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しかし、そんなフユの心配は無用に終わった。
ドアを開けて、壁の外に出ると、眩しい太陽の光が二人のことを祝福してくれた。
気持ちの良い風が世界には吹いていた。
その風の匂いを嗅いで、あれ? おかしいな? 今の季節にこんな気持ちのいい風が吹いていたっけ? とフユは少し疑問に思った。
門のところにはなぜが衛兵は一人もいなかった。
いや、それだけではない。
壁の外の世界は、そのありとあらゆる風景が、フユの知っている世界のものとは違っていた。
そこには緑色の大地があった。
そこには青色の空と真っ白な雲があった。
そこには眩しい太陽があり、鳥たちのさえずりがあり、色とりどりの花が咲き乱れ、そして虫たちや、フユの名前も知らないたくさんの種類の草があちこちに生えていた。
フユはそんなまるで『失われてしまった楽園』のような風景を見て、呆然と門のところに立ち尽くしてしまった。
コスモスはそんなフユの顔を、とても楽しそうな(だけど少しだけ、悪意のないいたずらをしてしまった子供のような)顔で、見ていた。
「……これが新世界、なの?」
フユが言った。
「そうです。これが新世界です。世界は終わり、新しく生まれ変わったのです。あの壁の中で。私とハルとフユの意思と決断によって、卵から孵化して、世界は新しく生まれたのです。もう一つの可能性として。私とフユの、新しい未来として」
コスモスはぎゅっと、隣にいるフユの手を握った。




