いざ、行かん! 新たな町ラルク
崖伝いに進むゼロ。最短ルートで、ラルクにたどり着き……
「ぬぉぉぉ――ゼロ、落ちる。落ちてしまうのじゃ」
突風が吹くたびに、プラムが叫ぶ。
ドレス姿のまま器用に俺の腰に足を回し、力を入れ落ちないようにしがみつく。怖いのか腕を首に回して、ギュッと抱きついてくる。
「落ちないぞ、プラム。安心してくれ」
今、俺はプラムを背負い、崖を伝って横向きに進んでいた。
少し先に足場が見えているので、そこまで行けば休めそうだ。
「本当に本当か? 嘘じゃないじゃろうな?」
「本当に本当だ、崖が崩れない限りは――」
そこまで声を出したところで、掴んでいた岩が崩れる。
「ぬぉぉぉ!」
「プラム、掴まっていてくれ。 二の型、雷神雷光」
「にゃぁぁ――た、助かったのじゃ」
壁を蹴り上げ、足場に向かって高速で移動した。
「言っただろ? 落ちないって」
「うむ、有言実行じゃな」
「ここからは、普通に歩けそうだな」
当面は地面と変わらない岩場が続いている。
下を見ればかなりな高さではあるが……
「すまんかったのじゃ」
プラムが背中から降りて、そう言い謝ってきた。
「いや、俺にとってはご褒美だ」
「まさかお主……わざっとゆっくり移動しておらんよな?」
ギクッ。
「そ、そんなことないぞ?」
「ホントかの~」
口元に手を当てて、ジト目で俺を見上げてくる。
「それより、行こう」
そうごまかすように言って、歩き出す。
「ま、待つのじゃっ」
プラムが慌てて、追いかけてくる。
移動の間、プラムとたわいない会話を楽しんだ。
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「敵は多い! だが、姫に恩義を返すとき。皆の者気合を入れろ!」
声を上げたであろう筋肉質の男が、馬にまたがり剣を天に向けて掲げた。
その後ろにいた、数十人ほどの兵が、「うおぉぉぉぉぉ!」と、雄叫びを上げる。
俺達は岩陰に隠れて、下で始まろうとしている戦争の様子を窺っていた。
対する帝国兵は全方位に盾を構え、隙間から槍が飛び出した複数の小隊スタイルでゆっくりとラルクへ向け進軍していく。
その数は数えるのも嫌になるくらいだ。
「あの町がラルクだよな?」
剣を掲げた男たちの後ろにある小さな町を指さし、プラムに聞く。
その町は正面の道以外を岩壁に守られていて、天然の要塞のような雰囲気だが、そのせいか入口に門などはなく、動物除けにしかならなそうな木の柵が見えるだけだ。
「そのはずじゃ。じゃが、不味いのじゃ。このままでは、帝国に滅ぼされてしまうのじゃ」
確かにこのまま様子見を続けていては、滅ぶのは時間の問題だな。
「プラム、そこで待っていてくれ。この場所なら安全だろう」
「どうする気じゃ?」
プラムが不思議そうに、聞いてきた。
「奇襲をかけ、ラルクの兵と思えるやつに加勢する――」
そう言葉を残し、崖から滑るように砂煙を上げ、降りて行いく。
「三の型、雷神招来」
帝国兵の小隊に向け、雷を落とす。
「ギャァァァァ」
「何事だ!!!」
突然の落雷に、帝国兵の統率が乱れる。
「好機、皆の者続け! アララララーイ!」
その好きに筋肉質の男が声を上げ、突撃を開始した。
「落ち着け、敵は少ない。帝国の恐怖を、知らしめるのだ」
「四の型、雷光一閃」
「ヒィィィィィィ」
下に着いたところで、目の前で指揮をとろうとした男もろとも、小隊を斬り殺す。
「統率が乱れています。残念でしたね? 侵略者の皆さん」
俺の横を、細身の黒い騎士甲冑が駆け抜け、両手に持った細い剣で、唖然としている帝国兵を斬り殺した。
「撤退、撤退!」
後ろに構えていた帝国兵が声を上げ、太鼓を叩く。
我先にと前線の兵が武器を捨て、逃げ出す。
「深追いはするな! 我らの勝利だ!」
馬にまたがった男はそう声を上げ、自身の兵に勝利を告げた。
「うおぉぉぉぉぉ!」
その声に兵たちが、雄たけびで答える。
「さて、貴男は帝国の兵ではないですよね?」
黒い騎士甲冑姿の男が俺の前に歩いてきて、そう聞いてきた。
顔は見えないが声から、男と判断できる。
「そうだ。俺は帝都を目指して、旅をしている。お前たちは、ラルクの兵か?」
「少し違うぞ、坊主。加勢、感謝する」
馬にまたがった赤毛の短髪の男が、話に加わってきた。
馬から降りた男は俺よりデカく、全身の筋肉が鎧のようなたくましさだ。
「いや、かまわない。ラルクの町によるついでだ」
「質問の答えですが、少し違います。私達も旅をしていて、ラルクの皆さんにお世話になっているのです。そのお礼に最近は、侵略者からこの町を守っているのです」
なるほど、民というわけではないのか。
「立話もなんだ、町へ行こう」
筋肉質の男がそう提案してきた。
「そうだな、少し待っていてくれ」
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俺はプラムを連れて、二人のもとへ戻る。
「ほう、子ずれだったか」
「何じゃ、お主。脳みそまで筋肉でできておるのか?」
男の言葉にムッとした声で、プラムが軽口をたたく。
「ふふ、面白い方ですね。自己紹介が、まだでしたね。私は、ガリレオ。この人は、アレキサンダーです」
甲冑ヘルムを取って、自己紹介をしてくれた。
甲冑の男は、青年の様な顔立ちで、茶髪のロングヘア―だ。
「俺はゼロ。この子は、プラムだ」
手短に自己紹介をする。
「ふん、ゼロ。とっとと、ラルクに向かうのじゃ」
プラムは機嫌が、悪そうだ。
「そうだな。細かい話は、後でだな」
「嬢ちゃん、機嫌を損ねたお詫びに、我が馬に乗せてやろう!」
言うが否や、プラムの体を片手で持ち上げ、馬に乗せる。
「た、高いのじゃ!」
アレキサンダーの馬は他の馬と違い、たくましく、ふたまわりくらいデカい。
「フハハハハハ! 行け、アルフレッド」
軽快に笑い、プラムを連れて、町に向かって走っていく。
「あ、はぁ。私達も行きましょうか」
ガリレオがため息交じりに、そう声をかけてくれる。
「そうだな」
残された俺とガリレオ、後ろであたりを警戒している一部の兵とともに、ラルクに向かう。
今回は遅くない投稿です。
ようやく、ラルクです。戦いを入れると少し長くなるので、今回は短めで切りました。(笑)
次の予定は、町の説明、アレキサンダー達の説明。そして、バトル!?
お時間ありましたら、読んでもらえると嬉しいです。
さて、雑談(笑) いや、忙しすぎるでしょ(笑)何でこんなに予定が詰まってはるん? でも書く、書きたくて、書きたくて震えが(笑)でも焦らず丁寧に、ラストスパート頑張ります! 今回はプラムを可愛く書けたのでよしです! ブックマークも残り二つで、区切り良いのでお願いしたいですね(笑)
敵は残り僅か、町も後は帝都を残すのみ? ゼロとプラムの冒険譚ぜひ最後までよろしくお願いしますです。




