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ラルクの歌姫① 民に愛される王

ラルクの町に到着したゼロ達、アレキサンダーとも落ち着いて会話していく

 アレキサンダーを追いかけ町に向かうと、肩にプラムを担ぎ馬から降りて、俺達を待っていてくれた。


「プラムを下ろしてやってくれないか?」


 肩の上で気を失っているプラムを按じて、アレキサンダーに声をかける。


「ああ、すまん。飛ばしすぎたようだ」


 空いた手で自分の頭をかいて、申し訳なさそうにプラムを手渡してくれた。


 胸の前で抱きかかえる。


「ゼロ……あの揺れは、苦手じゃ――」


「そうか、少し寝てていいぞ?」


 弱弱しく声を出したプラムの頭を撫でて、そう言う。


「ありがとうなのじゃ。途中でローブがあれば、手に入れてくれんなのじゃ……」


 プラムはそう言い残し目を瞑ってしまう。


 確かに町の領主に角がばれるのは、さけたいな。


 アレキサンダーは気が付いた様子はなさそうだ。


「では、行くぞ! ついてまいれ」


 アレキサンダーの先導で町に入る。


 町の中は岩造りの建物が並び、窓のような場所は木の板で防がれていた。


「静かだな……」


「皆の者、戻ったぞ! ラルクの勝利だ!」


 アレキサンダーが、声を張り上げる。


 ガチャッ――


「おじさんだ! ママ、おじさんが帰ってきたよ!」


 家から女の子が飛び出してきて、家の中に声をかけた。


「おぉ、アレキサンダーが帰ってきたぞ!」


「まさに救世主! ラルクに栄光あれ!」


 その声に反応して、次々と家から人が飛び出してくる。


「はぁ、アレキサンダー。ゆっくりしてる暇はありませんよ?」


「分かっておる。だが、民との交流も大切だろ?」


 そう言いながら、先ほどの子供の頭を撫でに行ってしまう。


「いつも、ああなのか?」


「ええ、人望が厚いんですよ」


 後ろについてきていた兵士たちも、仕方なさそうに見守っている。


「良いことだな」


「お時間割いてしまい、すみません」


「いや、かまわない。それより、この辺りで、ローブ売ってないか? プラムに着せたいんだ」


「ローブですか……そもそもこの町は、お店という概念がないんですよ」


「どういうことだ?」


 店がない町なんてあるのか?


「物々交換で、助け合っているんですよ。たまに近くの町で歌を歌って稼いでいたようですが、戦争の影響でそれも今はないそうです」


 なるほど、お金の概念がそもそも乏しいのか。


 となると、ローブを手に入れるのは厳しか?


「アレキサンダー、ローブが必要なようです」


 突然、町の人に囲まれたアレキサンダーにガリレオは声をかけた。


「ぬ? 皆の者、要らぬローブはあるか?」


 アレキサンダーは目線だけ俺達に向けて、そう声をかける。


 背が誰よりもでかいので、すぐに気が付いてくれたようだ。


「あんたのサイズのローブって、布団か何かかい」


 誰かがそう声を出して、周りの人たちも笑いだす。


「違う違う、えっと――あいつのだ」


 町の人の視線が俺達に集まったので、プラムを見せる。


「子供用だ、この子くらいの」


 アレキサンダーが俺の意図に気付き、最初に声をかけてくれた女の子を持ち上げた。


「それなら、その子のお古があるから、あげるよ」


 恰幅の良い、女性がそう声を上げる。


「本当か、かたじけない」


 女の子を肩に乗せ、その女性に近づいていく。


「本当だよ、カナの相手を何時もしてくれてるしね」


 どうやらあの少女のお母さんのようだ。


 女性は家に戻り、ローブを片手に戻ってきた。


 俺も側に行く。


「すまない。突然」


「いいって、いいって。どうせ使わないし」


「ありがとう」


 お礼を伝え、直接受け取る。


「さて、そろそろ村長の所に行こうか」


 女の子を下ろして、アレキサンダーはそう声をかけてきた。


「そうだな、とりあえず話し合いの場が必要だ」


 町の人に手を振って、奥へと進んでいく。


 しばらく歩くと洞窟のような場所の入口に着いた。


 アレキサンダーはそのまま中に入っていく。


「迷路のような場所なので、はぐれないでくださいね」


 ガリレオは俺にそう忠告して、中入っていった。


 その後ろに俺も続く。


 他の兵は、外で待つようだ。


 細長い道を進み何回か曲がった後、木のドアのようなものが立てかけられた場所にたどり着いた。


「姫、村長。戻ったぞ」


 三回扉を叩き、アレキサンダーは中に入っていく。


「戻ったか、海賊」


 そのアレキサンダーを迎えたのは、白髪の老人だった。


「村長、海賊ではない。冒険者だ」


「ふん、どっちも一緒じゃ。後ろの物は? 見覚えがないの」


 俺の存在に気が付き、俺の方に視線を飛ばす。


「俺はゼロ、話がしたくてここに案内してもらった」


「よそ者か、勝手に招きおって」


 機嫌が悪そうだ。


「いや、さきの戦で世話になったからな! 次に備えて、会議をしようじゃないか」


 手を広げ、アレキサンダーは村長に説明をする。


「……中に入れ」


 どうやら入らしてくれるようだ。


「失礼する」


 扉の先はかなり広く、長机と椅子が八脚。剣が壁には飾られていて、話し合いには十分な広さの作りになっている。


 廊下の部分は差し込む太陽光の明かりだったが、この場所は四隅の松明で光源を取っているようだ。


「適当に座れ。おい、アレキサンダー。何勝手に食っておるか」


 テーブルの上に置かれた果物らしきものを、勝手に食べ始めた事に気が付き村長が声を上げる。


「はしたないですよ? アレキサンダー」


「すまん。腹が減っていてな。ゼロも食わんか?」


 悪びれる様子もなく、隣に座った俺にも勧めてきた。


「いや、今はいい。それで、貴男が村長なのか?」


「そうじゃ。ワシがラルクの村長、ビスコッティじゃ」


「突然すまない。帝国を目指して旅をしている、ゼロという。この子は、プラムだ」


 膝の上で寝ている、プラムの説明も済ませる。


「帝国じゃと? 貴様、帝国にくだる気か?」


 ビスコッティは少し苛立った声でそう聞いてきた。


「違う。滅ぼすつもりだ」


「ガハハハッ、ゼロ。お前はやはり面白いな」


「ですね、アレキサンダー」


 アレキサンダーとガリレオは、俺の言葉に笑い声を出す。


「まさか、バカが増えるとは……」


 村長はどこか呆れている。


「何がおかしいんだ?」


「いや、俺達もその帝国を滅ぼそうと提案していたのだ。まさか同じ志の者がいようとは」


「ふん、海賊風情に倒せるものか! お主もバカ言ってないで、隠れておくんだな」


「いえ、必ず恩は返しますよ」


 ガリレオは真面目にそう言い返す。


「ガリレオ達も戦うのか?」


「はい。この町を救う方法として、そのほうがっ手っ取り早いので」


 少なくとも嘘を言っているようには感じない。


 レジスタンスの事を教えておくか……


 俺はそう思いつき説明する。


 村長は驚いていたようだが、少し嬉しそうな表情になった。


「おじいちゃん? お客様ですか?」


 部屋に女性が入って来て、そう声を出す。


 薄い青のロングヘア―に、青い瞳。肌の色がすごく白い女性だ。


「おぉ、姫! こんにちは」


「あら、アレキサンダーさん、それにガリレオさんも。あなたは?」


 俺の方を見て、不思議そうに聞いてきた。


「俺は、ゼロ。この子はプラムだ」


 目が覚めたのか手の甲で目をこすっている、プラムの事もついでに自己紹介を済ませる。


「ようこそ、ダルクへ。私は村長の娘のシエルといいます」


 にこりと笑い、優雅に軽く頭を下げてきた。



バトルが、次回に持ち越しですが、安心ください(笑)この後すぐ、投稿します!19時予定です

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