表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/35

ゼロの思い、優しい願い。

お待たせしました。 研究所編はこれにて終わります。


今回は少しばかりの、休息回です

 どれくらい寝ていたのだろう? 


 少しずつ意識が覚醒していく。


 どこか黴臭い臭いと薬品の匂い。


 それとは違う、顔の側から漂うミルクのような香りと柔らかい感触。


「……プラム?……」


「お、目が覚めたのじゃな? 良かったのじゃ」


 何処か安堵し、嬉しそうな声が頭の上から聞こえる。


 また膝枕をしてくれていたようだ。


「そうだ……敵は? コトハは無事か?」


「ええ、無事です。その、助かりました。ありがとうございます」


 姿は見えないが少し離れた場所から、返事が返ってきた。


「そうかよかった」


「ふん、もう膝枕はいらんのじゃな!」


「痛っ!」


 何故かプラムが拗ねた声を出して、立ち上がってしまい頭を床にぶつけてしまう。


「ふんだ! ゼロなんか、コトハと仲良くしてればいいのじゃ!」


 頬を膨らませて、部屋の端の方に行ってしまった。


「何だよそれ? ところでここは研究室の方か?」


 起き上がって辺りを見ると、最初に通った薬品の置かれた部屋に見えたのでそう聞く。


「ええ、あの部屋は毒がある可能性があったのでこちらに移動しました」


 俺の方にコトハが歩いてきて、説明してくれる。


 破れた服の個所に布を巻いていた。


「毒? そうか俺はそれで意識が……」


「はい。ただ、疑問なのですがあなたと一緒にいるプラムさんって、何者なんですか?」


「どういう事だ?」


 俺は少し警戒しながら聞き返す。


「貴男とキスしただけで、貴男を治したので」


 何、憶えてない。なんてことだ……なんてことだ……、思い出せ、思い出せ。


 確かに何か柔らかい感触が――


「魔王ぱーんち!」


 もう少しで思い出せそうな時に、プラムがいつの間にかそばに来ていて、俺の脇腹にパンチを入れた。


「痛っ! プラム地味に痛いぞ?」


 おかげで思い出せなかった。


「ふん、思い出さなくていいのじゃ! それがお互いのためじゃ!」


 顔を赤らめて、早口でまくし立ててくる。


「分かった。もう考えない」


「ホントにホントじゃな? 嘘はいかんぞ?」


「ああ、俺はプラムに嘘はつかない」


 俺はプラムの目を見てそう告げた。


「なら良いのじゃ!」


 プラムは機嫌を直したのか、満面の笑みを向けてくれる。


「ゴホン! そろそろ話を戻していいですか?」


 コトハがわざっとらしい咳ばらいをして、ジト―とした目を向けてきた。


「ああ、何の話だったか?」


「その子です、プラムさんて何者なんですか? こんな地下でもフードをかぶって変ですよね?」


 その言葉に何も言えなくなる。


 ここで正体を言って争いになるのは避けたいし、何より戦う理由にしたくない。


「妾か? まあ、これ以上隠している方がややこしくなってしまうかの――」


 プラムはそう言いフードを取って、コトハの前に行く。


 制止しようとしたが、手をかざして止められてしまう。


「妾の名は、ダリューングリ・プラム。第五十八代目魔王にして、この世に変革をもたらすものじゃ!」


 プラムはコトハに手を伸ばし、握手を求める。


「そんな……でも、確かに人でないのは確かなようですね? 私はコトハ。天都の警備主任補佐をまかされています」


 コトハも自己紹介をし、プラムの手を取り握手を交わしてくれた。


「コトハは、俺達に敵意を向けないんだな?」


「ええ、共に戦いましたし。何より、その辺の魔物とは違うようですので」


 コトハはこの時初めて、俺たちの前で笑顔を見せてくれた。


 こういう表情もするんだなと、嬉しくなる。


「魔王キック」


「痛っ。プラム蹴りはやめてくれ」


 握手をしたまま、すぐ横に立つ俺の脇腹にけりを入れてきた。


 その様子にコトハは「フフ」と小さく笑い声を漏らしたのだった。


 ・・・・・・・・・・・・


「今からどうするんだ?」


 体が落ち着いてきたころ、俺はそう話を切り出した。


「外は日が暮れているでしょうから、今日はここで休みましょう」


 コトハの提案にうなずき、各々使えそうなものを物色する。


「これは寝るときに使えそうなのじゃ」


 プラムが大きな布を二枚見つけ。


「干し肉がありました」


 コトハが食料を見つけてくれた。


 ささやかな束の間の休息。


 コトハと俺達はその間に、確かに少し距離が縮まったのだった。


「ゼロ、妾の事を抱いて眠るのじゃ!」


 食事を終えて、眠りにつくときにプラムがそう言ってくる。


「どうしたんだ? もちろんいいが」


 俺からしたらご褒美みたいなことなのですぐにうなずき返す。


「浮気防止じゃ!」


 コトハの方を見ながらそう説明してくれる。


「「?」」


 俺とコトハは訳も分からず疑問符を浮かべ、お互いに首をかしげてしまう。


「では、おやすみなさい」


 キョトンとした表情のままコトハはそう言って、俺たちから距離を取って布に包まる。


「じゃぁ、俺たちも寝るか」


「うむ」


 プラムを足の間に入れて、壁にもたれて眠りにつく。


「プラムは、いい匂いだな」


「そうなのか?」


「ミルクみたいな、甘い匂いがするんだ」


 俺はプラムの髪、鼻を埋める。


「これ、変なことをするんじゃない! くすぐったいのじゃ」


 もぞもぞと動くプラムをギュッと抱きしめて、動きを封じた。


「こうやって寝たいって言ってくれて、嬉しかった」


 俺は素直にそう言葉にする。


「ふん、浮気防止措置じゃ」


 また先ほどの言葉をプラムは言う。


「それどういう意味だ?」


「ゼロは、妾の刀じゃ。コトハにはやらん」


 それでようやく、言葉の意味を理解した。


「安心しろ、俺は死ぬまでお前の刀だ。他の場所になんていかない」


 俺はゆっくりと、子供をあやすように言う。


「そうか……それは……よか……」


 安心したのか、そのままプラムは寝息をたて始めた。


 どうかこの先も、この小さな魔王が幸せでありますようにと願って――


 俺は優しくプラムの頭を撫でて、眠りについたのだった。







皆さんありがとうございます。初めて、1000pv超えました。


ホントに感謝感激なのです。


ここまでくれば、ゼロを一つ足したいなって(笑) 欲張ってしまいます。


勿論読まれないからって、作品を辞めるなんてことはありません。


私はこの作品が好きで、知っている方もいるかもですがもとは短編だったこの作品をここまで書き続けています。

ラストも決まっていますので、安心してお読みください!

これからもどうか、この作品を好きでいてくれたら嬉しです!


感想とかくれたらもっとうれしいです(笑)


次回は天都は編になる予定です。


次回は何にも知らないゼロ、がこの世界について色々コトハに教えてもらいます。要は説明回です笑、その他イチャイチャを書きたいのです。


では、最後に。ここまでお読みいただきありがとうございました。私は皆さんのおかげで生きてるところがでかい狸なので、ここまで人気が出て踊っています。次回も是非お読みいただけたらと――では、次回にまたお会いしましょう

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ