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色好みカースマルツゥを斬る

町を腐敗させた領主カースマルツゥを討つべく、ゼロは屋敷にやってきて……

 俺達は町の奥までやってきた。


 他の真四角の岩造りの建物とは違い、領主の家は横長でお城のような煌びやかな作りの建物だ。


「さて、何処から入ろうかの?」


 当然のように入口の門には兵士が二人立っていて、辺りを警戒している。


「任せろ――」


 俺はそう告げて、返事も待たずに二人の兵の首を殴って気を失わせた。


「相変わらず早いのじゃ」


 どこか楽しそうに笑って、プラムも門の前に行く。


「しかし手ごたえがないな……このまま中に入っていいか?」


「うむ、じゃが油断はするなよ? 何か隠し玉があるかもしれぬ」


「了解だ、少し掴まっててくれ」


 俺はプラムを抱きかかえると、門を飛び越え中に入った。


「お主のその身のこなし、本当に人間か?」


 小さいとはいえプラムを抱きかかえたままに、俺の身長の倍はある門を飛び越えたので驚いたように聞く。


「人間のはずだがな。それにこんな可愛くてちっちゃいプラムなら余裕だ」


 プラムを持ち上げて、高い高いをする。


「やめるのじゃ~、妾は魔王ぞ」


 ひとしきり持ち上げて、満足しプラムを下ろす。


「さあ、行こうか」


「まてまて、何満足そうにしているのじゃ? もっと丁重に扱うのじゃ」


 スタスタと先に行く俺に文句をプラムは言ってくる。


「すまない、敵が来てはいけないからな。ふざけてる場合じゃないんだ」


「いやいや、今の今まで高い高いをしておいて、急に何なのじゃ」


「静かに。誰か来る」


 プラムの口をふさぎ、柱の陰に身を隠す。


 プラムがぽかぽかと叩いてくるが気にしない。


『しかしカース様も好きですね』


『ほっほほ、この町の女子はだいぶ食いつくしたからの』


 男の声が二人分聞えてくる。


 片方は捜していた領主のようだ。


「どうする?」


「ふがふが、ぷはっ、ふう。やれそうか?」


「ひぃぃぃ」


 プラムが声を出した瞬間、男の一人の首が飛んだ。


「お前は誰だ?」


 俺は、倒れてしょんべんを漏らす男に聞く。


「貴様こそ何者じゃ? 私はこの町の領主、カースマルツゥ様であるぞ」


 その男は俺の事を指さし、震えながら、威厳なくそう声を上げる。


「何だお前の方か……斬る」


 俺は刀を向けて構えなおす。


「曲者じゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁー」


 カースマルツゥがそう叫ぶと屋根の上から仮面をかぶった男が落ちてきた。


「新手か……」


 俺は一度刀を鞘に入れ、体勢を低くし警戒する。


 仮面の男は口に猿轡をしていて、両手に鉤爪をつけ俺の事を見ていた。


「ぶしゅぅぅぅ」


 よく分からない言葉を言って、腕を振り上げ向かってくる。


「一の型、紫電一閃」


 男の爪がとどく前に俺の刀が腕を吹き飛ばす。


「ぶぶぶぶぶぶぶうぶ」


 男はのたうち回って、そのまま絶命する。


「おい、逃げるなよ」


 俺は逃げようとしていたカースマルツゥの首に刀を当て、声をかけた。


「ひぃぃ。頼む金でも女でもやるから、見逃してくれ」


「それがお前の最期の言葉か……」


 俺はそのまま首をはねて、プラムの元へと戻る。


「終わったのじゃな?」


 戦いの最中に何度も俺に視線を向けていたのに、わざわざ聞いてきた。


「ああ。念のため城の中を見て行くか」


「そうじゃな、捕まった物もいるかもしれんしの」


 二人で屋敷の中に入っていく。


 中は二階建てのように見えていたが、地下への隠し扉を見つけて中に進む。


 どこか異臭が漂う階段を、階段に取り付けられた松明を手に進んでいく。


 下につくと地下牢になっていて、裸の女性が数人捕まっていた。


「あ、あ、あ、」


「だずげで……」


 俺たちに気が付いて、牢屋越しに近づいてくる。


「酷い臭いと姿じゃな」


「ああ、薬品か?」


 女性たちの肌は、痣やむち打ちの痕、皮膚がただれている女性もいる。


 牢のドアを刀で切って開けてやると、女性たちは這い蹲って出てきた。


「ありがとうございます」


 その中でも比較的に元気な女性がゆっくりとした歩みで出てきて、声をかけてきた。


 ただ、体中の切り傷が痛々しい。


「いや、かまわんのじゃ。これは領主が?」


 プラムが女性に尋ねる。


「はい、私達は領主の玩具なので……早く逃げないと殺されてしまうぅ」


 女性は何かを思い出したようで、その場に膝から崩れて泣き出だした。


「もう、領主はいない。安心して出て行くといい」


 俺はそう声をけて、女性に肩を貸す。


「え? それはどういう――」


「天罰が下ったのじゃ」


 プラムはそう言って、親指を立てて見せる。


「あ、あ、あ、ごろして」


「ぶぶぶ」


 まともに喋ることのできない、女性たちが俺の足を掴んできた。


「お、おい」


「無理もないと思います、私も出て行ったからといって生きていける自信がありません。それに彼女たちはもう、まともに話すことさえできないくらい薬物を打たれてしまってますから……」


 肩を貸している女性は悔しそうな声で、そう言い「すみません。全員殺してください」と涙を流しながらお願いをする。


「いや、お前は怪我もひどくない、まだ生きれるさ」


 俺はそう女性に声をかけ、床に寝かせる。 


 女性はそのまま疲れはてていたのか、眠ってしまった。


 プラムに目でいいかと聞く。


「……」


 プラムが無言でうなずいたのを見て、俺は床に倒れる他の女性の首をはねる。


「行こうか……」


「じゃな」


 泣きつかれ眠る女性を抱えて、リリの家に戻ることにした。













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