移動――次なる目的地へ
良い所で終わりましたので、ここからですが――そろそろ可愛い成分の補給です(笑)
結論から言って、戦いにはならなかった。
気の狂っているだけで、パニールはただの人間だ。
俺の紫電一閃を受けて、腕が吹き飛び、血を垂れ流しながら叫び声をあげ、絶命した。
「お前は、罪を犯しすぎた。あの世で償うんだな……」
俺は刀を一振りし、刃についた血を飛ばしてから、鞘に納める。
「ゼロ、お疲れ様じゃ」
プラムが俺の側に来て、俺を見上げてそう声をかけてくれた。
「ああ、それより帝国の兵が来る前に撤収するぞ?」
俺はプラムの頭を撫でて、そう提案する。
「もう、子ども扱いするでない! どういう事じゃ?」
「いや、ここまで煙が出ていては、誰かか来るだろう?」
そう説明しながら、さらに頭を撫でる。
「なるほどなのじゃ。ガジガジ」
プラムは理解を示した後、俺の腕を噛んできた。
セルフ効果音付きで。
「すまない。もう頭は撫でないから、噛むのをやめてくれ」
「ほふとふかの?」
俺の腕に噛みついたまま、上目遣いでそう言ってきた。
(やばい、凄い可愛い)
「本当だ」
「なら、許してやるのじゃ」
噛むのをやめて、そう言ってくれる。
「じゃぁ、行こうか」
俺達は足早に森へと入っていった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「しかし、あの教会は何だったんだろうな?」
道中俺は歩きながら、声を落としてプラムに話しかける。
「うむ、もう少し情報を聞き出した方がよかったの」
早く殺しすぎたかもしれないな。
「でも、あそこまで弱いとはな……」
「それは相変わらず、ゼロが強すぎるのじゃ」
「プラムの友達を守れなくて、すまなかった」
俺は一度立ち止まり、頭を下げる。
「謝ることはないのじゃ。敵は取ってくれたしの」
その言葉に救われた気持ちになった。
「レンとは何を、話していたんだ?」
「ん? そうじゃの~大人になったら、お菓子屋さんになりたいと教えてくれたのじゃ?」
「それは素敵な夢だな……」
「うむ、――じゃな。この国にも、やはり希望を持つ者もおるのじゃ」
プラムは涙をこらえているのか、少し声がたどたどしくなる。
「そうだな」
俺は頭を撫でたくなったのを堪え、そう言って一歩先を歩く。
これで少しは泣きやすいだろう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
煙が見えないくらいまで離れて、道のわきに少し開けた場所を見つけ、そこで休むことにした。
「ふぅ。ここまでくれば少しは、安心かの」
プラムが地面に腰を下ろし、そう声を漏らす。
「警戒は必要だが、ひとまず休もうか」
俺もその隣に、腰を下ろした。
「それでは、計画を見直そうかの?」
プラムの言葉に、地図を取り出して広げる。
「妾達が、歩いていたのはこの道じゃよな?」
「ああ、この辺りに教会があったな」
指をさしながら、道をたどっていく。
「道がそれてしまって、今の場所が分からないのじゃ」
プラムはむむっと唸り、腕を組む。
(可愛い、可愛いぞ。プラム)
「どうしたのじゃ、ゼロ? 黙りこくって」
そう言って小首をかしげる姿に――
「もう、我慢できない」
俺は手を伸ばし、プラムを抱き寄せ、そのまま横向きに倒す。
「な、何をするのじゃ!」
唐突に膝枕をされて、プラムが声を上げた。
「何って、可愛いから撫でる」
そう宣言して、頭を撫でる。
「ひゃぁ! や、やめるのじゃ。そこは――お腹なのじゃ、ひゃぃ」
プラムがようやく笑ってくれた。
教会での事は辛いだろうが、少しでも笑っていて欲しい。
「それ、我慢した分、撫でさせてもらうぞ!」
「調子に乗るでないわ! たわけ者め!」
プラムは体制を立て直して、俺の手にかみついてきた。
「痛い、痛い。悪かった」
俺はあまりの痛みに、立ち上がって、プラムごと腕を振る。
スポン――
プラムが吹き飛ばされ、上空へと飛ぶ。
「おぉぉ!?」
「危ない!」
俺は慌てて、プラムを抱きとめる。
「「あはははは」」
お互いに顔を見合わせて、笑い声をあげてしまう。
予想外だったが、プラムが心から笑ってくれて良かった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「出発なのじゃ!」
あれから、近くの木の上に上り、しっかり眠って、一夜を明かした。
木から降りると、プラムは元気よくそう声を出し、歩き出す。
「どこに向かうんだ?」
「道が分からぬ以上、来てない方向に歩くのじゃ!」
確かにその通りだな。幸い、街道は一本道だ。
「行くか」
「うむ」
朝の爽やかな空気と小鳥のさえずりを聴きながら、道を進んでいく。
砂漠地帯と違い、木々のおかげで、暑さはだいぶましに感じる。
「しかし、何もないの」
「そうだな……」
特に話題もないので、黙ってしまう。
それでも、嫌な感じはない。寧ろ心地が良かった。
「そうなのじゃ!?」
十分ほどが過ぎたところで、プラムが声を上げる。
「どうしたんだ?」
「いや、忘れていたのじゃ。コトハから、これをもらったのじゃ。地図を出してほしいのじゃ」
そう言って立ち止まり、ローブの中から、手のひらサイズの円盤を取り出した。
「それは?」
「羅針盤というそうじゃ――こうやって、地図の上に置けば……」
俺が渡した地図を地面に引き、その円盤をその上に置く。
円盤には時計のようなメモリがあり、時計なら十二時を示すところが、赤。三時の所が、緑。六時の所が、青。九時にあたる所が、黄色になっていて、針が真ん中で回っている。
「どうなるんだ?」
「これは居場所を知る道具らしくての、天都の場祖から見て、赤い方向に帝都があったのじゃ」
「つまり、この場所から帝都の方角が分かると?」
「そうじゃ」
プラムは天都のマークの上に置いた、羅針盤を見つめる。
「どうなんだ?」
俺は使ったことがないので、プラムに聞く。
「この場所からだと、緑の方になるのじゃ」
「つまり?」
「ここから一番近い場所は、クルフの町じゃな? そこを経由して、方向を修正するのじゃ」
なるほど……街道以外は、危険を伴うので、そのほうが良いだろうな。
「良し分かった。では次の町は、クルフだな」
「うむ、そういう事になるのじゃ!」
プラムは地図をたたみ、俺に返してくれる。
その後、大切そうに羅針盤を、自分のローブにしまう。
「コトハにはまた、感謝を伝えに行かないとな」
「うむ。じゃが、浮気はいかんぞ?」
プラムが、俺を睨んでくる。
「浮気って、俺は、プラム以外の刀にはならないぞ?」
「ふん、本当かの?」
どうやら、今日は少し機嫌が悪いようだ。
「本当だ。どうすれば信じてくれる?」
「なら、て、手をつなぐのじゃ!」
プラムは少し顔を赤らめて、手を差し出してきた。
「お安い御用だよ」
その手を握る。
「うむ、行こうかの」
「ああ」
機嫌を直してくれたのか、プラムは俺に微笑んで歩き出す。
「どうしたんだ? コトハのことになると、機嫌が悪くなるみたいだけど?」
俺は気になっていたので、聞くことにした。
「それは……ひみつなのじゃ――」
顔を背けられる。
頬が、赤らんで見えた。
(よく分からんな――)
また、会話のない時間が続く。
でもやっぱり、その時間も心地よくて、俺は好きだった。
どうでしたか皆さん? サクサクしてますか? やりすぎですか? 少し不安になりながらの三部構成になっています。感想くれると嬉しいな(笑)
今回は、プラムの可愛さを改めて書きましたです。真面目が続きましたので、すみませんが少しくだけさしてもらいました。 ゼロは意外と鈍感なのかも? では、少し小説の雑談を――羅針盤を出したのは、このままだと道に迷いまくるので、それを回避するためです。あの二人、野生の勘で、進むタイプなので(笑)
この後は、ついにあの五英が――こうご期待なのです!(自分へのプレッシャー)
そろそろネタないんじゃないの? って思った方、安心してくださいネタはあります。
このまま、ダレることなく進んでいけるように精進して行きますので、よろしくお願いします。
それではまた、次回もお会いしましょうです




