帰還――次なる町へ
修業を終えた、ゼロ。旅を再開すると、以前臭った、腐敗臭が漂ってきて……
眩い光が消え、突如に目の前が森へと変わる。
「ここは……プラム!」
辺りの変化に戸惑いつつも、目の前にいた女の子の存在に、全てどうでもよくなった。
「ひゃぅ!? どうしたのじゃ?」
俺はその子を抱きかかえ、強く抱きしめる。
「好きだ――この世の誰よりも、愛している」
そう伝えて、プラムの小さな口に俺の口を重ねようと顔を近づけていく――
「はにゅ~。だ、だ、ダメなのじゃ!」
俺の顔を手で押さえられた。
「どうしてだ?」
俺は目を見つめて聞く。
「妾は、主ぞ! それに、あ奴が見ておる」
プラムが指さした方に、視線を向ける。
上半身裸で、下半身は葉っぱでできたズボンのようなものを身につけた、少年がいた。
「何者だ? 気配がしない……」
「ゼロに幻覚を見せた、張本人じゃ」
斬るべきか……
「ぶっそうだな~。修行、お疲れ様」
「心が読めるのか?」
いっそ、警戒を強める。
「仙人だからね~。そっちの子は、すぐだったけど。君は、時間かかったね」
ケラケラと愉快そうに笑う。
「仙人? プラムに何かしたのか?」
俺は刀の柄を掴み、構える。
「ゼロ。こ奴は、敵ではない」
プラムがそう言うなら、仕方ないな。
俺は構えを解く。
「うん、そうそう。僕は敵じゃない。少し説明させてね?」
「ああ、構わないぞ」
「まず、君たちに少し過去の映像を、見せさせてもらったよ。君の方は記憶がないから、少し苦労したけどね」
「ああ、そのおかげで思い出せた」
「それは良かったよ。僕の力で、少し過去に介入させてもらったよ! 君を強くするために」
「そんな事、可能なのか?」
「全部は無理だね、僕自身が直接は触れないし。僕の声が聞こえる者に、助力を頼まないとだし」
それで、姉さんが手伝っていたという事か。
「お前が姉さんを、殺したという事か……」
怒りが込み上げてきた。
どのみち長くはないとはいえ、平穏に暮らす分にはもう少し、猶予があったはずだ。
「それは違うよ。本来はあの日の夜に、君のお姉さんは姿を消すんだ。その未来を変えただけだよ」
「どうして、姿を消したんだ?」
分からない。いや、もうその世界ではないからか……
「麒麟流を、継承させないためだよ。すべての日記とともに、彼女は海に身を投げる予定だったからね――」
どうしてだ? 俺はふさわしくないのか?
「君は本当に、鈍いね~。いいかい? 君を戦いの運命から、救うためだったんだよ。平和に暮らして欲しかったんだろうね。君はどのみち、修業は続けていたんだけどね」
俺の心を読んで、そう続ける。
「うにゅ? よく分からんのじゃが、つまりゼロは、記憶を取り戻したのかの?」
プラムが不思議そうに、そう聞いてきた。
「ああ、全て思い出した。そして、強くなったぞ」
「では、もう……旅は終わりなのじゃな……」
プラムがしゅんとした顔で、そう呟く。
「どうしてだ?」
「お主の姉は、平和に暮らして欲しいのじゃろ? それに、記憶がある今、もうゼロじゃないのじゃ」
本当に、可愛いな。
「そうだな……でも、俺はゼロだ。プラムの刀であり、この世界でプラムの望みを叶えるためにこの力を使う」
俺はプラムの前に行き、跪いて、そう誓いを述べる。
「ゼロ――うむ。そうか、そうじゃよな……ならばゼロよ、その力、存分に使わせてもらうのじゃ」
プラムは顔を上げ、腕を胸の前で組んで、そう言ってくれた。
「一件落着のようだね? じゃぁ、僕はそろそろ行くね?」
「ちょっと待って、名前はなんていうんだ?」
「仙人に、名前はないよ。じゃあね、この世界をよろしくね」
仙人はそう言葉にすると、スウッと姿が消える。
「な、どうなっているんだ?」
「じょ、成仏というやつかの?」
「幽霊なのか?」
結局、俺達にはその正体を知るすべがなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「どこに行けばいいんじゃ」
「方位磁石もまだ、ダメか?」
「うむ、ぐるぐるじゃ」
俺達はあの後、森をさまよっていた。
方位磁石も、針を止めず回り続ける始末。
このままでは帝国に着くなんて、夢のまた夢だな。
日がだいぶ、落ちてきた。
「そう言えば、どのくらい俺は、意識がなかったんだ?」
「そうじゃな、七日くらいかの?」
その言葉に俺は、足が止まる。
「そんなに経っていたのか?」
「うむ」
こくりと、プラムがうなずく。
「その間ずっと、待っていたのか?」
「む、当り前じゃろう?」
何を言っているんだという顔だ。
「そうか……すまなかった」
かなり待たせて、しまっていたんだな。
「謝ることないのじゃ、行くぞ」
プラムがまた歩き出したので、その後ろについていく。
辺りに腐敗臭が、漂ってきた。
「何か、臭うな……」
「そうじゃな、果実が熟れるような感じじゃ」
「臭くないのか?」
「? まさかまた、あ奴かの」
この感じは、以前にもあったことだ。
「臭いの出所を、探るか?」
「うむ。助けれそうなら、助けるのじゃ」
俺達は歩みを、早める。
しばらく捜索していると、町を見つけた。
その奥の高台に、以前見たエンブレムの教会が見える。
「何だ? この町は」
俺の身長をはるかに超える石壁に守られていて、入口らしき破壊された門から中には、入れそうになっていた。
「何かあったのかの? ゼロ、警戒して進むのじゃ」
俺達は教会に向けて、町に入っていく。
「……」
「……」
「……」
ガシャン、ガシャン。
足を踏み入れるとすぐに、鎧を見につけた骸骨の兵団が、俺達の方に歩いてくる。
その数は三十ほどだ。
辺りの建物は壊れていて、人の死体が無造作に転がっていた。
「どうなっているんだ?」
「屍、まさか――なのじゃ……」
プラムが骸骨を見て何かつぶやくが、声が小さくて聞き取れない。
「斬っていいのか?」
「勿論じゃ。足を叩き折れば、動けないはずじゃ」
プラムのアドバイス通りに、足を狙って斬っていく。
「何か知っているのか?」
全て斬り終えてから、プラムに改めて聞いた。
「いや、ありえないことなのじゃ。気にするでない」
プラムが速足で、教会に向けて歩いて行く。
これ以上の詮索は、やめた方がよさそうだな。
そう考え、警戒しながらその後に続く。
屍、プラムの発言。気になりますか? (笑)次回伏線? 回収がついに?
週一投稿、最低限できるように、頑張りますので、これからもよろしくお願いします。
それではまた次回お会いしましょう!




