こうなる前提
「どうしてこうなった。」
目の前で起こっている事に何も出来ずただ眺めて涙を流すだけの自分が嫌いだった。
起きると目が濡れていた。
“なんだ夢か”ホッとした自分、
それと同時に今まで嫌悪感で忘れようとしていた過去を思い出してしまった。
「夏日ー!朝だよ!いつまで寝てんだい!今日も仕事はわんさかあるんだよ!」
と1階から母の大きな声がした。
「もう起きてるよ!」
それを返すように私も大きな声で返事をした。
私は、ただのどこにでもいる町娘、そしてこの家族の次女。
家族構成は長男・秋、長女・陽菜、次男・裕次郎、次女・夏日、三男・睦月、三女・雛里、そして、父の高貴母の雛と8人家族だ
私たち家族、いや南家は代々、茶屋をやっている。
父いわく
「この南家代々伝わる、秘伝のお餅!これを食べればみんなが幸せになるんだぞー」
と言っていた。
そのセリフは嘘ではない。
この茶屋も中々の人気で南家秘伝餅は買ってくれるお客さんも多く、茶屋でも食べていかれるお客さんは多い。
とにかく人気な故に毎日賑わっている。そのおかげで働き手はとても重要で働くものは食うべからずとこの家で定められている。
これからも、“楽しい幸せな日々”を送るはずだった。
しかし、“楽しい幸せな日々”は割れるように崩れていくように終止符を打った。
「夏日様はいらっしゃいますか、」
明らかにお偉い人達が茶屋を訪ねてきた。
「はいはい、いますがどのようなご要件で?」
母が怪しそうにその人達を見た
「私達の主、結家の祭様がお呼びなのです。私の家に連れてきて欲しいと、」
「そうなんですか、連れていくのですか?」
「はい。主のお呼びなので」
「私は本人の許可なしに連れていくのは彼女の親として許可は致しません。結家の使いの方だからといってご贔屓もする気はありません。」
母は少し眉間にしわを寄せた。
「そのようなことは心得ております。夏日様の許可を得てから連れてこいと主も言っておりましたので、夏日様を及びいただけないでしょうか?」
お偉い人達は母に深く頭を下げた。
「夏日、聞いてるんでしょ出てきなさい。私はあなたの判断に任せるわ」
母はなんでもお見通しなわけか。私が茶屋の奥の厨房で聞いているのが母にはわかっていたみたいだ。
少し恐怖感もあったが、
「私...わたし、行きます。でも今すぐは無理です、明日でもいいなら行きます。」と返事をした。なぜなら私は...
「本当ですか?主にはそのようにお伝えさせていただきます。明日の朝頃迎えに来てもよろしいですか?」
「はい。」
お偉い人達は私にお辞儀をして、去っていった。
お偉い人達が帰ったあと、母に呼び出された。
母は私に少し怒っているような顔をしている。
何故かは私にも分かる。私が行くと言ったからだ。
母が怒るに決まっている。しかし、
「どうして、どうして行くなんて言ったの?!」
母は泣いていた。私は母の優しさにこれ以上つけ込んではいけない。
わかっていたが少し苦しかった。今までの事が嘘になる気がして、そして母に私の気持ちを伝えた。
「私もう、この家には居れないや。私は“本当の家族じゃないもの”」