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88.アイドルって大変だな……。

お待たせしました。


ではどうぞ!


「ご主人!! 早く早く、始まっちゃう!!」


「はいはい、そんなに急がなくても……」


 ルオに急かされながら、俺は手早く準備を進める。

 テーブルの上にノートパソコンを設置し、テレビチャット機能を設定。


 事前に逆井や皇さんと話していたことだ。



「もう終わるから……よっと!」


『――あっ、新海、だいじょぶ? 見えてる?』



 繋がった画面先で、逆井が掌を向けてひらひらと振って見せる。

 ……いや、大丈夫だから。



『あ、あの、えっと陽翔様、その――』



 バスローブ姿で逆井の後ろにちょこんと控えている皇さん。

 背景からすると、二人はどうやらどこかのホテルで相部屋に泊っているらしい。



「うん、こんばんは。早速だけど……」


 

 皇さんがぎこちないながらも挨拶するのを見届け、直ぐに視線を移す。

 二人も気づいたらしく、自分達の部屋に据え付けられていたテレビを点けた。


 俺もそれを確認し、ソファーへと移動。

 リヴィルがチャンネルを変えてくれて、目的の番組を見る準備を進めた。



「とわっ!!」


「ぐふっ――」


「フフッ、ルオ、ご主人様の膝上が心地良いのは分かりますが、ジャンプからの着地は危ないですよ?」 

 

 くっ、何て優しい眼差し!

 だがその瞳の奥が怪しく輝いているのを俺は見抜いているぞ、ラティア!!


 ルオが膝上からずり落ちないようお腹に手を回してやると、ラティアはより嬉しそうに微笑む。



「えへへ……ごめんなさい」



 ……ルオの楽し気な様子も相まって、更に言及し辛い。

 クソッ、これもラティアの策の一つか!



「ん、始まるよ」



 左隣に浅く座り込むリヴィルが画面を指差し、短く告げた。




 軽快な音楽と共に、画面が移り変わる。

 多くの少女・女性が拍手をしている姿を頭上から、どんどん降りて行って、真正面。


 そして音楽が止み、司会者の男性芸人が口を開く。



“さぁっ、始まりました! アイドル達が鎬を削って、自らのグループをプッシュする!”



 合いの手を入れるように、後ろのアイドル達がワイワイ・ガヤガヤと声を出す。



“アピール権を賭けて、競え! アイドルグループ対抗3本勝負ぅ~!!”



「あっ、ハヤテだ」


『御姉様と、六花(ろっか)さんもいます!』


 

 リヴィルと、画面向こうにいる皇さんの声が重なる。

 確かに、リヴィルの視線の先には見覚えのある顔が4人で固まっていた。


 かなり画面中央の近くにいるので、良い位置に居させてもらってるんだと思う。


 その先頭には探索士の制服に身を包んだ志木がいた。

“シーク・ラヴ”と書かれたプラカードを下げている。

 


『はは、そりゃいるでしょ。後“みひろん”もいるはずだよ?』



 志木、皇さん曰く六花さん、赤星、そしてそのみひろんの順に並んでいる。

 彼女らは揃って胸に自分の名前が書かれたワッペンを付けていた。




「じゃあとりあえず見るか――志木や赤星達の生出演を」 



□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆

  


 ピンポンッと音がして。

 台の上に置かれたランプが灯る。



“さぁ、運動、歌唱力共にトップで進むシーク・ラヴチーム、解答者のえーっと、飯野(いいの)さん、答えをどうぞ!”



“んと、えっと……魚類と、両生類……爬虫類に鳥類……あっ! 人類!!”



 不正解を示す音と共に、爆笑が起こる。

 釣られるように、隣にいた知らないアイドルグループのメンバーも笑っていた。

 


 ちなみにラティアとルオも、可笑しそうにクスクス言っている。

 リヴィルも微妙に頬をピクピク動かしているところを見ると、今のは面白かったらしい。


 だが一方俺はというと……。


 

「……これ、マジか、逆井」



 リヴィルとは別の意味で頬をヒクつかせていた。

 


『あ、あはは……みひろん、元はおバカ担当のバラドルだから……』



 逆井も流石にこれには苦笑いだった。








“おっと、お助けチャンス!! さっ、シーク・ラヴのお助けメンバーは……逸見(いつみ)さん! お願いだから、飯野(いいの)さんを助けてあげて!!”



 司会者も半分本音で懇願するみたいに、控えていたその六花さんを呼んだ。


 彼女はヘッドホンを外す。

 そして今、問題を聞いた。


 与えられた30秒内に、答えではないものの解答に役立つヒントを考えるのだが……。



“ん~っと……人間、って言ったらダメなんですよね……じゃ~あ、赤ちゃんと、大人と、杖を持つお爺さん! この足に当たる部分を考えて、美洋ちゃん!!”



 ふんわり・ゆったりと言ってのけるが、周囲ではそれでまた爆笑が起きる。



“おーっと! 斬新! 斬新すぎるよ!! 謎々を一瞬で解いて、時間内に適切なヒントを伝えてるのに、答えを言ってはいけないというルールを真っ先に破っていったぁぁぁ!!”



“あらっ? 私、答え言ってました?”



 そのおっとりとした受け答えに、スタジオ内は笑い声に包まれる。

 他の売り出し中のアイドル達も笑顔は浮かべているものの、その奥に悔しさが滲み出ている。


 あんな蝶よ花よと育ってそうな御嬢様でも、バラエティー行けるのか!?と。



『フフフッ、六花さんったら、天然さんですね』


 

 いいのか、皇さん、それで……。


 ちなみにあの六花さん。


 志木や皇さんの学園の卒業生らしい。

 そしてなんと椎名さんと同級生。


 つまり椎名さんは皇さんに仕えてなければ今頃は大学生だったということに。


 ……色々あるんだね、世の中。




 運動コーナーで満点を叩き出した赤星と、歌コーナーで他を圧倒した志木。

 その二人はクイズコーナーでは応援席にて見守っていたのだが……。



「……おい逆井、志木のこめかみ、ピクピクしてね?」


『あ、あはは……はやちゃんも苦笑してるっぽい』


 

 クイズ担当の二人が見事に望まぬ形で注目を集め、特に志木は表情筋が凄いことになってる。


 頑張れ、白かおりん!

 負けるな、白かおりん!   


 このままでは、生放送で黒かおりんを全国に晒すことになるぞ!!







“さぁ、大逆転を許して最下位へと転落したシーク・ラヴの皆さんには、罰ゲームを受けていただきます!!”



 場所を移して、落下のための開閉扉がある台に立つ4人。

 


“その、ゴメンなさいね、花織ちゃん、私がドジしちゃったから……”


“……いえ、こういうのは連帯責任ですから”



 申し訳なさそうに謝る六花さんに対し、優しく微笑んで返す志木。

 おお……何とか放送終わるまで白かおりんを保てそうだ。 



“ですよね! ですよね!! ワタシも4人で一緒なら落ちるの、怖くないです!!”


“飯野さん、10問連続で不正解のあなたは反省なさい”


“……はい”



 出てる、ちょっと出てるよ黒かおりん!



“あ、あはは……でもローション風呂に落下か……ちょっと怖っ――うわっ!?”  

 


 赤星が何か言い終わる前に、放送時間が迫っていたのか、下の扉が開いた。

 4人が一斉に落下し、透明で粘性の液体に浸かる。

 

 ビチャッと音をさせて、体全体が濡れた後、浮上。



 髪が短めの赤星以外、3人はかき上げるように首を上に振る。

 だが単なる水のようには弾け飛ばず、ドロッとした感じの液体が周りに散った。


“あはっ、凄い、トロトロなのね~。怖かったけど、ローションに浸かるの、結構気持ちいかも~!”

 

“六花さん……何で罰ゲームで喜んでるんですか”


“ううう……顔が、顔がスベスベします”


“ははは、飯野さん、それも何か良い効果を伝えてるように聞こえちゃうよ”



 そこで終わりの挨拶に入る。

 かなりお色気な映像になってしまったものの、結果的には成功だったのではないだろうか。


 後は丸々優勝したグループの新曲が流される時間となるものの。

 そこに勝者としての喜びの表情はなく。


 今後のテレビ業界で自分達が戦っていけるのか、焦りと不安と悔しさがない交ぜになった顔ばかりだった。





「……いや、それはいいんだけど、告知は?」


 

 俺は特に、赤星や六花さんが濡れて色っぽい姿で映ったのを気まずく思い、逆井に話を振った。

 だって一応、今日これを見ようって話になったのは、志木を始め、逆井や赤星から見て欲しいと言われたからだ。



『えーっと、その、何て言うか……』 


 逆井も逆井で、誘った側だからか、とても気まずそうに言葉を濁している。

 


「お前が“絶対勝って、告知するから!”みたいなフラグ立てるから……」


『うぅぅ……』



 苦しそうに呻いた逆井は、ふて寝するように後ろに見えていたベッドにダイブ。

 ……いや、まあいいけど。



『申し訳ありませんでした、陽翔様、思わぬ結果になってしまいましたが……』



 皇さんがこのまま本当にいなくなってしまうのではないかってくらい縮こまっていた。


 

「まあ……こういう事もあるよ」



 慰めるように画面に向かってそう告げると、少しは元気が出たようで。

 ちょっと顔を上げた皇さんは、何かを思い出したように手を打つ。



『そう言えば……もしもの時には私から、陽翔様達にお伝えを、と言われていました』


「ん? それは……志木から?」


『はい――えっと、シーク・ラヴの研修生になるためにはオーディションで受かる必要があるのですが……』 


 皇さん曰く、今彼女が話していることは本来、志木達が勝利すればババンと発表することだったらしい。

 でも負けたから、多分この後ホームページにて広告することになるだろうと。



『ただ、現在私や梨愛様のように本生としているメンバーからの推薦枠――所謂スカウト制が導入されることになりました』


 全部で40人を迎える中で、その内12の椅子は、志木達から一人につき一人、推薦した人がなれるということだ。


 

 そして皇さんは俺たちにだけ伝えるべきことも、口にしたのだった。



『私から――ルオさんを、研究生として、推薦したいんです。ルオさん、一緒に探索士アイドルとして、活動してみませんか?』

ふぅぅ……。


ちょっと腰を痛めました。

書くこと自体に支障はないものの、湿布とお友達に。

早く治したい……。



未だに読んでくださってありがとうございます。

やっぱりちゃんと更新を頑張っていれば徐々にではあっても安定していくもんですね。

今後もご愛読・ご声援頂ければ幸いです!

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― 新着の感想 ―
[一言] 研修生増やしてダンジョン攻略に役立てるのはわかるんだけどダンジョンよりアイドル活動の方が活発化してて大丈夫かと思っちゃいますねw ルオが研修生になると、ダンジョン攻略よりアイドル関係の話の…
[一言] 金持だからどうとでもなるかもだけどルオって戸籍なくね?
[一言] > この足に当たる部分を考えて、美洋ちゃん!!”  ここでおっぱい! とか言ってたらヒント与えすぎなのか?
感想一覧
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