教会の真実
前回の続きです。良ければ、一話前からお読みくださいです。
レンがプラムを連れて行った先は、隣の建物の礼拝場だった。
臭いの原因が近いのか、片手で口と鼻を押さえないと、耐えれないぐらいの臭さになってきている。俺は長椅子の後ろに隠れながら、二人の様子を窺う。
ただ二人は不思議な事に、この臭いに嫌悪感を示していない。
「レン。ここに、何をしに来たのじゃ?」
「……」
プラムはレンに語りかけるが、レンはいまだに正気を失っているようだ。
二人の前には、俺よりでかい手を組む女性の像があり、その像と向かい合うようにして立った。
(何をしているんだ?)
様子を窺っていると、岩がこすれるような音が響いて、女性像が横に移動していく。
「な、なんじゃ? この階段から、降りるのかの?」
「……」
俺の場所からは見えないが、地下に行く階段があるようだ。
二人の姿が見えなくなっていく。
俺もその後に続く。
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(早く出たいな……)
臭いがひどすぎる。
石造りの通路のようなところに出てきたが、ここが臭いの元凶のようだ。
辺りには、腐敗集が漂い。壁にはツタが幾重にも張り巡らされ、奥に置かれたランタンの明かりが怪しく輝いて見える。
(人が二人、通れるかくらいの幅だな)
レンはプラムの腕を掴んだまま、ランタンに近づいていく。
「連れてきました。シスター」
ここで初めて、レンはその口を開いた。
「ありがとう。レン。ご褒美に、主様の寵愛を受けさせてあげる」
パニールがそう言うと、ツタが後ろから伸びてきて、レンに絡み付いていく。
「な、レンに、何をするのじゃ!」
「フフ、と~ても、気持ちの良いことよ~」
「やむを得ないか。一の型、雷光一閃」
俺は駆け出して、そのツタを斬り刻む。
「ゼロ! ナイスなのじゃ」
「な、貴様。主様の体を傷つけたわね!!」
パニールはよく見ると、顔を出していた。
その顔を醜くゆがめ、俺を睨みつける。
「プラムに危害を及ぼすなら、斬るぞ?」
俺は刀を構えて、パニールを睨み返す。
あまりの臭さに、鼻が利かなくなってきていた。
「危害? 貴男は何を言っているのかしら? これはとても気持ちのいいことよ~」
パニールは服の上から、恥部に手を当てて、興奮したような声を出す。
「どうなっているんだ? プラム、その子を連れて下がっていろ」
「うむ。ゼロ、気をつけるのじゃ! こやつ、得体が知れぬ……」
その言葉から、このツタを操る魔獣を知らないように感じた。
「フフ、フフフ。何で逃げるのかしら? こんなに気持ちいいのに。こんなに愛してくれるのにぃぃぃぃぃ!」
最後に甲高い声を出して、パニールは地面へと倒れてしまった。
白目をむいているのに、何故か満足そうな顔だ。
「気持ち悪い――ぬ、あそこか! 四の型、雷光一閃」
パニールの服の中に入り込んでいた、ツタを目でたどり狙いを定め技を放つ。
「…………」
狙いは外してないはずだが、反応がない。
俺は警戒しつつ、床に置かれたランタンを片手に奥に進む。
奥には玉座のような椅子が、一つ置かれていた。その玉座は背面からツタを伸ばし、そのツタと同じものの破片が地面に落ちている。
ツタで攻撃を、防がれたようだ。
「この玉座、生きているのか?」
俺の声に反応したのか、無数にツタを伸ばしてくる。
それをすべて、斬り落とす。
「どうなっているんだ?」
辺りをランタンで照らし、ツタを斬りながら、辺りを確認していく。
周りには子供のものと思える頭蓋骨や、色々な形の骨が落ちている。
「こいつは人を食らうのか? だがどうやって――」
どういう原理で動くのかさえ分からないだけでなく、どうやって捕食したのかも分からない。
俺さらに椅子に近づいていく。
距離にして、玉座までに十歩ほどまで近づいて、辺りを確認する。
玉座の後ろは壁になっていて、その横にまゆのような形のツタが二つほどあった。
(ツタで人をくるんで、栄養にしているのか?)
俺はこれ以上の観察は、不要と思い、鞘に刀を収め直し構える。
「一の型、紫電一閃」
玉座はツタを固めて、防ごうとするがそれでは脆い。
俺の刀が玉座にあたり、玉座を二つに割る。
玉座はいっそ臭い臭いをを放つ、その臭いはマヒした俺の鼻でもわかるくらいだ。
紫色の粘液を流し、ツタが動かなくなる。
「う、終わったか――」
「お、終わったかの?」
後ろからプラムが小走りでやってきて、声をかけてきた。
「ああ、あの子はどうした?」
「レンか? レンなら、上の長椅子に寝かせてきたのじゃ」
その言葉に安心し、プラムに聞きたいことを聞くことにした。
「プラムはこの臭いを、臭いと感じないのか?」
「? 甘い匂いの様じゃが……ゼロには臭いのかの?」
不思議そうな顔でそう言ってきた。
「となると、女性にそう感じさせているのかもしれないな」
「なるほどの。弱い者をおびき寄せる罠、という事じゃな」
それ以外にも目的がありそうだが……
「ん? 風が流れているな」
何故か玉座の後ろから、風が吹いてきた。
「壁の様じゃがの?」
プラムが不思議そうに壁に近寄る。
「少し調べるか……」
早く出ていきたかったが、俺も気になるので壁を探ることにした。
「む、ゼロ。ここ、隙間があるのじゃ?」
プラムの側に行き、その隙間をランタンで照らす。
「レバーがあるな」
「倒してみるかの?」
プラムの言葉に、うなずいて返事をする。
ガゴッ! ズズ、ズズズ。
壁が左にずれていく。
壁が開き、隠し部屋が出現する。
「何だこれは!?」
「む、酷いのじゃ――」
隠されていた三畳ほどの部屋の壁には、たくさんの子供のミイラがツタで両手を縛られるように吊るされていた。
そのミイラはどれも女の子の様で、恥部に太いツタが刺さり、お腹が少し膨れている。
「酷いな――」
下ろしてあげようと、近づいた瞬間――
「キシァーーーー!」
突如、女の子の腹が裂け。芋虫のようなものが奇声を上げて、飛びついてきた。
「な、この」
間一髪、顔に飛びついてきたところを斬り落とす。
「大丈夫か? ゼロ」
「ああ。しかしこれは……」
女の子の頭くらいのサイズの、芋虫のような魔獣を見ながらそう声を出す。
「先ほどのツタが、生ませておるようじゃの。実に酷いのじゃ」
「なるほど、ここは子供を産ませる部屋か……となると他の子供にも……」
今、飛びついてきたやつ以外にも、いるとなるとあと五体はいる計算になる。
「ゼロ、屠れ! この子たちに安らかな眠りを」
「ああ。四の型、雷光一閃」
近づくと飛び出るのであれば、離れて斬るのみ。
幸いにも壁に横一列に並んでいるので、斬りやすい。
ボトボトっと芋虫が落ちて死んでいく。
これで今度こそ、彼女たちが安らかに眠れることを願う。
「うむ、よくやったのじゃ」
プラムが腕を組んで、満足そうにうなずく。
「戻ろう、プラム」
俺達は出口に向かって、歩き出した。
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「あれ? レンがいないのじゃ?」
礼拝堂に戻ると、プラムがそう声を出した。
不思議そうに辺りをきょろきょろと顔を動かし確認していく。
凄く可愛らしくて、癒される。
「どこに寝かしたんだ?」
「すぐそこなのじゃ、流石に重くてしんどかったのでの」
同じくらいの身長だったしな、ここまで運んだのも凄いものだな。
「起きて、自分で戻ったのか?」
「そうなのかの? む? 何か、焦げ臭くないかの?」
「そうか? すまない。まだ、鼻が使えないようだ。」
先ほどまでの臭さに、鼻がいまだに使えない。
「とりあえず外に出てみるのじゃ!」
プラウはそう言って、礼拝堂の出口に駆けて行く。
俺もその後に続く。
「! プラムこれは……」
「何てことじゃ……生きておる者もいるかもしれん! 助けに行くのじゃ」
外に出ると、子供たちが寝ていた場所が燃えていた。
プラムが言う、焦げ臭いにおいの正体はこれか――
「フフ、死んで、死んで、死になさい。あなた達に神の救いを」
建物の側に行くと、子供の首と鉈を手に持ったパニールがいた。
「お主、何をやっているのじゃ!?」
「何~って。救済ですよ? シスターですから」
俺はその言葉に怒りを覚える。
「救い? これの何処が救いなんだ!」
「救いですよ? だって、何の役にも立たないこの子たちが、神の子を産む栄養になるのですから。その用が済んだら生きる価値がないじゃないですか?」
パニールは、笑いをこらえているような声でそう言ってきた。
「なんて、自分勝手な奴なのじゃ。ゼロ――」
「分かっている。こいつを、パニールを屠る」
俺は刀の柄を握り、構える。
「貴方にも神の救いを、さしあげます~」
パニールが俺に、笑みを浮かべ鉈を向けてきた。
すみません。三部構成になってしまいました。
描写にこだわっていたら、このような形に……。
気に入ってもらえたら嬉しですが、長くなってしまいすみませんでした。
この後、一時間ほどあけて、投稿する予定ですので、良ければお願いしますです。
雑だは次の話で――書かせてもらいます。では、後ほど……




