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次のどんどん、という音で、その通気口のふたが外れて、がらんと言う音を立ててコンピューター室の床の上に落下した。
誰かが通気口の中にいて、そこから通気口のふたを外したのだ。
ハルは身構える。
それから、最悪の場合の自身の現在保持している情報の処理方法を模索する。(戦闘は基本的にはしない情報士専用の拳銃は、本来、そのために携帯するものだった)
「よっと」
そんな声がして、誰かが通気口の中から軽快な動きでコンピューター室の床の上に降り立った。
その、天井から降りてきた人物の姿を見て、ハルはとても驚いた。
その人物は、おそらく十七歳か十八歳くらいの短い黒髪をした、ボーイッシュな雰囲気を持つスレンダーで運動的な体格と綺麗な顔をした一人の健康的な美しい少女だった。
少女は、すぐにコンピューター室の中にいるハルに目を向けた。
それから少女はにっこりと笑って、「どうも。こんにちは。あなたが、噂の情報士さん?」と片手を軽く上げながら、ハルに言った。
その少女の雰囲気は、まるで都市の中でたまたますれ違った少しだけ自分の知っている人物に声をかけるような、そんな緊張感のないものだった。
少なくとも、(普段は全人類が誰も立ち入ることすら許されない、禁断の場所である)この世界を二つに分ける禍々しい巨大な黒い壁の内側でするような会話ではないとハルは思った。