天都の守護者①
森を抜けた先に広がる砂地。
そこをさまよっていると、町のようなものを見つけて……
森を無事に抜けた俺たちは、また砂漠のような砂地に出た。
風に乗った砂ぼこりと太陽光の暑さに耐えながら、ひたすらに歩みを進める。
「おかしいのじゃ。帝国内にある、帝都の城がそろそろ見えてもおかしくないはずなのじゃ」
少し前を歩くプラムが地図を見ながらぼやく。
「少し見せてくれないか?」
俺は横に並び地図を渡してもらう。
「……な、もう見えてもいいころじゃろ?」
「プラムこれ、本当に向きがあっているのか?」
俺は地図を見ながら疑問がわいていた。そもそも、自分たちがどっちに歩いているのかが分からないはずだ。
「うむ、妾の感覚は正しいはずじゃ」
感覚かー。でも、その自信に満ちた顔も可愛いな。
「なあ、あれ。家かな?」
顔を前に向けたら、家らしきものが見えたので声をかける。
「うん? おぉ、テントかの? 集落の様じゃな」
俺の指さす方を、目を凝らしてみてそう返事をくれた。
俺達はその家が見える方に向けて歩みを早める。
・・・・・・・・・・・・
「うん? 旅の者か?」
木の柵で囲まれていたので入口になっているところに行くと、入口に近くの椅子に座っていた剣を腰に下げた若い男が話しかけてきた。
「そうだ。少し物資の調達と宿を貸してもらいたい」
「…………」
男は俺とプラムをん踏みするように全身を見ていく。
「通るぞ」
「少し待て。帝都の人間ではないのか?」
横を通ろうとしたら鞘に入った剣を俺の顔の前に突き出して、止められる。
「違う。証明はどうすればいい?」
俺は冷静にそう聞く。
「そうだな……帝都はどうだ?」
「クソじゃ」
プラムが俺より先に答える。
もしこれでこの場所が帝都の見方なら、俺達はこの集落に入れないどころか危険にさらされてしまう。
「フハハハハ、お嬢ちゃん。胆が据わってんな。いいぜ、入りな。悪かったな、俺はアクト。この天都の警備主任だ」
「俺の名は、ゼロ、この子はプラムだ」
「そうか、覚えておこう」
俺はアクトに自己紹介をして、握手をかわす。
どうやら無事に集落に入れそうだ。
「行くぞ、ゼロ」
プラムが俺の横を通り過ぎながら、声をかけてきた。
「ああ」
俺達は、天都に入っていく。
天都の中は、仮設のテントのような家や屋台なんかが、並んでいてにぎやかな感じだ。
「お、兄ちゃん。この辺りでは珍しい、ゴリン置いてるよ? どう」
屋台から、そう声をかけられて視線を向けると、いかついおじさんが赤い何かを手に持っていた。
「ゼロ、少し気になるからよるのじゃ?」
立ち止まらずに去ろうとしたがプラムが興味を持ったらしく、俺の腕を引っ張って屋台の方に誘導する。
「お、兄妹かい? 仲いいね! サービスするよ」
ニコニコと俺たちに店主が話しかけてきた。
「その手に持っている、赤いやつはなんだ?」
「うん? 見たことないのかい? ゴリンという木の実で、甘いよ。オススメ」
よほどお勧めなのか、他の商品よりもそのゴリンをすすめてくる。
「ゼロ買うのじゃ! ぜったい美味しいのじゃ」
プラムが飛び跳ねながら、買うように言ってきた。
「いくらだ?」
「毎度、一つ銀貨二枚だよ」
「高いな、負けてくれるんだろ?」
俺がそう言うと店主は頭をかいて――
「これでも負けてるんですぜ? 最近は色々手に入りずらいんだ」
申し訳なさそうにそう言われてしまう。
「ゼロ……ダメかの?」
その声にプラムの方に視線を戻すと瞳に涙をためて、俺を見上げてきた。
凄く保護欲がわいてくる。
「店主。お釣りはいらん。これでいいか」
俺はポケットに入れていた金貨を一枚渡す。
「え? おいおい兄ちゃんこれは受け取れないぞ?」
金貨を突き返されてしまう。
「金貨じゃダメなのか?」
「そうじゃなくて、それは帝都のお金でここは天都。つまりここのお金じゃないと買えないんだ」
なるほど他国の通貨は禁止なのか。
「なら、これを使えるようにできないのか?」
「無理さ、ここで帝都の物なんて出したら嫌われてしまうね。見たところ世間に疎いようだけど気を付けな、この天都は帝都を憎んでいる奴がほとんどだからな」
店主は気さくに教えてくれた。
「そうか、分かった。プラム行くぞ」
「む~。残念なのじゃ」
俺はプラムに声をかけて、肩を落としたプラムとともにアクトの所に戻ることにし移動する。
・・・・・・・・・・・・
「お、何だ戻ってきたのか?」
俺たちに気が付いた、アクトが座りながら俺たちを見ずに声をかけてきた。
「ああ、どうも“帝都”の通貨が使えなくてな」
「何で言わなかったと言いたげだな。まあ、落ち着け。ここは集落であり町でもあるって説明ができなかったんだ。実際何言ってんのって感じだろ?」
「ああ、町というにはいささか小さいしな。旅の者からお金を取らないと機能はしないように思えるが」
「そうだろそうだろ、でも俺たちはここを守りながら街にしていくつもりだ。帝都に今度こそ負けないようにな」
その言葉にプラムが反応し、声出す。
「お主も帝都を恨むのか?」
「うーん。恨むっていうか、ただ帝都がここに攻めてきたときに、今度は負けたくないなって」
アクトは遠くを見つめてそう説明してくれる。
「そうか、そうなのじゃな。じゃが安心するがよい、妾とゼロが帝都を終わらせるのじゃ」
「面白いことを言うな、強いのか?」
「五英よりは強いのじゃ」
その言葉にアクトは、立ち上がり、俺を見てきた。
「本当だ」
「まあ、冗談だと思うが……そこまで腕が立つなら、仕事をしないか?」
「冗談ではないのじゃ。それにゼロは妾の刀じゃ、やらんぞ」
プラムは俺を隠すように手を広げて、俺とアクトの間に立つ。
「そうじゃないよ、お嬢ちゃん。宿と少しのお金は払うから少しだけ仕事を頼みたいんだ」
「確かに宿は必要だな。プラム少しだけいいか?」
俺はプラムの肩に手を置いて聞く。
「う~。少しだけか?」
「ああ」
「本当に少しだけか? 妾を捨てたりはしないか?」
プラムが不安そうに見上げてくる。
すごく可愛い。
「そんなことはしない。俺はお前の刀だろ」
「うむ、そうじゃよな。すまん、少し心配になってしまったのじゃ」
そう言ってハニカむプラムの頭を撫でながら、俺はアクトに声をかけた。
「で、仕事って?」
「自警団が二日ほどかえってこないんだ。それの調査を頼みたい」
「自警団はどこに?」
「ここから少し行ったところに、帝都に侵略されてない隠れ里らしき場所が見つかってな。それの調査を頼んだんだが、誰も帰ってこなくて気になっているんだ。俺はこの町を守る義務があるから、動けないんだ」
悔しいのか手を握って、声に力がこもる。
「分かった。引き受けよう」
「念の為に、その子はここに残るか?」
アクトがプラムを見て、そう提案してくれた。
「いや、妾とゼロは常にともにあるのじゃ。心配無用なのじゃ」
その言葉に嬉しくなる。
「何があっても守って見せる」
「うむ、頼むぞ」
俺たちは自然と握手を交わす。
「強い絆だな。では詳しい場所まで、案内をつけよう」
「「案内?」」
プラムと声がかぶる。
「説明しづらいからな、必要だろ?」
確かにその通りだな。
「でも、それなら俺を雇う意味ってあるのか?」
「流石に一人で調査に行かせられなくて困っていたんだ。本人は一人で行こうとしていたがな」
アクトはそう言って、笑う。
「して、その者はどこじゃ?」
プラムがキョロキョロ辺りを見て、そう声を出す。
「今、呼ぶ。コトハーーー!!」
アクトが突然大声名前を叫ぶ。
「呼びましたか、アクト」
その声に反応して、すぐ近くの物見台の上からスラッとした女の子が降ってきた。
着物のような服だが足が膝上まで出ていて、動きやすそうだ。
黒い髪は後ろで結んでいて、馬のしっぽような感じだ。
「ああ、こいつらを集落まで連れて言ってやってくれ」
「……死んでも文句は言いませんか?」
その子は俺の方を見て、そう聞いてきた。
「お前はどうなんだ?」
その子は無言で、答えないまま天都から出ていく。
「人見知りなんだ。ついて行ってやってくれ」
アクトは困り顔で説明してくれる。
悪気はなさそうなので、特段俺は気にしていない。
俺はプラムとともに、その子の後ろについて行くのだった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
今回は新キャラが二人登場しましたね。(女性キャラはまだ名乗ってませんが)
次の展開は隠れ里でのバトルとその道中の描写をに力を入れたいと思っています。
ここからは、最近の出来事です。健康診断で、元気な血ですねって言われました、その言葉は赤ちゃんが生まれた時に言う言葉なのではと感じましたです。後、身長が一センチ縮みました(笑)。そんな日常を楽しく過ごしております。
出は最後にもう一度。お読みいただきありがとうございます。
皆さんお声援で、書くことがますます楽しくなっております。
感想とか頂けるとさらに進みます(笑)
では次回もよろしくお願いしますです




