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愛情――過去を越えて

ゼロ改め、一護と寧々はお互いを支え合い、生きてきた。


その別れは必然で、唐突で――

「今日も修行をしているの?」


 朝の鍛錬をしていると、道場の入口から姉さんが声をかけてきた。


「ああ、俺がこの道場の主だしな」


 木刀を素振りしながら、そう答える。


「はぁ、この島には私達しかいないのだから、そんなことしなくても」


 姉さんがため息をついて、道場に入ってきた。


「それでも、絶やすことはできないだろ? 後、寝てなくて大丈夫なのか?」


「いつから、そんな生意気になってしまったのかしら? 大丈夫よ、少し稽古をつけてあげる」


 その場で来ていた着物を脱いで、手に持った道着に着替える。


「流石にそれは……」


「さあ、遠慮なく技を使いなさい」


「久しぶりだけど、今日は俺が勝つよ」


 姉は俺より強い、油断なく木刀を振るう。


「フフ、剣技の才は認めるけどね。でも弱いわよ――」


 あっという間に、投げ飛ばされてしまった。


「私の勝ちね」


 首元に手を添えられ、そう言われてしまう。


「くそぉ」


「こら、汚い言葉を使わない」


 頭を小突かれる。


「痛い、何するんだよ」


「一護、死ぬのはもっと痛いのよ? だから姉さんとずっと居てよ?」


「もちろんだよ。だからこそ、魔物を倒しているんだ」


 姉さんに手を引いてもらい、立ち上がる。


「……」


「どうした? 姉さん」


 ジトっとした視線を向けられたので、そう聞く。


「本当に生意気ね、一護。私より、身長がでかくなるなんて」


「そんなこと、言われてもな……」


 姉さんは俺の胸ほどの身長しかない。


 いつの間にか小さくなっていた。いや、俺がデカくなっているのか。


「まあ、いいわ。朝食にしましょう」


 そう言われたので、居間にいどうする。


 昨日捕まえた、シシャモの塩焼きとそのあたりに生える、キノコの味噌汁を用意した。


「しかし姉さん、このままで生活はいいのか? こんな誰もいない島にいて」


「それは、どういう意味かしら」


 味噌汁を一口のみ、そう返してくる。


「もう、誰もいない島にいるよりも、他の島を探索してみないか?」


「そんなの嫌よ、それに私、体が弱いんだよ?」


「だからだよ、もしかしたら治せる医者がいるかもしれない」


 俺はそう言い、シシャモを一口で頬張った。


「そんなのどうでもいい。私は、一護といられたら……」


 姉さんは少し取り乱して、立ち上がる。


「姉さん……」


 俺の側に来て、顔を掴んできた。


「一護――好き……」


 そのまま、俺に口づけをしてくる。


「ね、姉さん……」


 俺の口の中に、舌が入ってきた――


「ハァ、うんっ。絶対に離れない。ずっとそばにいて……」


 姉さんは一度口を離して、そう言ってまた口を重ねてきた。


 そのまま、押し倒される。


「どこにもいかないよ、姉さん……」


 目を妖艶に輝かせて、俺を見つめてきた。


 俺はその頬に手を当て、思いを伝えるようにキスをする。


 食事なんて、どうでもよくなっていた。


 部屋を照らす、囲炉裏の前で俺達はお互いを求め合う。


 姉さんはすごく寂しがり屋だ。


 だけど、俺もそうなのかもしれない。


 俺より強く、だけど身体は小さくて独占欲の強い姉に、父を殺した罪悪感から、救われているのかもしれないと思った。


 何時も見守ってくれる。


 何時も叱ってくれる。


 そして、愛してくれる。


 そんな姉さんと一時の、快楽に溺れていく。


 俺だけは、何時までも姉さんの側にいてあげよう――


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


『ゼロ……起きるのじゃゼロ……』


 どこからか、声が聞こえてきた。


 懐かしいような気がする。


 でも俺はゼロじゃない、一護だ。


「う、うん~」


 俺のすぐそばで、声が聞こえて目を開ける。


 布団の中で、姉さんが寝ていた。


 その目元に、涙が付いている。


 俺はそれをそっと指で拭って、頭を撫でた。


 昨日も、一緒に寝たんだったな。


 布団をめくると、お互い、一糸まとわない姿だった。


「服、どこだ……」


「ふにゃ、どこいくの~」


 寝ぼけた顔で、起き上がった俺の腕を掴んでくる。


「服を着ようと思って、どうした?」


 俺の腕に抱きついてきた。


「幸せだなって……ゴホッ、ゴホ」


「姉さん!」


 姉さんはせき込み、吐血する。


「だ、大丈夫だから……ごめん、布団汚しちゃった」


「そんな事、どうだっていいよ。すぐ替えの布団用意するから……」


 俺は姉の手を振りほどいて、布団を取りに行く。


『ゼロ……』


 まただ、なんなんだよ。


 俺は頭を振って、急いで布団を用意し、姉さんのもとに行く。


「姉さん!」


「フフ、本当に私が好きなのね」


 部屋に戻ると、浴衣に着替えた姉さんが微笑んできた。


「当り前だろ? それより横になって」


 布団を敷き、立ち上がっている姉さんに言う。


「眠るまで、そばにいて?」


「ああ、いるよ――」


 俺は姉さんの頭を撫でる。


「生意気~。でも、嬉しい」


 幸せそうに微笑む。


 俺は姉さんが眠るまで、撫で続けた。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「はぁーーーー!」


「ギャゥゥゥゥ!」


 家の近くまで来た、魔物を斬り殺す。


 この島にはいつからか、魔物が巣くうようになってしまった。


 そのせいで島の人間は島を離れるか、食われるしかなくなっていた。


 俺は家を守るために、魔物を斬り続けているのだ。


『戻ってくるのじゃ、ゼロ』


 また声がする――


「何者だ? 新手の魔物か?」


 俺は叫ぶ。


 ガサガサ――


 草むらの中で物音がした。


「二の型、雷鳴迅雷らいめいじんらい


 その音の出所に、向かう。


「キャッ、どうしたの? 一護?」


 草むらの中で、姉さんが薬草を取っていた。


「何でここにいるんだよ? 寝てないと駄目だろう?」


「たまには体を、動かさないとね?」


 悪戯が見つかった、子供のようにばつの悪そうな顔をする。


「はぁ、家に戻ろう」


 俺は薬草の入ったザルを掴んで、空いた方の手で姉さんの手を掴む。


「うん、帰ろ」


 姉さんが微笑んできた。


『ゼロ……』


「……」


「どうしたの?」


 辺りを首を振ってみていると、不思議そうに聞いてくる。


「いや、声がしなかったか?」


「してないよ?」


 キョトンとした顔で、そう言われた。


「ま、いいか……」


 俺達は手をつないだまま、家に帰っていく。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ふぅー」


 湯船につかって、声をを漏らす。


『ゼロ……』


「プラム―― え? 今なんて……」


 自分の口から出た言葉に驚く。


 何だ? プラムってなんだ? 


「どうしたの一護?」


 髪を洗っていた、姉さんが聞いてきた。


「プラムって、知ってる?」


「う~ん、知らないかな。それよりこの後、道場に行くよ?」


「何かあるのか?」


 姉さんの言葉に、口をつい出た言葉の事が、どうでもよくなる。


「行ってからのお、た、の、し、み」


 髪に塗った椿の汁を、桶にくんだお湯で流して、指を振りながら楽しそうに言ってきた。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 道着に着替えてから木刀を持って、道場に行く。


 蝋燭の明かりに照らされた、道場の奥に姉さんは正座で待っていた。


「きたね」


 道着に着替えた、姉さんがニコニコと言う。


「ああ、こんな時間に修行でもするのか?」


「うん、最後の試験だよ」


 姉さんがその場で構える。


「最後ってどういう事だよ?」


「私の残り時間、もうなさそうなんだ……だから、一護。雷神の技の全てを体で、憶えて」


「そんな、そんなこと言うなよ」


 俺は戸惑う。


「受け取りなさい」


 姉さんが俺の刀を投げ渡してきた。


「どうして……」


 どうして、真剣を……


「そうだ、ずっと黙ってたけど――お父さん殺したの、私だよ」


 戸惑う俺に対して、姉さんはそんなおかしなことを言う。


「何、言ってんだよ! あの時、俺が刀を投げて、それで死んだんだぞ」


「それは、お父さんが弱ってたからだよ。私の攻撃でね」


「もう、めちゃくちゃだよ。もう、やめ――」


 言い切る前に、蹴り飛ばされてしまった。


「立ちなさい」


「く、本気なんだな」


 俺は立ち上がり、居合切りの構えを取る。


「それでいいのよ。この技は、奥義にして禁忌。死ぬ覚悟をしてから、使いなさい」


 そう言って、道着をはだけさせた。


 胸の部分に短刀が刺さっている。


「何してるんだよ?」


「これが零の型、雷神。身体を活性化させて、一時的に強くなる技。でも、使うと高確率で死ぬわ」


「どうして、そんな技を……」


「私はもう、立ってるのもやっとだった。この技を使えば、一護に技を教えてあげられるから」


 姉さんがいつもの優しい笑みを、向けてきた。


「何でそこまで……」


「私が死んだ後、一護は世界に羽ばたきなさい。これは、最後にプレゼントだよ」


 また、姉さんが突然目の前に現れて、俺を蹴り飛ばす。


「くそ、見えない――」


「目に頼りすぎたらダメ、全身の感覚を研ぎ澄ますの」


「次は、俺から仕掛ける。一の型、紫電一閃」


「三の型、雷鳴強防」


 姉さんの体に触れる寸前でいなされる。


「強い、もう一度。一の型、紫電一閃」


「何度やっても、一緒よ。一護はまだ、雷神を使えていないわ」


「どういう意味だよ」


「本当は、“人の過去に土足で踏み込むやつに”教えたくないけど、一護のために教えてあげる。

 一護の技は雷鳴迅雷の一時的なものを除いて、刀から雷を出しているだけ……その先の領域、体に雷を纏う事が、お父さんが使っていた本当の麒麟流よ」


 何を言っているんだ? 過去? それに――


「雷を纏ったら、死ぬだろ?」


「甘い、何のための修業だったの?」


 ビンタが、俺の頬にきまる。


「痛い、痛いよ。姉ちゃん」


 先ほどまでの真剣さが、嘘のようだ。


「麒麟の肉を食べているのよ? それに、三の型も使えるでしょ?」


「使えるけど、俺も反動あるぞ?」


「な、未完成な状態だったなんて……おねえちゃん、ちょっとショックだわ」


 遠慮なく、蹴りを入れられる。


「マズイ、防げない。雷を纏う……」


 三の型のイメージで雷を呼びつつ、それを体から呼び出すイメージに変えていく。


 姉さんはその様子を見ている。


「良いわよ、一護。その調子、体、刀すべてを武器にするの。私やお父さんにない、刀を合わせた一護の力を見せて」


 集中……


 もし旅をして誰かと出会うなら、俺より長く生きれる年下の小さな子がいいな。


 それも姉さんみたいな綺麗な銀髪で、少しワガママな子。


 雑念とともに――誰かの顔が浮かぶ。


 銀の髪に、毅然とした態度。だけどどこか懐かし――


 ビリビリと、体に電気が通る感覚が分かってきた。


「できた……」


「じゃあ、いくわよ一護。一の型、紫電一閃」


 先ほどまで、見えなかった動きが分かる。


 姉さんの筋肉の動きだ。


 まるで体が、透けているように見える。


 何処に力を入れているのか、どう動こうとしているのか、姉さんの体を走る電気信号が分かった。


「シッ」


「うん、良いよ。次はそれを攻撃に生かして」


 防いだ俺を、姉さんが褒めてくれる。


「一の型、紫電一閃」


 姉さんの僅かな隙を縫うように、技を出す。


「きゃっ、痛たたぁ。峰打ちかー」


 俺は一礼して、距離を取る。


「当り前だろ?」


「はぁ、ホントに甘いな~」


 くすくすと笑って、楽しそうだ。


『ゼロ……早く戻ってくるのじゃ――』


 またどこからか、声が聞こえてきた。


「これが一護の、好きな子なんだね」


 急に姉さんが天井を見ながら、そう声を漏らす。


「何を言ってるんだ? てか、声が聞こえるのか?」


「うん、ずっと知ってたよ。この子じゃないけど、一護を鍛えるよう頼まれたし」


「どういう事だよ――地震か?」


 俺が聞こうとした途端、道場が揺れる。


「もう、時間がないんだね。ねぇ、一護。忘れないで? 私は一護が好きだった。そして、一護のファーストキスはお姉ちゃんだったんだからね?」


 道場が崩れ始める。


 何故か体が動かない。


「俺もだよ? 姉ちゃんが好きだ」


 精一杯声を出す。


「ありがと。でも、その好きと私の好きは違う好きなんだよ?」


「どういう事だ?」


「ふふ、目を覚ませばわかるんじゃないかな? じゃあね、一護。強く生きて――」


 世界が崩れていく。


 眩しい光が俺を包んだ。



















ロリコンが危うくシスコンになるところでしたね(笑)


この過去話は描くか悩んだのですが、書かないと話が終わらないことになってしまうと思ったので、書きました。


ゼロの家族、そして日常。補足的なものは次話にいれさせていただきます!


文字数が凄いことになりますので、分けるのに苦戦。でも必要な場所は、書けた思います。


結局三部ほどの構成になってしまいましたが、どうか読んでもらえると嬉しいです!


次回はプラムが登場!!!そして、商人に化けていた奴は……な内容でお送りする予定です!


それでは最後になりましたが、最後までお読みいただきありがとうございます。


皆さんの感想、ブックマ、声援を活力に変えて。私は描き続けます。


次回もよろしくお願いしますです



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