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ラルクの歌姫③ 歌姫シエル~帝都に向けて

戦を終えたゼロ達。そして、町で開かれる祭り……ラルクでの最後の時間が訪れる

「戻ったぞ!」


 ラルクの町に戻ると、最初の時と同じように人が飛び出してきた。


 少し違うのは、村長が入口にいたことだ。


「良く戻ったな、海賊。後、旅の者よ」


 村長はそう言って出迎えてくれる。


「うむ、出迎えご苦労じゃ!」


「珍しいな、村長。どうしたんだ?」


 アレキサンダーが、不思議そうに聞く。


「ふん、珍しくて悪かったの。皆と話しての、少し祝いをしようという事になったのじゃ」


 村長はそう言った後、「無駄にならなくて良かったな」と、付け加え奥へと歩いて行く。


 どうやら、勝つことを信じていてくれたようだ。


 ついていくと、円形状の開けた場所に着いた。


「さぁ、飲むぞ、アレキサンダー」


 バンダナを頭に巻いた、男が樽を持ち上げて、俺達の方に声をかけてくる。


「おう、すぐに行こう」


 アレキサンダーは速足で男の方に歩いて行く。


「今回の報告ですが、村長。場所を変えませんか?」


 集まってきた人たちが演奏を始め、騒がしくなってくる。


「それは、明日でかまわん。今は楽しむのじゃ!」


 ガリレオの言葉に、村長はにこっと笑い、踊りだす。


「愉快な町だろ? 村長も元々は、ダンス好きなおじさんなんだよ。戦争のせいで、今はただの頑固者になっていたがな」


 見知らぬ男の人がそばに来て、コップを俺達に手渡し、そう教えてくれる。


「そうだったんだな……酒はいらないぞ」


「そうなのか? あ、嬢ちゃん。ごめん。それは、ガリレオさんのだよ」


 プラムに間違ったコップを、渡したようだ。


「うにゅ? 何だかふわふわするのじゃ――ゼロ~ともに踊るのじゃ」


 顔を赤くし目がどこかとろんとした様子で、プラムが手を差し出してきた。


 コップは、側にいた男に返している。


「え? ああ。ダンスはしたことないが……」


「音楽に任せるのじゃ……」


 プラムの手を取って、動きを合わせていく。


「まあ、たまにはいいのですかね……」


 ガリレオの小さな声が、後ろから聞こえた。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・


 ダンスを踊り、音楽が鳴り止み。しばしの静寂が訪れる。


 周りの人達は各々に勝利を喜び、静かに語り合っているようだ。


 近くの飛び出した岩に座り、ふらついた足取りのプラムを強引に隣に座らせた。


「強引な奴じゃな~。成敗してやるのじゃ! 魔王パンチ」


 ポフッと、軽くわき腹にパンチを決めてくる。


「そんなに飲んでいないのに、凄い酔いよ酔いようだな」


「よっとらん~。フフ、なんかよい気持ちじゃ~」


 俺の膝に頭をのせ、寝転ぶ。


「それは良かった」


「のう、ゼロ」


「どうした?」


「お主の本音が知りたいのじゃ」


 うにゅ~と、よく分からない声を出し、頬を赤くして、先ほどより真剣な顔でそう聞いてきた。


「本音?」


「うむ、この後の事もじゃが……なぜ、妾がそこまで好きなのじゃ?」


「そうだな……俺は姉さんが好きだったんだ」


「そうなのか? ますます分からなくなるのじゃ」


 キョトンとした顔になって、プラムが先を促す。


「でもその好きは家族に対するものだって、最近分かったんだ」


「うむ、そうじゃろうな? 普通は家族には恋せんじゃろうし」


 まあ、姉さんは本気だったみたいだが……


「まあ、そうだな。どことなく姉さんに似ていたんだ、プラムが」


「つまり、妾は姉の代わりかの」


「違う。髪の色と強気なところは似ているが……その、なんだ。俺は、過去に思ったんだ。少しわがままで、俺より長生きする子と旅がしたいって……その時たぶん、プラムの顔が浮かんだんだ」


「わがままじゃと!? ってか、その感じじゃと過去改変のせいで、妾に惚れたことになるのじゃ」


 プラムの言葉にハッとした。


「そうなるのか?」


「そうなるんじゃないのかの?」


「ふふ、それならやっぱり運命だな」


「未来で出会い、過去で好きになる。確かに運命的じゃの」


 プラムは起き上がり、満面の笑顔を見せてくれる。


「「「おぉぉぉ!」」」


 その時、周りが騒ぎ出す。



「何事だ?」


「ゼロ! あれじゃ、中央の岩の上にシエルが立っておるのじゃ!」


 プラムの言葉に、中央にある少し高台のようになった岩に視線を向ける。


 プラムが言うように、シエルがその上に立って、周りに手を振って町の人に笑みを向けていた。


「皆さん、お久しぶりですね? このような宴は……僭越せんえつながら、歌わしてもらいますね?」


 その言葉に周りが、いっそ騒ぎ出す。


「歌姫の帰還だ!」


「ありがたい」


「近くに寄るぞ、アレキサンダー」


 各々、シエルを近くで見ようと移動を開始する。


 俺とプラムはそのまま岩に座って見ることにした。


「シェ~グレ~ミー、アイズウー」


 シエルの声は美しく、心にしみるようだ。


 プラムと肩を寄せ合って、歌が終わるまで聴き惚れていた。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 朝、村長の家に泊めてもらった俺達はビスコッティとシエルに別れを告げて、町を後にしようとアレキサンダー達と歩いていると……


「鷹じゃ! コトハの使いかの?」


 プラムが空を指さすと、空から大きな鷹が地面に降り立つ。


「ほぉ? 知り合いの鳥か?」


 興味深そうにアレキサンダーは、観察してそう声を出す。


「たぶんな、足に紙が付いているな……」


 鷹の足に着いた紙を取り外し、広げる。


 高和その様子を見た後、どこかへと飛び立っていった。


「何が書いているのじゃ?」


「作戦の日取りのようだ……」


「何時ですか?」


 ガリレオが、小首をかしげて聞いてくる。


「三度目の朝を迎えた日だそうだ。それまでに帝都に俺達は潜伏して、混乱に乗じて城に潜入してほしいそうだ」


「ついに来たのじゃな」


 プラムが嬉しそうに、ニヤリと笑った。


「三日か……ガリレオ、戦の準備をするぞ」


「ええ、我らもその時に攻めましょう」


 アレキサンダーとガリレオは拳をぶつけあう。


「城の地図もあるな……目を通しておかないとな」


 城へ行くには手前の塔の最上階から、通路を通る必要があるみたいだった。


「なかなか、面倒な作りですね……」


 地図を見たガリレオが、そう声を漏らす。


「「正面衝突だろうじゃ」」


 アレキサンダーとプラムは堂々と同時に、言ってのける。


「そうだな」


「そうですね……でも、城には二人で行ってください。私達は周りの除去を手伝います」


「そうか、それはありがたい」


「次に会う時は、帝都を滅ぼした後ですね」


「そうじゃな。頼んだのじゃ、ガリレオ、アレキサンダー」


「おう、任せろ! あまりにも遅いときは、俺達も攻めるからな」


 愉快そうにアレキサンダーが、笑い声をあげた。


「ふん、ゼロならすぐに倒してしまうのじゃ」


「それは、頼もしいですね。では、ご武運を」


 入口に着き、ガリレオが俺に手を差し出す。


「ああ、お前達もな」


 その手を握り返し、力を籠める。
















ついに次回より、帝都編スタートです。予定では残り三話で、終わる予定ですが……文字数が多ければ伸びるかもです(笑)次回も読んでくれると嬉しいですでは、さよなら、さよなら、さよなら。これ知ってますか?(笑)映画のあの方ですでは、次回もお会いしましょうです

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