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天都の守護者②

天都へと戻った、ゼロとプラムはアクトの過去を知る――

 外に出ると、砂煙がひどく視界が悪かった。


「どうなっているんだこれ……」


「昨日はいなかったですが、サンドワームがいるみたいですね」


 俺の声にコトハが答えてくれる。


「こんなところにもいるんじゃな」


「何を言っているんですか? この砂漠を作り、自然を壊す害獣ですよ?」


 コトハはプラムに、呆れた声で返事を返す。


「そうなのか――来るぞ」


 気配が近づいてきたので、言いかけた言葉を飲み込み二人に声をかける。


「ぶしゅぅぅぅぅぅぅぅぅ」


 三メートルはあろうかという巨体が、雄叫びを上げ突撃してきた。


「ゼロ、倒すのじゃ」


「ああ。一の型、紫電一閃」


 その巨体をものともせず刀で斬りつけ、俺を中心に二つに割けて倒れる。


「ゼロ、貴男は一体何者なんですか?」


 呆れと驚愕が入り混じった声をコトハがだす。


「俺は刀だ。プラムの望みを叶えるな」


「そうじゃ。ゼロがいれば、魔獣だろうが五英だろうが敵じゃないのじゃ」


 俺の言葉に満足そうにうなずき、腕を組んでコトハにそう自慢げに語る。


「規格外ですね。まあ、話し合いは天都でしましょう」


 サンドワームを倒したおかげか、砂煙が消え視界は良好になった。


 行きと同じ速度で移動を開始したコトハを、俺はプラムをおんぶして追いかけていく。



 ・・・・・・・・・・・・


「む、帰ってきたか!」


 天都が見えてくると少し離れた入口から、アクトが俺たちに気が付いて声をかけてきた。


「遅くなり申し訳ございません。今より報告いたします」


 アクトの前に来たところでコトハが片膝をつき、頭を下げる。


「コトハ、傷だらけではないか? 奥で着替えてこい」


 コトハの服を見て、アクトはそう指示を出す。


「御意」


「ゼロ、コトハを連れて帰ってくれて、ありがとう。物見台の上に移動しよう」


 コトハが立ち去り姿が見えなくなったところで、アクトはそう提案して歩いて行く。


 俺達はその後ろに何も言わず、ついて行った。


 物見台の中は下から見るよりも広く、俺達三人が立ってもまだあまりある広さだった。


 真ん中に地図が置かれたテーブルと端に木箱が少し置いてある。


「で、ここにわざわざ上がった理由は何じゃ?」


 プラムがアクトを睨みながら聞く。


「そう警戒するな。ほれ、青臭いが貴重な水分だ」


 アクトは笑いかけて、俺たちに緑色の瓢箪のような形の植物を箱から取り出し手渡してきた。


「これは?」


「この辺り特有の植物で、中に水が詰まっているんだ」


 アクトはそう説明して、懐から出したナイフで切り込みを入れ飲んで見せてくれる。


「むむ、ゼロ切ってくれ」


 俺はナイフがないため、アクトに借りて自分の分とプラムの分を切った。


「遅れてすまない」


 切り終えたところでコトハもやってきて、四人で乾杯をする。


 それから調査の報告をアクトにした。


「なるほどな、里や村でなく実験場だったか」


「はい。仲間は姿が見えなかったので、全滅かと」


 アクトの横に立つコトハが、悔しそうに言う。


「そうか……。帝都は何がしたいんだ? ますます分からなくなってきたな」


 アクトが入口のあたりを見張りながら怒りの混じったような声を出す。


「うぬらに質問があるのじゃが、いいかの?」


 アクトに対し、いまだに警戒している様子でプラムが声を出す。


「なんだ? 嬢ちゃん? いや、プラムさんと呼ぶべきだな。答えれることならなんでも答えるぞ」


「うむ。うぬら何物じゃ? ここに来た時から違和感があったのじゃ!」


「というと?」


「帝都の侵略を受けず、ここまでの規模の発展とこの民の数。その他にもあるのじゃが……とりあえずじゃ、その事に答えるのじゃ」


 プラムは乱暴にテーブルに緑の植物を置く。


 底が平らなので、倒れることはなかった。


「プラムさん。それは――」


 コトハが何か言いたそうだったが、アクトがコトハの顔の前に手を出して制して、俺たちの方に振り向く。


「かまわん、コトハ。ここまで世話になったのだ。まず、仲間の仇を取ってくれてありがとう――」


 頭を下げ、言葉を続ける。


「俺たちは帝都に滅ぼされた篝の生き残りだ。そして、そこの王子だったのが俺だ」


 その言葉にプラムは、体を震わせた。


「それは本当か……嘘じゃないのじゃな?」


「ああ、俺の護衛と少しの民。そして商人で、この町を作ってきた。滅ぼされてからはただただ、生きるために必死でここまで来た。襲われてないのは、帝都から離れているのと運だな。近くの森に最近五英が来ているとの報告があったので、そろそろ潮時かもしれないが」


 アクトはそう言葉にして、天都の入り口の方を見つめる。


「それなら心配ないのじゃ、ゼロが斬ったのじゃ! それと、アクト、お主はもう気付いているのではないかの?」


 プラムが先ほどと違って、明るくアクトに聞く。


「本当なのか? コトハ、ゼロの戦闘力をどう感じた」


 プラムには答えず、アクトはコトハにそうたずねる。


「そうですね、アクト様の師匠でもあるチェダー様と引けを取らないかと」


「よもやよもや、コトハが言うなら真実だな。そうだな、プラムさん。人ではないな」


 アクトはマイペースにコトハと話してから、プラムの質問に答えた。


「やはりそうか、流石。篝の王子じゃな」


 アクトとプラムの会話に俺とコトハは唖然となる。


「この目のことを知っていて、知能もある。噂の魔王の娘なのか?」


「如何にも、魔王の娘じゃ」


「なあ、説明してもらえるか?」


 ようやくそう聞くことができた。


「そうだ! そう言えば、コトハは言う前に飛び出していってたな。プラムは魔族だぞ!」


 またマイペースに俺の言葉を無視して、コトハの肩を叩いて大きな声をアクトが出す。


「向こうで聞いて驚きましたよ! もっと早く言ってください」


 少し怒ったような声だ。


「悪い悪い。ゼロ、篝の王族は生まれつきその者の気の流れを感じれるのだ。人と魔物は気が違うし、その者の強さもある程度見れば分かるな」


「そうなのか。さっき言っていた噂ってなんだ?」


「ああ、父上が魔王に娘がいて、同盟の暁に婚約――危ないな、何をするんだ?」


 俺は無意識にアクトに刀を振るっていた。


「すまない。ついな」


「落ち着くのじゃ! 妾はそんな話は聞いておらんのじゃ!」


 俺の腕を掴んでプラムがなだめてくる。


「そりゃそうだ、その前に滅んだからな」


 笑いながら、手に持った植物を握りつぶしてしまう。


「落ち着いてください。アクト様」


「なあ、コトハよ先ほどから何で、様をつけておるのじゃ? 最初は言ってなかったじゃろう?」


 プラムもマイペースにそこを気にしていた。


「客人の前ですからね、これでもこの町のボスですし」


 やれやれといった感で、アクトに手を拭くように布を渡してそう教えてくれる。


「さて、そろそろ。私の方の疑問にお答えしてもらえますか?」


 先ほどより真剣な声をだし、俺の方を見てきた。


「うん? ああ、答えれることならな」


「うむ、質問を許そう」


 何故かプラムが偉そうにまた腕を組んで、俺の声にかぶせてきた。


「あなた達はどこから来たのですか? 帝都を目指しているようですが」


「その事か、少し地図を見てくれ――この辺りの砂漠を歩いて、そこから荷馬車で移動しこの町に行ったんだ」


 地図を指さしながら説明していく。


「なるほど……カースマルツゥの領土に。奴はどうでしたか?」


「知り合いなのか? やり方がひどかったので殺したが……」


 コトハの顔色を窺う。


「いえ、帝都の犬という噂なので調べていただけです。それなら、脅威が減りましたねありがとうございます」


「いや、それならよかった。その後この塔に寄って、道に迷ってここに来たんだ」


「凄い迷いかたですね。失礼――ここですね、今いる場所は」


 俺の横に来て、説明してくれる。


「なるほど、帝都の周りは町があるんだな。俺の地図と違うな」


 ポケットから地図を取り出して、見比べていく。


「その地図は帝都製ですね。革命を防ぐために少しのデーターしか書いてないので」


「帝都もやりおるな、その地図を写させてくれるかの?」


 プラムが木箱に乗って俺たちの間に割って入ってきた。


 プラムはコトハの許可が下りるとペンを借りて、俺が出した地図に器用に書き足していく。


「凄いな、プラム」


「これぐらい普通じゃ」


 声をはずまして、書いていく。


「さて、コトハ。ゼロとプラム様に宿の手配と必要なものを集めてくれるか?」


 俺が感心してプラムを見ていると、アクトがそう声を出す。


「御意。ゼロ、必要なものはありますか?」


「そうだな……ナイフとゴリンを頼んでいいか?」


「分かりました。それでは失礼します」


 コトハはそう言い残し、物見台から飛び降りていってしまった。


「よし、終わったのじゃ。そう言えば、アクトは魔族についてどう思っておるのじゃ? この町に来てから、お主は妾の事を見張っておったじゃろ?」


 プラムが台から飛び降りて、アクトにそう質問する。


 最初に町を歩いている時に感じた殺気は、アクトだったのか。


「嫌、失礼した。魔族と人のコンビだったのでな、少し警戒させてもらっていた」


 アクトはそう謝罪してくれた。


「うむ、許そう。で、これからは魔族をどうしていくのじゃ?」


「敵対する者や、サンドワームの様に害をなすものは斬る。それもいけない事ですか?」


「いや、構わん。妾もその考えに賛成じゃ」


 二人はそう言って握手を交わす。


 俺はそれをモヤモヤしながら見ていた。














うん、ちょっと予定より長くなってしまいました。


次の話で天都編は終了予定です。内容的には宿で一泊、アクトと会話。


さてさて、雑談。 最近この作品の感想でプラムを好きなのって、ペドじゃないかという声がありました。


大丈夫です、ロリです。たぶんきっと。定義があいまいなのですが、少なくともそんな年でもないのでロリで通していこうと思います。タイトルがペド勇者とか少し引きますしね(笑)


嬉しいことにここまで書いた段階で、ブックマークが二桁になっていることを知りました。


皆さんの期待が嬉しいです。少しでもよくなるように努力していきます。


そろそろ折り返し地点なのですが、残る五英は後二人どんな展開になるかこうご期待(自分にプレッシャーををかける)


最後までお読みいただきありがとうございました。次回も読でいただけると嬉しいです!

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