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「……どうしてハルは新世界にやって来られなかったんだろう?」とフユは言った。
「それは、……わかりません。でも、もしかしたら、新世界にやってこられるのは、一人だけ、だと最初から、そういうルールがワールドエンドにはプログラムされていたのかもしれません」コスモスは言う。
「一人だけ……。でも、どうして?」
「それは、私が一人だからです」
コスモスは言う。
「世界の終わりは、新しい世界の始まり。その始まりに立ち会うことができるのは、一人。……そうたった一人。選ばれた人間だけなのです。そして選ばれたのは、フユ。あなただった。そういうことです」
「コスモス。僕には君の言っている言葉の意味がよく理解できないよ」フユは言う。
「君はこの状況が、……つまり僕とハルが離れ離れになってしまうかもしれないってことを、あらかじめ可能性として知っていたの?」
コスモスは答えない。
沈黙は、正解だということだろうか?
「ワールドエンドの選択を実際にしたのはハルだった。それに人間としても、僕とハルではハルのほうが優れているよ。ハルは情報士で、僕はそのサポートをする通信士にすぎない。誰が、なにを基準にして、選んだのかはわからないけれど、もし選ばれるという行為があったのだとしたら、選ばれるべきなのは僕ではなくて、ハルのほうだよ」フユは言う。
「いいえ。違います」コスモスは言う。
「選ばれたのは『フユ』です。それは、間違いでも、勘違いでもありません。絶対の、唯一の答えです。フユは新世界に来るべくして、やってきたのです。それが世界の選択なんです」
フユは真っ暗な天井を見上げる。
……心の中に、大きな空洞ができてしまったような、そんな不思議な感じがする。
ハル。
僕は、ハルを失ったんだね。
フユは思う。
それから、フユの目から涙が溢れる。
それは一粒の透明な涙の流れとなり、フユの白い頬を伝い、コスモスのいるタブレットの上に、落ちて弾けた。
そして、その瞬間、奇跡が起きた。