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95.ルオが本気出したらヤバい……。

お待たせしました。


ではどうぞ!



『……やはり、“アズサ”だ。確たることは言えないが、面影がある』



 シルレに求められて、織部達にしたように該当場面まで録画を巻き戻す。

 瞬きせず食い入るように見つめていたシルレは、唸りながら首を小さく縦に動かした。



『知り合い……なんですか?』



 織部が訊いていいものかどうか迷いながらも、誰もが訊きたいそのことを口にする。

 それに対してシルレ自身も、まるで見ている物が信じられないといった風に頷いた。



『ああ……――私達がこの先向かう魔族の町に、別の“五剣姫”が先行している、という話をしただろう?』


「……ああ、そう言えばそんなことを言っていたな」



 どちらかと言えばシルレは画面越しの俺たちに向かって確認するようにそう前置きした。

 まあ、織部とサラは当事者だ、何度も同じことを聞いてるんだろう。



『“カズサ”という名の強い女性なのだが、その彼女には妹がいるのだ』



 そこまで聞けば、察しの悪い奴でも大体想像はついてくる。

 その俺の想像に反せず、シルレはこの画面に映る男装した少女のことを語るのだった。



『私も数度だが、顔を会わせたことがある。だが、1年前にダンジョン内で死亡したと聞いた――“アズサ”は“カズサ”の妹なんだ』 





□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆




「≪闇よ、光を遮れ――≫」



 攻撃系統が多いラティアの魔法にしては珍しく、短い詠唱が唱えられる。

 そんなラティアを守る様に、周囲開けたスペースを縦横無尽に走り回り、俺へとヘイトを集め続けた。

 


 体がドロッと溶けるような液体のポイズンゾンビは緩慢だった動きを早めるが、もう遅い。

 

 


「――【ブラック・アウト】!!」 




 開けた広間になっているダンジョン内の一角、ゾンビたちの周囲にのみ。

 大きく真っ暗な黒い光が落ちる。


 ただでさえ俺へとヘイトを向けている中、ラティアの魔法が奴らの視界を奪う。

 そして暗黒に揺さぶれて意識さえも一瞬混濁し、ゾンビたちはその動きを完全に止めた。


 


「後は任せて――」



 リヴィルが右腕にその導力を集中させる。

 触れると毒を食らう恐れがあって慎重になっていたが、これでもう片が付いたも同然だった。


 

 導力を纏わぬ場所への被弾可能性がなくなった今、リヴィルはその神経全てを攻撃にだけ注ぐことができるようになったのだ。




「――んっ!!」



 流れる水のようにあらゆる色へと流動的に変わっていくそのエネルギーが、爪状に姿を変える。

 リヴィルはその巨大なエネルギーの塊で、毒々しいモンスターを切り裂いた。



「はぁっ!!」



 振り向き様に、その爪を更に一閃。

 ポイズンゾンビは反応することすらできずに、その体を三枚に下ろされた。



「……ふぅぅ」



 剣に付着した血を払うように、リヴィルが導力の爪を振る。

 ビチャッとその体液が飛び散った。

 

 それが、決着がついたという合図になった。  






「……お疲れさん」



 あんまり役に立ってない罪悪感を抑えつつ。

 頑張ってくれた二人に労いの声をかけた。



「ううん、ラティアが相手の行動を完全に止めてくれたから、楽だったよ」


 

 リヴィルの率直な言葉を受けたラティアは謙遜するように首を横に振る。



「いえ……それこそご主人様が詠唱時間を稼いでくださったから出来たことです」


「うん、そうだね……やっぱり(かなめ)はマスターがいてこそ、かな」


「……そりゃどうも」



 いいんだよ、二人とも。

 自分が役立たずだってことは自覚してるし。


 フォローされると、余計それを実感しちゃうから。

 ……虚しいね。

 


「……本心なのに」


「……まあ、少しずつご理解いただきましょう」



 何、陰口ですか?


 二人でもこれだ。

 家とかでルオが揃ったら、きっと俺のことボロカス言ってるんだろうな……。



 

 そう言えば、もうルオがこっちに来てもいい頃だと思うんだが。


 織部やシルレ達から話を聞いた後、時を同じくして志木から連絡が来て。

 直接彼女――“アズサ”について(志木はその名前を認識してはいないだろうが)報告したいことがあるということで、ルオが自ら志願して出て行って、多分4時間程が経った。


 電話があった際、近くまで来ていると志木自身が言っていた。


 ルオにはその間ダンジョンへと潜ってくると伝えてあるし。

 場所も元は志木から教えられ、途中まで一緒に攻略を進めたことのあるダンジョンだ。

 

 一本道だし、そろそろ合流しても良いはず――

  



「――ご主人!!」



 っと、噂をすれば。

 だが、その声は予想を裏切る人物のものだった。


 俺たちが通って来たダンジョンの道を、パタパタと小走りに駆けてくるのは……。



「えーっと……ルオ、か?」



 俺のことを“ご主人”と呼ぶ相手はルオ以外に心当たりは無い。

 しかし、そう尋ねずにはいられない見た目だったのだ。

  

 

「え? フフッ、酷いな~。ご主人、ボクのこと、忘れちゃったの?」


 

 遠目だと外見的には全く区別がつかない。

 ただ、近づいてくるにつれてそれがルオの能力によるストックであることが分かってくる。



「へー……今回は“志木”のストックを作ったのか」



 志木本人ならしないような「えへへ!」という弾ける笑顔を浮かべ。

 志木の姿をしたルオは、俺たちと合流したのだった。




 

□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆      



「それにしても……似てると言えば似てるが、よく見るとやっぱり違うな」



 俺たちはダンジョンの攻略を中断。

 ルオが持ち帰ってくれた情報を聞いていたのだが、その最中、やはりルオが今【影重】をしているストックが気になってしまう。



「うん! カオリお姉さんのことはテレビとかで何度も観察する機会あったし。でもまともなお話しってなると、さっきのが初めてじゃないかな?」 


  

 ルオは口調ルオのまま、しかし声だけは志木の透き通る綺麗な声で話す。

 実在の人物でも、見るだけで完璧に再現できるというわけではない。


 ルオの能力は相手を観察することも大事だが、相手を理解することも非常に重要な要素となってくる。

 それで、その本人とコミュニケーションをとれることはストックの精度を高める上で非常に有用となってくるのだが……。



「なるほどな、ちゃんとした会話をしたことが殆どない状態だと、やっぱりちょっと荒い部分はでてきちゃうってことか」

        

 

 そう口にしながら、改めて志木の姿を再現したルオを見る。

 全体的な雰囲気は完全に志木そのもので。


 真っすぐ艶のある綺麗な髪や、整った顔。

 スラッとした手足や他者を惹きつけるようなオーラなど。


 普通に遠目で見たら志木だと見間違えるのだが、所々のパーツは微妙に違っていた。



「何より、ルオ自身がカオリになり切れてないよね。その元気に飛び跳ねてる様子なんて、元のカオリからは想像もつかないし」


 

 リヴィルの言葉に、完全に同意するように頷く。

 ラティアも同じ意見のようで、苦笑しながらフォローする。



「まあ、仕方ありませんよ。そもそもカオリ様は一度や二度会話を交わしただけで理解できる程単純なお方ではありませんし」


「…………」

  

 そのラティアの意見にも全くもって同意なんだが、俺は直ぐに頷くことはできなかった。

 いや、だって俺以外に黒かおりんの存在を認識してるのって、殆どいないだろうし。


 多分、ラティア達には外面の良い白かおりんしか見せていないはず。

 俺がここで変なこと言って、ラティア達にその存在を認識させてしまうと、後が怖い。



 うーん……ルオが志木の再現を完璧に出来る日はまだまだ先かもしれんな……。



「でも、改めて考えると……ルオの能力は使い方次第ではとても怖いものになりますよね」



 ラティアは真剣な表情を作って、志木の姿で飛び跳ねているルオを見る。


 

「まあな……」


 でも、ルオだし……。

 能力だろうと武器だろうと使い手の心次第で良くも悪くもなるというのはよく聞く話だ。

 

 包丁とか、銃とか。


 なので特にその話を掘り下げるつもりもなく、ルオの報告の続きを聞こうとすると……。



「ルオ、ちょっといいですか?」


「? うん……」



 ラティアがルオを連れて、俺とリヴィルから離れて行ってしまう。

 それで、隅の方でラティアがルオに何かを手渡し、コソコソ話している。



「……何だろうね?」


「……さあ?」



 リヴィルと二人で待つこと1分程。


 悪巧みを思いついたような顔で戻ってくるラティア。

 その後ろについてきたルオは――



「……っ!」



 何やら羞恥で頬を染め、真っ直ぐ前を向けないという演技をしていた。


 ……え?

 

 そしてその首には、俺が以前ラティアに贈ったあの首輪がついていて……。

 

  

 志木の演技を続けるルオは、ペタンと地面に腰を付き、上目遣いになってこう言った。



「あの……“私”……貴方の物に、なります。でも、こういうの、初めてだから、優しく、してね?」


「「…………」」

  


 あまりの事態に、俺とリヴィルは揃って無言になる。


 リヴィルはおそらく、志木本人がもし同じことを言ったらと想像してのことだろう。

 俺も同じ思いだが、より深刻なダメージを受けての思考停止だった。





 黒かおりんはこんなこと言わない、黒かおりんはこんなこと言わない、黒かおりんはこんなこと言わない、黒かおりんはこんなこと言わない、黒かおりんはこんなこと言わない、黒かおりんはこんなこと言わない、黒かおりんはこんなこと言わない、黒かおりんはこんなこと言わない、黒かおりんはこんなこと言わない、黒かおりんはこんなこと言わない、黒かおりんはこんなこと言わない、黒かおりんはこんなこと言わない…………ハッ!?

 


「フフッ、実感していただけましたか?」


「……やべぇな、ルオが本気だしたら、エグイな」



 俺はルオが味方でいてくれて本当に良かったと。

 そして悪知恵を働かせた黒ラティアが敵でなくて更に良かったと、本気で安堵の溜息を吐いた。





 

 その後、志木がもたらした情報――“アズサ”という少女の後ろ盾が特定の国とか団体ではないことを聞かされた。

 志木や皇さんのように、どちらかというと個人で大きな財産を持っている人物が日本での彼女の活動を後押ししていると。

 

 それを知り、急いで俺に伝えようと連絡を取ってくれたらしい。

 逆にルオから志木に、あの少女を何とかこちらに引き込めるかもしれないということは伝えて貰った。


 

 それを受けての志木の言葉を、ルオが志木の姿で再現したのだが――



「……(たら)すのもいいけど、刺されないようにしてね?」



 と言われた。



 ……黒かおりんめぇぇぇぇ!

昨日一日お休みしておいて本当に良かったです。


今日一日、あまりの頭痛にほぼ布団の中で過ごすことになりました。

敏感に体の異変を察知していたおかげで、悪化させずに対処できました。


本格化する前に薬を飲んで、ごはんも適度に食べて、そしてしっかり寝て。


何とか書けるまでに回復しました。


皆さんも、今の時期は特に無理して体を壊してしまう前に、休みはしっかりと取りましょう!

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[良い点] 黒かおりんはこんなこと言わない。黒かおりんはこんなこと言わない。黒かおりんはこんなこと言わない。黒かおりんはこんなこと言わない。黒かおりんはこんなこと言わない。黒かおりんはこんなこと言わな…
[一言] >  志木の姿をしたルオは、俺たちと合流したのだった。  白でも黒でもない全く新しいかおりん(偽) > 「……やべぇな、ルオが本気だしたら、エグイな」  変身能力がやべえってのはここ最近の…
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