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58.逆井、色々と大丈夫か!? それと……え? ルオ ? リヴィル? どしたし……。

お待たせしました。


すいません、やっぱりこの時間帯は作業率落ちますね。

ただ空いてるのもまたこの時間帯なので……。


申し訳ないです、ではどうぞ。



「――ご主人、朝だよ、起きて」



 ん、んん……。

 あれ……誰だ、何か声がする。

 

 聞き覚えはあるけれど、でも聞きなれない、そんな声が。



「もう……ご主人、“がっこう”、あるんでしょ? 起きなきゃ」


 声の主はその手で俺の体を揺らす。

 布団の上からでも分かる力強さ、しかし俺のことを想ってか激しすぎず優しい手つきだ。


 うーん……これは……誰?



「ん、んぁぁ?」


「あっ! 起きた!? もう、朝だよ。ラティアお姉ちゃん、ご飯作ってくれてる!」


 うっすらとぼやける視界と意識を頼りに。

 何とかベッドの横に立つ人物を見定める。


 


 俺のことを“ご主人”と呼び。

 背は高め、スラッとしていて良く鍛えられている。

 そしてカーテンの隙間から漏れる光を浴び、黄金のように輝く短髪――



「えっ……シル、レ?――ああ、いや、“ルオ”か」



 一瞬目の前の光景が信じられなくてボーっとしたが。

 直ぐにどういうからくりかを理解する。


 

「嘘ッ!? もうバレちゃった!? うぅぅぅ……もっと驚かせると思ったのに――」


 

 やはり目の前の人物はシルレ本人ではなく、それを再現しているルオらしい。

 悔しそうにしているが、本気で俺にシルレだと思いこませようとしたわけではないだろう。


 

 ヒントはあったからな。

 話し方がもうシルレのそれじゃないし。

 

 だがなるほど、シルレのストック自体はまだ残ってたんだな。

   


「……にしても、そう来たか」


 

 ベッドから起き上がりながら、改めてシルレ――へと姿を変えているルオを見る。

 注意して見なければ本人と見間違うくらいに、容姿はそっくりだった。


 ただ細かいことを言うと、目元が少しキツ過ぎる。

 後胸も……本人よりちょっと大きいと思う。



「えへへ……あっ! これ、勿論シルレの趣味とかじゃなくて、ラティアお姉ちゃんに貸してもらってるだけだから!」



 そう言ってシルレ姿のルオは一回転して見せる。

 うーむ……そこを含めて改めて観察すると、違和感半端ないな。

 

 ラティアが普段パジャマとして使っているセクシーなネグリジェ。

 ピンク色のそれを着て嬉しそうに披露して見せるシルレ。

  


 ……うん、もしこれが本人だったら、キャラ崩壊が凄いな。



「でもそっか。その姿ならラティアの衣服でも大きさ的に問題なさそうだな」


 

 シルレとラティアなら、そこまで背丈等に大きな差はないはず。

 今日明日くらいならそれで対応できるだろう。



「うん! あっ、ちゃんと“したぎ”?も、履いてるよ、ほらっ――」



 そう言ってルオは、手触りの良さそうなズボンを膝上くらいまで下げて見せた。

 ――って!?



「ちょっ、何やってんの!? 見せなくていい、ほらっ、直ぐズボン上げて!!」


 ピンク色のが見えたから!

 凄い過激なレースのショーツがばっちり見えちゃってたから!!



「えぇぇ? ラティアお姉ちゃんが折角貸してくれた“勝負したぎ”?なのに……」

 


 ラティアめ……クソッ!

 何て策士だ、こんな方法で俺を朝からムラムラさせるなんて!!



 これは二重の意味で俺を悶々とさせる高度なテクだ。


 一つにはルオという無邪気な対象を介することにより、普段ラティアがこんなセクシーな下着を履いているのかと俺に想像させること!


 そして二つ目には、ルオがシルレを再現していること。

 つまり、シルレのように手の届かない場所にいる相手が、決して身に着けそうにないショーツを履いて目の前に現れるのだ。


 

 恐ろしい……。

 俺はエロいことに関するラティアの才能が心底恐ろしい!



 黒ラティアがほくそ笑んでいる様子が目に浮かぶ。


“ルオは何も知らずに私に協力してくれているんですよ。そして私の掌の上であたふたするご主人様……くすっ、お可愛いこと”



 

 ――くっそぉぉおお!!



「ルオ! 今日中に服は買ってもらえるように、二人に言っとくからな! 安心しろ!!」



「えっ? えっと……う、うん、ありがとう、ご主人!」



□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆




「――ところで、今日時間があるなら、ルオの服とか、必需品、見といてあげてくれないか?」


 朝食後。

 登校するまでまだ余裕があるので、早速頼んでおく。

 


「今日ですか? そうですね……私は大丈夫です。――リヴィルはどうですか?」



 意外にあっさり承諾してくれたラティアは、食後のコーヒーを飲んでいるリヴィルに確認した。

 ……いつも思うけど、オレンジジュースはダメなのにコーヒーは行けるのか。


 

「ん。私も行けるよ。基本私が来た時みたいな感じでいいんだよね?」


「そうだな。お金は置いとくから、そこから使ってくれ」


 生活費、ちゃんと親父たちから振り込まれてたし。


 それに以前紹介してもらって攻略したダンジョンに対して、褒賞金のようなモノまで貰った。

 志木曰く『今後の攻略についても意欲を持ってもらうためにね』ということらしい。


 ま、そのおかげで金銭面ではそこまで心配はないのだ。



「分かりました――ではリヴィル、ルオ。10時くらいに出ましょうか」


「そうだね……私も準備しとくよ」


「え? お買い物!? やったぁぁ!! うわぁぁぁ、楽しみだな、お買い物……」



 未だシルレの姿で飛び跳ねんばかりに喜ぶルオ。

 これからのことを想像してワクワクしている様子が俺にも伝わってくる。



 ……まあ、服を揃えるまでだし、いっか。



□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆



「ふあぁぁぁ……眠っ」


 学校にやってきて。

 いつも通り代り映えしない授業を消化していく。

 


 流石に昨日色々あったので、中々疲れが取れていなかった。

 いつもは眠くてもちゃんと意識は持つのだが。


 今日はこのままだと最悪眠ってしまうかもしれない。



「――えぇぇ、ここは接続詞が入るので、節を作らないといけないから、主語・動詞を……」



 やっべぇ……。

 何か気を紛らわせないと……。



 そう思っていると――



 ――brrr,brrr……



 おっと……。

 マナーモードにしていたスマホが、ポケットで震えるのを感じた。



「…………」


 チラッと教壇を見て、先生が黒板を向いていることを確認。

 素早く机と自分の体の間にスマホを移動。

 何事かと見てみると、メールが来ていた。


  

 ……何だ、逆井か。



『ちょー暇! 久々にがっこ来たらテレビのマッスー一杯でクタクタだし。でも放課後は演劇の練習しなきゃでしょ? マジJK暇なしって感じだし!!』


 ……アイツ今日来てんのか。


 ってか暇か暇じゃないのかどっちだよ。


 

 確かに今日は普段にも増してマスコミのクルーが多かった気がしたが。

 あれっ、“マッスー”って何、マスコミの略?

 

 しかもメールの前後は、やはり意味の繋がりが分からない絵文字が用いられている。

 今回は高菜が何故か成敗されていて、明太子が小松菜と手を結んでいるもの。


 いつも通り意味は分からんが……まあ、眠気覚ましにはいいか。




『お前、明後日の土曜、ライブだろ? 演劇もそうだけど、色々大丈夫なのか。演劇の方は代役立てた方がいいんじゃねえの?』 



 ササっと文字を打ち、送信。

 その後、手早く板書をノートに写……していると。



「……はや」


 1分も経ってないんじゃないか、というくらいの早さで返信が来た。

 あいつ補習とかも大丈夫なんだろうかと心配になってくる。



『ライブの方は多分ダイジョブ! ヤバいのは劇で、マジで演技できない! ってか何でアタシが(たて)ゴンと木田ッチに助けてもらうことになってんの? この役の木田ッチ、意味不明なレベルでイケメンだし。台本が分けわかんないから役も分けわかんなくなってんだけど!!』


 ……ふーん。

 ライブはメールの通り、相当の自信があるらしい。

 

 ただやはり、演劇は本人的にもヤバいと思っていると。

 台本も中身が相当マズいようだ。



 ……確かに、一回代役での通しを見たが、あれはストーリー性などあってないようなものだった。

 逆井達3人、つまり今の時の人を使って話題集めをすることにのみ焦点がいってるだけだし。


 本当に大丈夫だろうか……。



『……とりあえずは目の前のライブに集中しとけ。演劇は最悪、逆井がバックレても何とかなる。内輪の話なんだから』



 簡潔な内容のメールを送り、再びノートへとペンを走らせる作業に戻る。


 当初の目的であった眠気覚ましは功を奏したものの。

 今度は不安や心配で集中し辛くなってしまう。


 そうしてしばらく授業を受けていると――



「…………今回はちょっと間が空いたな」



 3分くらいだろうか。

 逆井の文字を打つ速度からしたら、ちょっと意外な間隔だった。



『りょ! それで、新海、確かライブ来るんだよね? ライブ終わりにさ、何か握手会とか、後ファンクラブ入会の手続きとかも色々やるっぽいんだけど。何なら、さ。アタシのファン1号のん、とっとこか?』

  


「…………」


 ライブ後にそういうイベントがあるってのは聞いてたが。

 でもこれ、どう返信したものか……。


 しばらく考え悩んだ俺は――  






『ロコちゃん、それよりも、ボクはヒマワリの種の方が大好きなのだ!! へけっ!』






 とっとこハ〇太郎っぽい返信にしておいた。



□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆



 放課後。



『件名:いや、ちょ! 唐突に何!? ロコちゃんって誰!? あれっ、新海ってアタシの名前、知らなかったっけ!?』


 

 あの後、危うくバレかけてヒヤッとした俺は電源を切っていた。

 そのまま忘れていたために、今になってスマホを、起動させる。

 

 すると何件ものメールの着信があって、その殆どが案の定逆井のものだった。



「……クソッ、ボケが通じないか」


 

 古いけどさ、ああいうアニメって女の子の方が見てるんじゃないの?

 首を傾げながら、靴箱で靴を履き替え。



 校門を出てメールの内容を確認しておく。



『えーっと……その、さ。アタシ(なし)(あい)って書いて梨愛(りあ)だから!』



「唐突に自己紹介が始まった……」



『秋に生まれたんだ、アタシ。10月の29日生まれでね、で。皆さ、梨って好きじゃん? だから皆から愛される人になって欲しいって感じで、この名前になったんだと思う』


「……何で俺は誕生日や逆井の名前の由来を教えられてんだろう?」


 しかも29日って、もう直ぐじゃねえか。

 えー。

 これ、偶然とはいえ、知っちゃったら何かプレゼントとかしないといけない奴?


 でもこれでもし贈り物したとして“えっ……そんな意図全くなかったのに、重ッ、ってかキモッ!”とか言われたら俺もう立ち直れないぞ。


 


 とりあえず、別のメールを開いてみる。



『件名:あれっ? 新海、えっと、届いてる? もしもーし……』


「いや、電話じゃねえんだから……」


 そのメールは既に昼休みに入った後のものだった。


『件名:あっれぇぇ、もしかして、トイレかどっかで息抜きでもしてる? ニシシ! それ以外にもイケないものヌイてたりして……』


「コイツは何が言いたいんだ……」


 呆れながらもどんどんメールを開いていく。



『件名:……もしかして、せんせにバレた? スマホ、没収されてたり?』


 

『件名:えーっと……新海? 何かあった? そうじゃなかったらさ、返信欲しいんだけど……』



『件名:ごめん、やっぱり重かった? 自分の名前の由来一方的に語る女とか重い?』



「いやだから、お前のメンタルどうなってんだよ……」


 そして最後のメールはつい先ほどのものだった。

 

 添付ファイルがあったので開いてみる。


 すると、トイレ……おそらくは女子トイレだろう便器が映っており。

 そしてその閉じた便器に一枚紙が立てかけられている。

 

 おそらくノートの切れ端。

 そこには『ゴメンね、どう呼んでくれてもいいから! 呼び捨てでも、それこそメス便器とかメス奴隷とかでもいいから!』と書かれていた。



「…………」 

 

 逆井のメンタル状態、本気で誰か管理してやれよと思いつつ、俺はサッとメールを打った。



「『スマン、お前の想像、当たらずとも遠からずだ。先生にバレかけて、ずっと電源切ってた。それと、特に重いとかは思わん。後、土曜のライブ、楽しみにしてる』っと」


 送ると、スマホをポケットにしまう前に逆井からの返信が届いた。

 相変わらず早いな、なら、あの3分くらいの間はなんだったんだろう。


 まいっか。




『件名:もう! 新海、電源ずっと入れろし! もう、もう!! 色々、もう!! ……まあ、ライブは、頑張る』



「ふぅぅ……」


 とりあえず逆井の謎のメンタルの動揺は収まったようだ。

 それを確認して、今度こそスマホを仕舞い、家路につく。




 


 途中、殆ど学生を見かけることはなかった。 

 部活や勉強で残るということもあるだろう。

 

 だが、殆どは来週に迫った学園祭の追い込みのため学校に居残りしているのだ。

 逆井もその一人だろう。


 では俺はどうなのかというと、俺は買い出し専門部隊。

 既に大道具小道具全て必要な物は揃えている。


 というか、この時点でできてなかったらもうヤバいの一言しか出ない。

 

 すでに俺の役目は終わっている。

 何か更に買い足す必要が出てきたら、それは残っている男子の誰かにお鉢が回るだろうさ。

 今までサボってたツケだな。



「ふぃぃぃ……今日は、この後どうするかな……」



 適当に考え事をしながら歩いていく。

 すると、前から見知った二人が近づいてくるのが見えた。

 

 そしてその二人も俺の姿を認めると、笑顔を浮かべ、近づいてくる。

 あれっ、どうしたんだろうな……。




「――どうした、こんなところまで。リヴィル、ルオ」

 

 リヴィルは普段着で。

 そしてルオはルオそのままの姿で俺の前にいた。

 

 

「えっと……買い物はもう済んだんだけどね」


 リヴィルがチラッとルオに視線を向けたので、改めて俺も彼女の体の上から下までを眺め見た。


 黄色いシャツと黒の運動用の短いパンツ。

 下には蛍光色のアンダー、シャツの上には軽く羽織えるパーカーを着ている。 


 身軽に動けそうな服装で、活発な印象のあるルオに良く似合っていた。


「うん!! 服とか、靴とか、色々見て回って、凄く楽しかったよ、ご主人っ!!」


「そっか、それは良かった……」


 ただ単に必要な物を揃えるというだけでなく。

 気晴らしみたいな意味合いもあるからな、女子の買い物は。


「えっと、うん。買い物自体は普通に終わったんだけど、でもそれだけじゃなくて――」


 ああ、そうか。

 何かリヴィルが言いたそうにしてたけど、ちょっと話が逸れてしまってた。


「すまん、で、それがここまで来た理由なんだよな?」


 話を戻して俺がリヴィルにそう問うと、リヴィルは頷き、そしてルオを見た。

 ん? 

 なんかルオがしたのか?


「えっと……ルオ?」 



 今度はルオに話を向ける。

 すると一瞬間が空くも、直ぐに意図を理解したルオが大きく手を上げて答えてくれた。



「あっ、うん!!――ご主人っ、ダンジョン見つけたんだ、ダンジョン行こう!?」 



 …………えぇぇ。

 ダンジョンって、そんな“磯野、野球しようぜ!!”みたいな軽いノリで見つけて行くものなの……?



ハム〇郎……分かる人いるのかな……。


まあそれはいいとして。

次回ダンジョン関連のお話をして、その次にライブの話をして、それで2章は終わりですかね。

ふぅぅ。


感想の返しはおそらくお昼ごろ、また時間が取れそうなのでそこで行うと思います。

ちゃんと全部目は通してますから!

あともう少し、お待ちください!


さて。


ご評価いただいた方が959名に!

ブックマークも8056件!


どちらも着実に伸びております。

停滞せず伸びることを実感できるだけでもありがたいです。


止まるときは本当にピタッと止まりますから……。


丁度このお話を初めて、2か月が過ぎましたね。

ここまで続くとは思っておりませんでした。


今もなおこうして更新を続けていられるのは、やはりご愛読・ご声援頂けていることが非常に大きい要因になっています。


私も少しずつ慣れてはきましたが、それでも自分の努力どうこうだけでモチベーションは中々上がってきませんから。


本当にありがとうございます。


今後もご愛読・ご声援頂けましたら幸いです!

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― 新着の感想 ―
[一言] 今更この辺読んでる自分、ハム太郎見てました(ただし内容は覚えていない模様) 当時は飼い主の女の子が凄く大きくてお姉さんって印象だったのですが、最近改めて見たら普通に小さな女の子なんですよね。…
[一言] > 『ロコちゃん、それよりも、ボクはヒマワリの種の方が大好きなのだ!! へけっ!』 > とっとこハ〇太郎っぽい返信にしておいた。  ロコちゃんが名前を伏せられていないのは不公平だからちゃんと…
[一言] リボ◯ちゃんはケモナー育成機
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