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「僕のことをそれなりに知っているようだね」ハルは言う。
「もちろん。そりゃ壁の中に侵入するんだからさ、事前にそれなりの知識は仕入れてから来るよ。だから、君のことも、もちろん知っているよ。君の名前は、『ハル』。年齢は二十歳で、職業は国家ライセンス資格を持つ、特一級情報士。そしてハルには『双子の弟さん』がいる。でしょ? どう? 全部あっている?」楽そうな顔と声でソラは言う。
ハルは無言。
しかし、この場合、沈黙は正解ということだった。(どうやらソラもそれを理解しているようだった)
ハルは小さくため息をついた。
情報士の個人情報がこんなにも簡単に(壁の向こう側の勢力である)機械技師の手に渡っていることは問題だった。おそらくソラはハルのことを、ただその情報の全部を口にしていないだけで、きっとハルが思っている以上にかなり詳しく知っているのだろうとハルは予測した。
ハルは戦闘態勢を解くと脱力して、「わかった。お前の話を聞こう」とソラに言った。
「お前じゃなくて、ソラ」ソラは言う。
ソラは頬を膨らませるようにして、ハルのことを睨み付けてくる。
このままでは埒が開かない。
「……わかった。ソラ。君の話を聞こう」ハルは言う。
「OK! いいよ。私の目的をハルに全部話してあげる」そう言って、ソラはにっこりと年相応の可愛らしい少女の顔で、ハルに向かって笑いかけた。
そんなソラを見て、ハルはこれから自分はどうなってしまうのか……、と、なんだかすごく不安になった。
ハルは大きなため息をついた。
それから暗い鋼鉄の天井を見つめた。