79.……うん、ちょっと、疲れたな……。
とりあえず更新。
一先ずはどうぞ。
「はぁぁ……」
ボス戦が終わったことを理解し、体から力が抜けていく。
久しぶりに疲れを感じる戦いとなったが、大きな怪我もなく攻略できて良かった。
皆それぞれ近くにいる人と喜び合っている。
凄い盛り上がりようだな……。
〈Congratulations!!――派生ダンジョンLv.17 元ダンジョンLv.28を攻略しました!!〉
〈Congratulations!!――当該ダンジョンを攻略完了しました!!〉
あの機械音が聞こえてくる。
なるほど、今回の攻略はそういう感じにアナウンスされるのか。
「ご主人、お疲れ様っ!!」
「ああ、ルオもお疲れ――って! また……」
俺と共に肉盾役まで担ってくれたルオが近づいてきたが、その姿は既にルオ本来のものになっていた。
勝利が決した時に、もうシルレの姿から変わっていたのだろうが、衣服は変わらぬまま。
つまりシルレ用の大きな服をダランと余らせて着ており、良くここまで駆けてこられたなと感心する。
「ほらっ……さっさと着替えちゃいなさい……」
「はぁ~い!」
呆れながらも、直ぐに着替えを取り出して、それをルオへと渡す。
だが何だろう、こういう感じで誰かの世話を焼くのも悪くない。
特にルオは、誰かに今まで甘えて生きるということをして来なかったんだからな。
そうして感慨にふけっていると、また近づいてくる人影が。
「ふぅ――お疲れ様。本当にありがとう」
「おう、お疲れさん――ラティアも、リヴィルもよく頑張ったな」
志木が、ラティアとリヴィルの二人を連れてきたのだった。
軽く3人ともを労う。
「はい。皆さんが詠唱時間を稼いでくださいましたから。ご主人様とルオは特に」
「うん、だね。二人がいなかったらもっと手間取ってたと思う」
二人にそう言ってもらえるのは嬉しいが、正直俺としては素直に喜べない。
だってゴーレム1体倒してしまって、逆に余計な手間を取らせたかもしれないから。
そのちょっとした罪悪感もあって、俺は二人の言葉には軽く頷く程度で返すにとどめた。
「これでとりあえず、モンスター氾濫の可能性は潰せたな」
話を変える意味もあり、俺は適当に思いついたことを述べて志木へと話を振った。
「ええ……」
志木は短くそれだけ口にして、一度周りを見る。
石畳はあちらこちらでひび割れて足場が悪くなっている中、逆井と桜田が中心となって盛り上がっていた。
ウェーイとか、フゥゥ!!とか、テンション高めの声が聞こえる。
それを見て、志木は嬉しそうに目を細めて、ゆっくりと口を開く。
「彼女たちにも、とても感謝してるわ……後でお礼に何かを奢って、だそうよ?」
「ああ……なるほど」
逆井の言いそうなことだ。
あえてそう言って、貸し借りみたいなことを気にさせないよう配慮したんだろう。
ま、何か奢ってもらえて嬉しい、テンション上がるってことも本当ではあるんだろうが。
皇さんなんかは別に自分で買えるだろうに、親しい仲間と共に何かを成し遂げ、喜びを分かち合うという機会がほとんどなかったのだろう。
興奮気味に目を輝かせて「タピオカミルクティーにしましょう!! タピるです、タピるっていうんですよ!!」とドヤってる。
それを一歩引いた場所で見守る様に立っていた赤星は、思わず苦笑していた。
「フフッ……それで、勿論貴方たちにも何かで報いたいと思っています。貴方たちの協力無くして、これほど早い攻略などできなかったもの」
志木の申し出は俺個人だけでなく、ラティア達3人に対しても何かあればそれに応えるという内容だった。
遠慮はいらないという志木の言葉に、それならとラティア・リヴィルが話し合う。
ルオは特に思いつかないようなので俺に任せるらしい。
ラティア達が決める前に、俺は少し考えがあったので、先に志木へと伝えることにした。
「なら――彼女らのこれからの身分というか、この国での活動をやりやすくするような、そんな配慮ができないだろうか?」
「それは……公的な身分証明が欲しい、ということかしら?」
俺が少しぼかして伝えたことを、志木は汲み取ってくれて、深くはツッコんでこず。
端的にどういう物が欲しいかとだけ尋ねてくれた。
「それが出来るなら、それでもいいし……まあ“物”として何か欲しいと限定してるわけじゃない。無理しなくても、何かそれらしいものであれば」
無茶して必要以上に公権力のご厄介になることもないからな。
少しでもラティア達が暮らしやすいように、という意図が伝われば今はそれでいい。
「……分かりました。少し、考えさせてください」
ちなみに、ラティアとリヴィルが頼んだのは、今後も買い取りだったりダンジョンの斡旋だったりを活発に行って欲しいというものだった。
そこでチラッとラティアが俺を見て「……今後も、色々と増えるかもしれないので」という理由付けをしたのにはちょっと首を傾げざるを得ない。
ラティアさん、何が増えるんですかね……。
出費?
出費のことだよね!?
更に言うなら、志木がそれを聞いて俺を半目で見ながら「あ~。なるほど……」と納得しやがったのには流石に少し怒りを覚えた。
ぐぬぬ……。
□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆
『――へへっ、攻略したこと自体は褒めてやんよ。でもあたいを落とそうって? あたいはそんなに軽いダンジョンじゃないんでね!』
『――ふふっ、褒めてやんよ! でも、ママもあたちも、尻の軽いダンジョンりゃないもんね!』
その後、落ち着いていつもの台座に向かい。
今回はGradeを“ダンジョン捕獲のアピールに使用”することに。
志木達もDD――ダンジョンディスプレイを有し、DPを得られる可能性もあることから、少し遠慮しようかと思ったが。
彼女らにももう一つのGradeの使用可能性を知ることができるという利益があることから、特に問題なくこの話に落ち着いた。
そして、今、ちょっと喧嘩腰のヤンママ風ダンジョンと、舌っ足らずな娘風ダンジョンへとアピールするのだが――
『――嘘だろ!?“ボス保有ダンジョン攻略2番目”:15000Gradeだと!?――ひぅっ!!』
『“ボス戦 攻略時間 3分”:10000Grade!? ――ぁぁん!! こんな、こんにゃの知らにゃいっ!?』
「…………」
「えっと……新海君?」
赤星が、怪訝そうな表情をして無言の俺を心配する。
「……うん、ちょっと意識飛んでた。大丈夫」
「それ全然大丈夫じゃないし!?」
逆井は心配性だな……。
そんなんじゃツッコミ属性しかつかなくなるぞ?
『“メタルジェム 以外討伐 1体”:8000Grade!? そんな!? どうやったらゴーレム1体しか倒さないで、あの守護者を――いやっ、やだっ!! あたい、の弱い所、全部攻められて――』
『“攻略参加総人数10人以下”:12000Grade!? やりゃ! もう、やりゃよ!! これ、ダメ、頭、真っ白に――』
『“ボス戦総攻略2回中失敗・撤退0”:20000Grade!? 止めて!! 負けたくない、負けたくないのにぃぃぃぃ、親子で負けちゃうぅぅぅぅぅ――』
〈被所有の元ダンジョンへのアピール率……100%。ダンジョンの捕獲に成功しました〉
〈被所有の派生ダンジョンへのアピール率……100%。ダンジョンの捕獲に成功しました〉
「…………」
「え、えと……陽翔様?」
無言と無表情を貫く俺に、流石におかしさを感じ取った皇さんが心配してくれた。
「シッ、律氷ちゃん、見ちゃいけません!!」
こら、桜田、それだと俺がおかしい奴みたいだろうが。
兎に角、俺は初の親子ダンジョンの捕獲に難なく成功したのだった。
更新について、昨日ああ書いてから、ちょっと考えました。
今日のお話を読んでいただくと、なんとなく感じたかもしれません、“いつもよりちょっと短め、かな?”と。
はい、そうです。
更新は結局は今のペースで変わらずやろうという結論になりました。
ただ他のお話も書きたいという気持ちはやはりあったので……。
そこで両方頑張れる方法はと頭を悩ませた挙句、更新ペース自体は維持するものの、一話の長さ自体をちょっと短めにしようと。
あれですね、物価上昇やむなしになった時、企業が苦肉の策として値上げはしないものの、その内容量を減らして対応した、みたいな感じです。
500ml→430mlでお値段据え置き的な。
で、その短くした分の時間で、新しいお話のストックや設定作りに勤しむことにします。
折角これだけ書いたんですからね、この先をまだまだ書き続けることによって得られる物もある、と、そんな方針になりました。
ちょっと色々悩んだり不安定なこともありますが、今後とも楽しんでいただけるよう無理なく頑張って行きます。




