78.2度目のボス戦!!
お待たせしました……。
何とかボス戦終わらせました。
ではどうぞ。
「ぁっ――」
ギギィーっと鈍い音をさせ、背後にあった重厚な石作りの門が閉まる。
それに気づいた皇さんは、声にならない声を上げていた。
「大丈夫だよ、リツヒ。ボクもいるからね!」
それを不安の表れととったのか、隣を歩くルオが明かるく声をかける。
「……フフッ、そうそう。9人いるんだから、大抵のことには対処できるさ」
「ですね!! なので皆さん、頑張ってください!! チハちゃん、精一杯応援してますよ!!」
ルオに感化されるように、赤星が肩の力を抜いて行こうと励ました。
そして桜田の冗談――と思われる言葉に、周囲で笑い声が漏れる。
「……はい、すいません、大丈夫です!」
どれだけ頭で理解していても、肌でしか感じ取れない緊張感みたいなものもある。
そう言うのが少しは取れたようで、皇さんも皆に頷き返していた。
「――皆、来るよ」
リヴィルのその一言で、全員がポジションを取り、構える。
赤星は元のチームへと戻って来たので、つまり最後尾を担ってくれていた。
俺たちは基本的に雑魚を間引いたり、敵のヘイトを集めることが役目だ。
なので、ルオは今の間にシルレの姿へと変わっている。
簡単なアンダーシャツとパンツを纏い、俺と二人で前衛を務めるのだ。
一方の志木達は、俺たちと向き合うようにして広がり、リヴィルを先頭に添えている。
準備は整った。
さあ……来い!!
□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆
体育館を横に二つ並べた程の比較的広い空間。
石畳で、4つだけ石柱が等間隔に置かれている。
そんな広間に、落雷のような真っ白の光がピカッと走った。
「うっ――」
「眩し――」
「凄い、光――」
物凄い光量に目を開けていられず、手庇を作りながら光を遮る。
だがそれは一瞬のことで、視界は直ぐに正常へと戻った。
もっとも、目を使わずとも。
そんな瞬き程の間に、自分達以外の存在が出現した気配・空気は十分に感じ取れていた。
「――おいっ、出たぞ!!」
「皆っ!! 全部で、6体!!」
真っ先に状況を把握した俺とリヴィルが声を飛ばす。
中央付近に姿を現したのは、5体の小柄なゴーレム。
そして――
「っ!! 真ん中!! 真ん中のあのメタリーな輪っかが何かヤバそう!!」
次第に皆も視界を取り戻していく。
そして中でも早くに状況を理解した逆井が、とにかく情報を共有しようと自分の言葉で叫んだ。
逆井の言ったように、ゴーレム5体に囲まれるようにして宙を浮くモンスター。
鈍い銀色の輝きを放ちながら、巨大なその球体を回転させている。
そしてただの輪っかだったのが、回転に伴いボール状にその体を変化させたり、また戻ったりを繰り返す。
ゴーレムたちは見た目だけでは5体に差はないのに比べ、そいつはとても印象的な動きや見た目をするモンスターだった。
「――リヴィル!!」
「ん!――」
逆井の持った危機感を、全員が共有していた。
あのメタルな球体が、相手にとっては戦闘の核なのだ。
それをラティアもいち早く察し、叫ぶ。
リヴィルも瞬時にその声に応え、一目散に駆けだした。
「梨愛さんっ、ラティアさんの護衛を!! 私がリヴィルさんをサポートします!!」
「分かった!!」
志木や逆井もそれぞれ動き出し、自分の役割を全うする。
ラティアも詠唱を始めた。
「1分で、片を付けるぞっ!!――」
皆に聞いてもらうというよりは、自分の決意を示すという意味で。
俺は叫びながら、灰グラスを装着。
そして一気にゴーレム達へと駆けだした。
「「「gigigigi――gigi!?」」」
ヘイトが一気に俺へと溜まったのだろう。
警戒感を隠そうともせず、重そうなレンガ造りの腕を振り上げる。
しかし、奴ら自身俺の姿が見えていないのに、その見えていない相手を一番警戒しないといけないという困難に直面。
5体は俺の姿を認識できなくなる直前に、俺がいた場所へと近寄っていく。
それを確認しながら、集団から最も離れてしまった1体を狙い、俺は攻撃を仕掛けていった。
「gigi? gi――」
思いっきりケツを蹴り上げられたゴーレムは、振り返り、左右を見るも、目の前にいる俺に気づかず。
「良しっ、私達も行くぞっ!!」
既に俺と挟み撃ちを始めていたシルレ――姿のルオ。
マジックバッグに入る限界の大きさだった、そこまで大きくない片刃の剣を使い、叩き切るようにゴーレムを攻めていった。
「うん!! チハッ、律氷ちゃん!!」
「りょ、了解です颯先輩!!」
「はいっ!!」
3人は俺たちとは違う個体を狙い始める。
「gigi!! gigi,gigigig!?」
皇さんがゴーレムの腕が届く距離まで近づくと、途端にそのゴーレムはバグったような動きになる。
ヘイトは俺に溜まっていて、俺を攻撃しなければならない。
でもその俺の姿を認識できずにいる。
そしてペンダント効果だろう、その皇さんに本能的に近づきたくない。
これら全ての要素が一度にゴーレムへと流れ込み、どうすればいいかの指針を出せず、パンクしたのだ。
何故か足を滑らせてそのゴーレムは地面に頭を強く打つ。
その隙を逃さず、赤星と桜田が攻め立てた。
「しっ!!」
小回りを利かせて胸部を中心に、ダガーで引っ掻いていく。
勿論これで決定打が得られるわけではない。
ただ、何度も何度も同じ部分へと傷をつけていくので、その度に傷の深さは増す。
そしてその傷口を狙うが如く、桜田がハンマーで叩くのだった。
「てやぁぁ!!」
可愛らしい声を耳にしながら、俺はルオと二人で1体のゴーレムへととどめを刺すべく動く。
「ふんっ、たぁっ!!」
叩き切っては殴り、殴ってはまた叩き切るというシルレの思わぬ攻撃適正もあり。
俺の姿が見えるようになる10数秒ほど前で、最初のゴーレムを始末したのだった。
□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆
「はぁぁぁっ!!」
もう1体も手間なく行けると踏んで、更に駆けだすと、リヴィルがあのメタルな球体を攻め立てているところだった。
球体はまるでタコかアメーバのように、その体を細くしなやかにして自在に操り、リヴィルを打ち払おうとする。
それを志木が自身の短剣でカバーし、リヴィルの攻撃の邪魔をさせない。
その志木が、息を精一杯吸い込んで叫ぶのが聞こえた。
「――皆ぁぁ!! コイツを倒すことを最優先にします!! 多分、コイツ、ゴーレム達と合体してます!!」
なっ!?
そう思ってよくよく見てみると、俺とルオが倒したゴーレムの残骸の破片が宙へと浮いている。
そしてそれが次々にメタルの球体へと吸い込まれていくのだ。
リヴィルが何とか右半分位、体を潰し終えていたものの。
そのゴーレムの破片が球体の左半身に集い、あろうことか、巨大な腕を形成していた。
ゴーレム1体の体を形作っていたレンガ片が、全て左腕一本にのみ使われる。
なので、腕一本だけでも凄い迫力となっていた。
「チッ!! ――ルオ、二人で他のゴーレムを受け持つぞ!!」
志木の懸念しただろうイメージ図を、おそらく全員が正確に共有した。
あの球体は、ゴーレム達が合体する核の役割もしてるんだ!!
1分が経ち、灰グラスの効果時間が終わる。
俺は次々に指示を飛ばした。
「赤星っ!! 二人を連れてリヴィルと志木のサポートを!!」
「っ!! 分かった!!」
俺の姿が見え、そしてその俺からいきなり指示が降って来たことに動揺もせず。
直ぐに赤星は動いてくれた。
彼女が先導する形で、桜田と皇さんが駆けていく。
志木と合流し、リヴィルのサポートに当たった。
その分――
「クッ、ヘイトは全部俺が集める! 倒さず、且つあっちに行かないよう頼むぞ!!」
「心得た!!」
シルレの姿をしたルオが力強く叫ぶ。
1体倒して、残りは4体。
そのうち1体は赤星達の奮闘のおかげでかなりボロボロだった。
のっそのっそと地響きさせながら、俺を目指して進んでくるゴーレム達を引きつける。
俺は逃げ、時には反転してルオと共に元気なゴーレムを優先的に攻撃。
そしてまた逃げるという時間稼ぎをしていた。
チラッとあちらの状況を盗み見るに、リヴィルの“導力”を纏った攻撃がかなり有効的に機能していた。
既にあの残骸で作った左腕はリヴィルによって粉々にされており、そこまで粉砕すると、腕として吸収・吸着させることはできないらしい。
そして俺たちは決してゴーレムをもう殺さない。
いや、正確にはあのボスの核心のようなモンスターがやられるまで、ゴーレムを潰さない。
わざわざ4体を先に潰して、奴の四肢にくれてやる必要はないんだ。
「★♂□×♀△☆――」
金属音にも聞こえる意味不明な奇声をあげながら、メタルボールは何とかリヴィルを近づけまいと戦っている。
おそらく5体のゴーレムは全部倒したらアイツの頭と四肢を形成するのだろうが、そうはいかない。
今も必死になってあのメタルな体を触手のように変形させ、リヴィル達を牽制するにとどまっていた。
時折志木が危なくなると、逆井と役割を交代して回復。
赤星達も合流したので、ローテーションみたいにして回復とリヴィルのサポートをしてくれている。
「ふぅぅ、ふぅぅ……」
俺たちも何とか時間を稼ぐ。
かなり息が上がって来た。
何度か危ない場面もあってヒヤッとしたが、ルオが体を張ってゴーレムの攻撃を防いでくれた。
シルレは何でもできるが、基本はタンク・タンカーだというだけあって、かなり打たれ強い。
ゴーレムの一撃をその体で受けてもピンピンしており、随分とタフであることが分かった。
だが、俺たちが頑張ってゴーレム達を殺さず時間稼ぎした甲斐あってか。
「――皆、あとちょっと!!」
今一番リヴィルの近くでサポートを行っている逆井から声が飛ぶ。
おそらく俺が贈ったブーツでの蹴りと。
志木の系列会社が作ったという組み立て式の槍を巧みに使いながら、金属性の触手攻撃を弾いている。
その攻撃の主はメッキが剥がれボロボロになっており、体の面積も随分減っていた。
そして、そんな俺達に朗報となる声が聞こえて来た。
「≪闇よ、全てを食らう、魔牙となれ――≫」
今まで一度も聞いたことのない唱句。
しかし、これほど聞こえて嬉しい声など他にあるだろうか。
俺には恰も女神の囁きの如く聞こえるラティアの声は、しかし。
――奴らにとっては、地獄からの呼び声になっただろう。
「――【デモンズ・ファング】!!」
この広間全てを覆いつくすのではないかという位に大きな闇が、地面一杯に拡がる。
仲間だから大丈夫だろうが、それが発動した時点で、安全策として俺たち全員が広間の端に移動。
一方のゴーレムやメタルな球体は、何故か普通に俺たちの逃亡をスルーしてくれる。
というか、奴らはそれどころではないらしい。
何か巨大な引力に抗えないように、闇の発生源の中央へと引き摺られていった。
そして4体のゴーレムと、メタルボールがほぼ中央で密集すると、突如、闇はその密度を変える。
「――その顎で、全てを噛み千切りなさいっ!!」
ラティアの言葉に答えたかのように、闇が一瞬で大きな大きな口の形になった。
もし上空からみたら、地面に黒い口でも生えたかのように見えるのではないか。
その闇の口は大きく開き、禍々しい牙を見せる。
――そして、一気に閉じた。
音はしない。
だが、一噛みでゴーレム4体の体全てをグシャグシャにしたことが分かる。
メタルの球体は抵抗したのだろう、ボスの核心的存在とあって、これだけでは倒しきれない。
だが、魔人の如き巨大な顎はその牙を休めない。
歯ぎしりするようにその牙を左右に動かす。
球体が磨り潰される。
もう、恐らく跡形もなくなっているだろう。
それでも、闇の牙はなおも咀嚼を続ける。
空の口内を一噛み、二噛み、そして三噛みして、ようやくそれが止またのだった。
「…………わぉ」
何とか俺はそれだけだが言葉を出す。
そうなってしまう程、ラティアの取って置きだろう闇魔法の威力が凄かった。
闇が去り、この広間に入ったときのように視界が元に戻ると、そこにあったのは。
初めて見た者は、元が何だったか分からない程の砂状に、正に粉々にされた後のボスたちだった。
それを目にして、俺たちは実感する。
初めての、複数パーティーでのボス戦が、今、終結したのだと。
ちょっと今後の更新について考え中です。
ランキングやPVなどを自分なりに考察して、日々の更新も可能な限りは頑張って。
そんな中、別に自信を無くしたというわけではないんですが、むしろこれ、もしかして他の作品もやっぱり書いた方がいいんだろうか、と思い始めまして。
まあどちらにするにしても、この作品自体の更新ペースは落とすかもしれません。
私が何かを書き続ける全体としてのペースはできるだけ保とうとは思いますが。
とりあえずまだ悩み中な段階ですので、ちょっと考えます。




