70.8時だよ、全員集合!! ……でもそのために、5時起きしましたけどね。
投稿の時間帯が不安定で申し訳ありません。
今後もこうしてバラバラになることが多々出てくると思います。
ご了承ください。
ではどうぞ。
「そろそろ出るぞ~。大丈夫か?」
昨日、逆井から得た情報を元に、準備を整え終えて。
ニチアサをリアルで見られないくらいの朝早くに、俺達は出発することになった。
靴を履き終え、俺は3人に声をかける。
「はい、既に昨日のうちに終えております」
ラティアは俺と同じく、もう後は靴を履くのみで、側に控えてくれていた。
「ごめん、マスター、ラティア……後ちょっとで終わる――」
リビングと玄関を繋ぐ廊下で、リヴィルが申し訳なさそうな声でそう答える。
「うぅぅ……」
リヴィルと同じく、廊下でリュックの荷物を点検しているルオ。
最近はもう相部屋として定着した二人が揃って確認をしている。
「いや、そこまで焦らなくてもいいぞ? 衣服はこっちが持ってるし」
そう言っておきながら入ってなかったら困るので、一応俺も最終確認。
リュックの中のマジックバッグを漁り、取り出す。
昨日のうちに詰め込んだ女性用のシャツやパンツなどが、どんどん出てくる。
折りたたんであり、色んなサイズを揃えていた。
うん、大丈夫。
ルオの能力との関係上、衣類の備えは大事だと学んだからな。
……ただし、職質と所持品検査を受けたら弁明に苦しむ状況にはなるが。
「うん……」
だから、ルオ達が点検しているのは、最悪無くても困らない物。
それでも身内以外の人と共同で何かするのは初めてになるので、念入りにチェックしているのだった。
そういうわけで、別に焦って急がなくてもいいのだが……。
その後家を出て、まだ人もまばらな時間の電車を幾つか乗り継ぎ。
中間点の駅で、一人、知り合いの少女が近づいてくる。
「――やぁ、新海君。今日はよろしくね」
「ウっす、赤星」
合流して、ホームで次の電車が来るのを待つ。
住んでいる場所との関係で、ここで一緒になり、目的の駅には共に向かうことになる。
近頃すっかり肌寒くなってきた中、赤星は腕や足を大きく出すような運動着の姿でいた。
おそらく部活をやっていた頃に使っていたものだろうが、その格好で寒くないのだろうか。
赤星はラティアやリヴィルにも軽く挨拶した後、ルオを見て一瞬考え込む。
「えーっと……初めまして。赤星颯です、よろしくね」
俺に何か言う前に、ルオへと自己紹介することにしたらしい。
細かいことはあまり気にせず、サバサバとした赤星らしい対応だと思った。
「うん! ボク、ルオです、ご主人にお仕えしてます! 前の週のライブ、とっても素敵でした!」
「あ、見てくれてたんだ! ありがとう、そう言ってもらえて嬉しいよ」
お互いに自分の紹介を終え、軽くライブの話をして盛り上がっていた。
電車がもう少しで来ますよというアナウンスが流れた時、ふと思ったことを告げる。
「――ってかこう見ると普通だな、何の変装もしないのか」
赤星も、逆井や志木と同じくアイドルとしてデビューしてるんだ。
しかも、メンバーの中でも人気はある方。
サングラスや、伊達メガネくらいはしているかと思ったが。
だが俺の言葉に、赤星はわざとらしく傷ついたという表情を作って見せる。
「あ~、新海君、いけないんだ。私こう見えて髪切ってるんだよ?」
「え、嘘……」
全く分からなかったが、赤星曰く、伸びた髪を、お高いところでカットしてもらったらしい。
「そういう小さいことでも、女の子は変化に気づいて欲しいものなのです、新海君」
と言われてもなぁ。
「……ウス」
俺のとりあえずの返事を聞いて、赤星は面白そうにクスクスと笑う。
『――黄色い線の内側まで、お下がりください』
お決まりの独特な声をしたアナウンスが、電車の到着を知らせてくれる。
それを耳にした赤星は、ワザとらしく今思い出したというように手を打つ。
「そうだ、丁度いいや――新海君、微妙な変化に気づいてもらえず、私は傷つきました」
「は? 何言ってんの? それより電車来るぞ……」
そんな玉でもないだろうに。
だがあくまでも、そのとぼけた芝居を続ける赤星。
視界に入るくらいに近づいた電車がブレーキを踏んで速度を落とす。
赤星は、背負っているリュックの横ポケットから何かを取り出し、そして俺に渡した。
「罰として、新海君はこれを受け取らねばなりません!――はい」
「えっ、あっ、ちょ……」
プシュゥゥゥと音を立てて、ドアが開く。
俺に何かを押し付けた赤星は逃げ込むようにしてその中に乗り込んだ。
「マスター」
「……ああ」
リヴィルに促され、仕方なくそれをポケットに仕舞い、3人と共に同じく乗り込んだ。
電車が再び走り出した後で見てみると、それはやはりカードで……。
『赤星颯公式ファンクラブ会員番号:0 新海陽翔』
赤星、お前もか!?
何となく嫌な予感はしていたが……。
□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆
「あはは……ゴメンね、誰かにはなって貰わないといけないって話だから、そうなるともう私は新海君くらいしか思い浮かばなくて」
4駅過ぎた後、目的の駅について降りる。
そして志木から指定された場所まで歩く間、赤星が簡単に事情を話してくれた。
「いや、まあそれならそれでいいが……」
受け取った会員カードを表裏にと返しながら、どんな感じかと眺める。
「うわっ……凄い絵だね……」
「……だな。ってか何で下着姿なんだよ」
覗き込むようにして見ていたルオの感想に、俺も同意する。
赤星のカードには、スポーツ用のものなのだろう下着だけを身に着けた赤星本人が。
表と裏でアングルが違っている。
表に写る赤星はバランスボールに背を預け、少し反るようにして仰向けになっていた。
丁度その形の良い胸が突き出て強調されるような感じだ。
裏は裏で、これまた凄い角度から撮っていると思う。
バランスをとって体を上手く支えるためにか、大きく開脚している。
そのために、股間部分とこちらを向く赤星の顔が直線上になっているのだ。
「あはは……ちょっと恥ずかしいな」
流石に本人もこれには頬を赤めて照れている。
……いや、もっと恥ずかしがった方が良いと思うぞ。
これ、結構際どいし。
「……俺はもうこの会員カードの趣旨が分からん」
何ができるのかも分からんし、写っている絵もそれぞれ違い過ぎる。
「後々意味があるらしいから、良かったら持っておいてね」
「……まあ、分かった」
わざわざくれたものを捨てたりするのもなんだし、一応は全部財布に入れとくけど。
でも本当、何のためのカードなんだろうね。
「――あっ、あれじゃない?」
駅を出て、少し歩いたところにあるコインパーキングに来た。
赤星が指さす方へと目を向けると、黒くて細長い車が一台。
「ハイエースの……ワゴン、だな」
ドアがスライドして開き、そこから皇さんが降りてきた。
「あっ! リツヒ!!」
ルオは、小さな手を振ってこちらだと示す皇さんの姿を認め、一番に向かっていく。
「おはようございます、ルオさん。颯様も、陽翔様も、わざわざご足労頂きありがとうございます」
同じようにして、次に外へと顔を覗かせたのは志木だった。
「フフッ、お疲れ様。さっ、皆乗って」
そう言って車内へと戻っていく。
車に近づいてチラッと車内を見てみると、どうやら席の並びは適当らしい。
一番後ろの4人掛けのところにはアイマスクとヘッドホンという完全防備で寝ている桜田。
そしてその隣に志木、逆井が座るようだ。
「チィっス! ラティアちゃん、おはよ!」
「どうも、リア様、あのご主人様からの――」
「――あぁぁっと!! ささ、早く乗った方がいい、うん! 話は後にしよう!!」
ラティアが変なことを口にしようとしていたので、手早く体を押し、逆井の隣へと座らせた。
……その際「あんっ、ご主人様、そこは――」と色っぽい声を出されたが、気にしない。
「じゃあ……リヴィルちゃん、私と隣に座ろうか」
「……ん、よろしく、ハヤテ」
気を利かせたのか、それとも普通に波長でも合うのか。
赤星はリヴィルの手を取り、その前の2人掛けの席へ。
「あの、えと、じゃあ、ルオさん――」
「うん! じゃあリツヒと隣だね!」
「あ! ……はい!!」
そうして運転席と助手席に一番近い、最前列の2席には皇さんとルオが隣同士で座った。
「ふぅぅぅ……」
それを見届け、俺が外からドアを閉め、助手席へと向かう。
……別に、誰も隣を誘ってくれなくて悲しいとかないし。
ラティア達のことを心配して?
逆井達と打ち解けるよう気遣っただけだし?
それに直接女子と隣とか、キツかったから、むしろ良かったまであるし?
「どうも……ヘタレの新海様」
「おい、従者」
助手席に乗り込むや否や、運転席から失礼な一言を放ってくる椎名さんに、厳しめのツッコミを入れておいた。
□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆
車が走り出して10分程は、ラティア達と志木達とで、互いに打ち解ける時間となった。
……ははっ、俺?
俺は椎名さんと楽しく言葉のドッジボールをしていたさ。
最近この人の言葉の鋭さ、俺に対してだけ磨きがかかってるんだよなぁぁ。
“そのうち刺されますよ?”って、あなたの言葉が既に刺さってますからと言いたい。
「――皆、今日は朝早くからゴメンなさい。そして、来てくれてありがとう」
後ろから志木が、前にも届くようにと少し声を張りながら話し始める。
「ラティアさん、リヴィルさん、そしてルオさんは特にね? 今日で片を付けたいと思ってたから、力を貸してもらえたら嬉しいわ」
……俺は付属物ですかね?
いや、確かに3人に比べたら俺は雑魚だけどさ……。
それに、志木が3人のことを俺を介してでも頼りにしてくれているということだ、悪いことじゃない。
「はぁぁ……」
そんなことを考えていると、運転している椎名さんから呆れたような溜息が返ってくる。
「……何すか?」
「いえ、相変わらず変な方向に考えていそうだな、と」
……あんた前見てるのに、何でそんなこと分かんだよ。
「その御三方の信頼を最も得ているのは誰なんでしょうね……」
「…………」
いや、例えそうだとしても俺が雑魚ということは変わらないことになるんだが。
でもそれを椎名さんに言っても仕方がない。
椎名さん自身も別に返答が欲しくて口にしたんじゃないだろうし。
「……むぅ。椎名が、なんだか凄く陽翔様と通じ合ってる感じです、どう思います、ルオさん?」
「だね……言葉にしなくても分かり合ってるみたいな感じかな? ……リツヒ、元気出して!」
「うぅぅ……椎名は、応援してくれるって信じてたのに」
「――いやっ、ちょ!? お、御嬢様!? 違います! 誤解です、私は御嬢様のことだけを常に考えております!」
流石皇さん。
誤解の方向性が凄い所に行ってるが、あの椎名さんをこれほどあたふたさせられるのは皇さんくらいだろう。
……それはいいけど、ハンドルはちゃんと握って、前を向いてくださいね?
「ゴホンッ――続けていいかしら?」
後ろから、話を戻そうと志木が空咳して見せた。
それで皆口を閉じ、彼女の話に集中する。
「これから向かうのは、私自身が目にしたダンジョンです――颯さん」
「あ、はい、えっと、何?」
ミラーを確認すると、呼ばれた赤星が振り返るようにして志木を見た。
「颯さんに以前話してもらったダンジョン――どういう感じか、教えてもらえる?」
「え? うん、えーっと……」
そこから赤星が語ったのは、俺も現場にいたあのダンジョンのことだった。
つまり、逆井とタクシーに乗って、ボス戦までこなした、あのダンジョン。
志木は特に、赤星がダンジョンを発見したときのことを語ってもらっていた。
ダンジョンが他のダンジョンを食べ、一つへと収束した、その過程を。
「――ありがとう、颯さん」
礼を言って、その後を志木が引き継ぐ。
「そう、ダンジョンがダンジョンを食べる――つまり、2つが1つになるという異常なことが起こった」
車内全員に言いたいこと・伝えたいことが行き渡るように、志木は息継ぎを挟む。
そして、彼女が見たという決定的な部分を口にした。
「でも、私が今回見たのは正に逆――1つのダンジョンが、一瞬にして2つになったところなの」
総合ポイントが30000ポイントを超えたら、後書きは、また別のことを書き始めようかと思います。
そのころには、ラティア達一人一人のことをもっと掘り下げて書いてあげたいといった状況になっているかと思いますので。
つまり、主人公がいない間の、彼女たちの誰か一人の日常に焦点を当てた、超短い小話みたいなものですかね。
まあまだ先の話で、行くかどうかも定かでない話ですがね。
さて――
ご評価いただいた方が1084名になりました!
そしてもう後少しで、評価だけのポイントが合計10000になるところまで迫っております。
ブックマークも8445件と、これまた少しずつですが10000件に近づいていますね!
大台に乗ったら何かしら私のメンタル維持の大きな力になったり、あるいは何かしら心境の変化みたいなものでもあるのかな、と漠然と思っておりますが、どうですかね……分かりません!
不規則な生活面と相まって、メンタル面で不安になったり、あるいは疲労感で今日は休もうかな、と日々流されそうになる中。
ご愛読・ご声援頂けていることが、私自身の大変大きな励みになっております。
本当にありがとうございます!
今後もご声援・ご愛読いただけますようよろしくお願いします!!




