崩壊した町――教会の攻防
教会に向かう途中――崩壊した町の真実とは
町の中間程まで、たどり着いた。
教会までは、目の前の少し砕けている、階段を上ればたどり着けそうだ。
「戦争でもあったのか? 帝国の兵まで死んでいるな」
「うむ。じゃが、魔獣がいるのが気になるのじゃ」
一度立ち止まり、辺りを観察する。
壊れた家、瓦礫の下着気になった民。見たことない鎧を着た兵士のお腹には槍が突き刺さり、そのそばには帝国の鎧を着た兵士も死んでいた。
「ブヒィィィィィィ!!!!!」
半壊した家の塀の向こうで、豚のような鳴き声が鳴り響く。
「へへ、見ろよ! ぶっ壊れてやがるぞ」
瓦礫の間から様子を窺うと、数匹の二足歩行の豚が女性を囲んでいた。
その女性は服を着ておらず、泣きながら豚の物まねをしている。
「何が見えるのじゃ?」
身長の関係で、様子が分からないプラムがそう聞いてきた。
「豚の魔獣が、女性を囲んでいるな……五匹だな」
「豚の魔獣……やれそうかの?」
「もちろんだ」
俺は瓦礫を飛び越えて、一番手前の豚の首をはねる。
「貴様、何者だ!」
「「「ブフフ」」」
女性の髪を掴んだ豚が俺を睨んできて、そう凄んできた。
周りの豚は三本に先が割れた槍を構えて、俺の動きを警戒している。
「名乗る必要などない! 四の型、雷光一閃」
そのまま、豚どもの首を斬り落とす。
声を出す間もなく、豚の魔獣は息絶えた。
裸の女性もその弾みで、その場に倒れ落ちる。
「終わったのかの?」
プラムが顔をのぞかせて、そう確認を取ってきた。
「ああ。なあ、プラム。喋る魔獣もいるのか?」
「知能があるのは妾を除いて、四天王だけと教えたじゃろ?」
そうだよな。
「でも、その豚。喋っていたぞ?」
「何と!? バカな? ありえないのじゃ」
プラムが、驚いた声を出す。
「それがあったんだ。そこの女性に豚の物まねを、させていたぞ」
女性の方を指さして、説明する。
「ふむ、何が起こっているのじゃ?」
女性のすぐそばに行き、プラムは着ていたローブをかけた。
「魔王にも、分からないことがあるんだんな」
「当り前じゃ! バカにしておるのか」
俺の側に駈け寄ってきたプラムが、俺を見上げて睨んできた。
「してないぞ。魔王に分からないことがあることに、驚いただけだ」
「たぶんじゃが、これもあの椅子の魔獣と関係がありそうなのじゃ」
腕を組んでそう仮説を述べる。
「なるほど……とりあえず、教会に向かうか? 何か分かるかもしれないし」
「うむ、早く片付けて、帝都に向かうのじゃ」
俺とプラムは再び、教会に向けて歩き出した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
教会のドアを開け、中に踏み入る。
教会の中はむせ返るほどの悪臭で、壁や床にツタが幾重にも張り巡らされていた。
「くぅ、これは辛いな……」
「流石に鼻が、まいりそうなのじゃ」
良い匂いに感じているはずのプラムも、鼻を抑えてしまっている。
やはりというべきか以前とそう変わらない内装で、教会の奥にはデカい女性の像が置いてあり、地下への階段が見て取れた。
「行こうか」
「うむ、少しの我慢じゃ」
「あ、あ、あひぃぃぃ」
「許して、もうださないでぇぇぇー」
「帰る……唯、帰るのぉぉぉ」
階段を進むにつれて、奥から女性の声が響いてくる。
「何が起こっているのじゃ?」
「酷いことだろうな……しかし、何かデカい気配がするな」
今までにない強力なの気配を、奥から感じた。
「ぬ? そう言えばゼロは、そういう気配に敏感なのじゃな」
「まあ、魔物退治をしていたからな」
プラムに嫌われるかな?
「なるほどなのじゃ。おっと、着いたのじゃな」
気にした様子がないことに、安どする。
人に害を及ぼす魔獣は、やはり斬っていいようだな。
階段が終わり、地面にたどり着く。
「プラム、ここで待っているか? この先に何があるか分からないしな」
俺はプラムの方を見て、そう提案する。
「いや、行くのじゃ。妾も、気になることがるのじゃ」
俺より先に、進んでいく。
プラムが気にしていることの、正体までもう少しな気がした。
「ひぐぅぅぅぅぅ!」
「お、お母さん何処? かえ――」
廊下の壁には、いたるところに年端も行かぬ女性が触手ではりつけられていて、どの女性も服を着ておらず、恥部に太い触手が入り込んでいた。
「酷い、酷すぎるじゃ」
「どうなっているんだ?」
どの女性もお腹が膨れ上がり、声を上げ続けている。
「ゼロ、急ぐのじゃ! 元凶を断ち、皆を助けるのじゃ」
「ああ、掴まっていてくれよ。二の型、雷鳴迅雷」
俺はプラムを胸の前で抱え、走っていく。
「あったのじゃ! ゼロ」
「よし。三の型、四の型混合接続。稲妻ランサー」
プラムを下ろし椅子に向かって、雷の槍を飛ばす。
だがその攻撃は椅子にあたることなく、はじかれてしまう。
「おやおや、もうここまで来ましたか……噂の五英ですかね?」
椅子の前に耳のとがった、赤いタキシード姿で、眼鏡をかけた男が現れた。
「何者だ? 貴様!」
俺は刀を鞘に納めて、構えを取る。
「な、なぜじゃ? 何故お主が生きておるのじゃ? アズー」
プラムが驚愕した声をだし、その男を指さす。
「おや? プラム様ではないですか――お久しぶりです」
アズーと呼ばれた男は、大げさにお辞儀をする。
「答えるのじゃ! 父とともに、お主は死んだはずじゃ」
「ああ、それは簡単ですよ! 帝都と私は手を組んでいたのです。まあ、今は裏切られてしまって、こんな場所に潜んでいますがね」
クックックと笑って、俺の方を睨んできた。
「俺は、五英ではない。プラムの刀、ゼロだ」
「ほう、悲しいですね。魔王ともあろうものが、人間と手を組もうとは……嘆かわしいですね」
「貴様も、帝国と手を組んでいたのだろ?」
「そうですよ? ただ、滅ぼす前提で、ですけどね」
つまりアズーは、帝国を裏切る前に、裏切られたという事か――
「答えるのじゃ、アズー。何故、裏切ったのじゃ?」
プラムは、わなわなと体を震わせて、アズーを睨む。
「それは簡単ですよ、魔族がこの大陸を支配するためです。後、今の私は、ミモレットと名乗っています」
「そのために多くの犠牲をだし、他の四天王まで滅ぼしたのは何故じゃ?」
「実験ですよ。人に魔物の肉を食べさせたら、どうなるのかというね。まあ、そのせいで私まで追われているのですが……」
「どうやったのじゃ? 父の死がずっと疑問じゃったのじゃ――お主や、五英では倒せると思えないのじゃ」
そこまで、魔王とは強い存在だったのか。
「そこはプラム様に感謝ですよ」
ミモレットは、嫌らしい笑みを浮かべる。
「どういう事じゃ?」
「貴方を人質に、無抵抗のまま殺させていただきました」
「何じゃと! 許さんのじゃ! ゼロ、殺せ! こ奴は敵じゃ」
いつも以上に、激しい口調だ。
「了解だ」
「人間風情が、来なさい。デスパペット!」
地面からかなりの数の、骨の魔獣が現れる。
これが、ミモレットの能力か……
「一の型、二の型、混合接続。神速一閃」
「ぐぎゃやややややややっや!!!!」
椅子の魔物を斬り殺し、ミモレットの首に刀を当てる。
「バ、バカな? デスパペット! こいつを殺せ!」
突如背後を取られて、狼狽した声を上げ、召喚した魔獣に指示を飛ばす。
「無駄だ! もう死んでいる」
俺の声を上げるとともに、骨の魔獣は地面に倒れこむ。
「そうだ、そうです。手を組みましょう! 世界の半分――」
ミモレットの首が宙を舞い、青色の血が噴き出す。
「父よ、敵は取ったのじゃ……残るは帝都のみかの……」
身内の裏切りを知り、気が落ち込んでいるのか、声に元気がない。
「行こう、プラム。生きている者を地上に運ぶぞ?」
プラムの頭を撫でて、普段のプラムが言いそうなことを提案する。
「うむ、そうじゃな――ありがとうなのじゃ、ゼロ」
ぎこちない笑みを浮かべて、プラムが俺の手を掴む。
早く何時もの笑顔が、見たいと思った。
もしかしたらこれが姉が言っていた、本当の恋というものかもしれないな。
お読みいただきありがとうございます! え? 四天王が弱いって? 大丈夫です。ゼロが強いのです!
この町のお話はあと一話ほど続きます。まだ書かねばな事があるので、楽しんでいただけましたら嬉しいです!
次回もまたよろしくお願いします。バトル回になっております。後、いちゃいちゃ書きたいです(笑)