折れたらもう終わりだ……)
俺は刀を地面にさし、立ち上がる。
「すまない、プラム。もう大丈夫だ」
「はぁ? 何言ってんだよ? そんなフラフラで」
「ゼロ、お主……」
「絶対惚れさせてやる……三の型……」
「あ? 何だこの音は?」
空が曇り、雷雲が俺たちの上に現れる。
「お前は俺を怒らせた。この技でけりをつける」
「ふん、貴様に俺の鎧が傷つけられるものか!」
「雷神招来」
俺は刀を引き抜き、天にかざして叫ぶ。
空から雷が落ちてきて、ロックフォールに直撃する。
「がががががががががががっががっが」
ロックフォールは体を震わせて、声にならない声を上げた。
「いかに強固な鎧とはいえ、中身は人間だろう……もう、聞こえてないか」
黒焦げになって倒れたロックフォールにそう言って、背中を向ける。
「お主よく無事で……この馬鹿者、心配したんじゃぞ」
プラムは優しい言葉の後、すぐに思い出したようにフンと鼻を鳴らして、毅然とした態度で俺に駆け寄って声をかけてきた。
「悪かった。五英がここまで強いとは……」
「か、かまわん。流石、妾の刀じゃ」
弱った声の俺に優しく言ってくれる。
プラムが俺に手を差し出してくれたので掴む。
そしてモミモミする。
「ひゃん、お主。何するんじゃ」
くすぐったそうな声で抗議してきた。
「すまない。今は立てそうにない」
「そうか、かなりダメージをもらったものじゃな?」
プラムは俺の横に座って、俺の頭を撫でてくる。
「どうしたんだ?」
「嬉しいじゃろ?」
プラムはくすくすと笑って、いたずらっ子のようだ。
「ああ、嬉しい。そう言えば、チェダーはどうしたんだ?」
今、俺はまともに動ける状態ではないので、襲われては不味い。
「奴なら、砦に入ったきり出てこないのじゃ」
プラムはやれやれと首を振る。
なら、今のうちに茂みに入るか。
俺はなんとか体を起こし、倒れるように茂みに入る。
「ここなら大丈夫か……」
「もう無茶をするんじゃないのじゃ」
倒れた俺の頭を自分の膝にのせて、プラムは呆れていた。
「こうしてもらえるなら、いくらでも無茶するぞ」
「じゃぁ、止めようかの」
「いや、すまない。止めないでくれ」
頭を持ち上げられたので、慌てて腰を掴んで拒む。
「ひゃん。くすぐったいのっじゃ」
それからしばらく膝枕を堪能した。
バトルシーン頑張りました。
あんなの戦闘じゃないとかは心にしまってもらえればうれしいです笑
後書きって何を書けばいいのでしょうか? 次の話の事とかですかね?
よく分かりませんが感想とかをくれると励みになります。
今回より五英編が始まります。良ければ最後までお付き合いくださいです。