55.君の、この少女の名は――さて何でしょう!! 前半
ふぁぁぁぁぁ(亡霊っぽいため息)。
やっぱり長くなったので前後半分けました。
書けてはいますので、昼前までには後半部分上げておきます。
すいません、おいどん全てのエネルギーば使い切っとるたい、休ませて欲しか(疲れで色んな言葉のごちゃ混ぜに)。
「……えっと……それで、ボクはどうして、ここに来たんだっけ?」
□□□□は彼女として生きると決めてから、ずっとひた走って来た。
彼女自身が言っていた。
『……他の人はボクのこと、あんまりいい目で見ないから』
ドワーフと人とのハーフ。
異種族間に生まれた彼女を快く思わない人がいる。
その存在自体をこの世から全て消し去るなんてできない。
なら、自分が隠れるしかない。
自分を、彼女を守るために。
そのために、それこそ次から次へ、【影絵】を使ってストックを増やした。
そしてキャパシティーの限界値が伸びればまた増やすの繰り返し。
自身に人社会での生活経験などないに等しい。
なので、町から町へと渡り歩き。
少しでも怪しまれたかと思うと、ストックを増やして【影重】で張り替えた。
「……ああ、そうだ……確か、ここの奴隷商の人は親切で、領主さんと親しいから、奴隷になれば……」
ただ、□□□□には異変が生じていた。
人が自らの子供を鍛えたいと思ったとして、誰も赤ん坊に50㎏するバーベルを渡したりはしない。
それと同じように、ドッペルゲンガーも通常はとても簡単な人の赤ん坊などから【影絵】の練習を始め。
そうして徐々に難度を上げていく。
しかし、□□□□はそのような順序・ステップを踏んで成長できる環境になかった。
彼女のストック、そしてその他とても質の低い作りの数人を手に、生きていかざるを得なかったのだ。
通常時間をかけてベースとなるストックを作り。
残り、スペアのストックを4~5、多くても全部で10くらい作るのが、ドッペルゲンガーの中では当たり前だった。
だが、この段階で、□□□□のストック数は優に100を超えていた。
女性のドッペルゲンガーは女性を、男性のドッペルゲンガー男性をストックの対象とする。
つまり、女性だけで100を数えるというのだから、そのストックの多さは推して知るべきであろう。
ただそれで、彼女に記憶の汚染が生じ始めていたのだった。
「あれ……でもじゃあ何で領主さんに会いたいんだっけ……ボク……いや私?」
一番守るべき彼女のストックを守っている間に、ドンドン他のストック数が増えていった。
スマホで通販サイトの衣装を右から左にどんどん指先一つで流し見て行くように。
彼女はあらゆるストックを息つく暇もないくらい次から次へと張り替えていた。
今自分が誰なのか、何を演じているのか、分からぬままに。
「……ふむ、鑑定で弾かれたか……これはもしかしたら何かかなり上位の状態異常かもしれないな」
――あっ、そうだ……今のボク? 私?の体の異変が、状態異常かもしれなくて。
「安心しろ。お前が言う“ドッペルゲンガー”のストックというものが正しいのなら、解決策は用意できる」
――うん、この領主さんが強くて、それで、“聖騎士”で。
シルレと出会った□□□□は、薄っすらと目的を思い出す。
――状態異常にも強いって、聞いたから、だから来たんだった。
「……ゴメンね? お姉さんに迷惑かけちゃうや。とても大事な……ものなんだ。忘れたく、ないんだ」
最近、必死になって思い出そうとしても。
何故か彼女との楽しかった記憶が。
大切な思い出が。
どんどん忘れられていってしまう。
そして、その症状が進むと。
とうとう名前が、思い出せなくなっていた。
「――出来る限り私のことを教える。私のことをストックしろ、そうすれば【光精の恵雨】が勝手にその症状を癒してくれるさ」
シルレは笑顔で説明した。
国内で相当の実力者として認められれば、騎士爵と共に“五剣姫”という特別な地位・領地を与えられること。
そして“五剣姫”には、王家に代々伝わる武器が与えられること。
それは精霊の加護が宿っており、シルレ自身は“光の精霊”で、状態異常を自己治癒する【光精の恵雨】などを覚えたこと。
それらすらも、□□□□が自分を理解する一助だと考えた、シルレの裏のない善意からだった。
しかし、それが――シルレ自身がとても優れている人物だということが、逆に仇となった。
□□□□は、今まで自転車操業のようにして【影絵】を運用し続けてきた。
ストックを作って、キャパシティーの限界が伸びれば、またストックを作り。
それでキャパシティーが増えれば更に次のストックを作り、という風に。
つまり、常にキャパシティーはギリギリだったのだ。
そこに、一気にキャパシティーを食うような大層優れたシルレのストックを作ろうとしてしまった。
ゲームのように、キャパオーバーのスキルを填めようとしたら“必要キャパシティーが足りていません”なんて親切な言葉は、誰もかけてくれない。
誰も止める者がおらず、□□□□自身も、頭が回らない程に思考に靄が掛かり続けていた状態だった。
そのような状況で、彼女がパンクしてしまうのは、不運ながらも自然な流れとなってしまっていた……。
□◆□◆Another View End◆□◆□
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「――要するに……彼女が一番大事にしてる“核”の部分のストックを、引っ張り出せばいいんだな」
『ですね……取り合えず他のストックは何とかして壊して行った方がいいと思います』
俺達はハズアさんから大まかな話を聞き終え。
彼女と別れ、執務室を出た織部・サラと意見を交わしていた。
『壊すって……大丈夫なんですか? その、元々のドッペルゲンガー自身は?』
サラの少し大胆ともとれる言葉に、織部は心配そうな表情をする。
『私も実際に見たわけではないですが……冒険者を雇うお金が無くて、教会の人員だけでモンスター退治しなければいけなくなったことがあって……』
サラはそう前置きし。
その内容を思い出すように、目を瞑りながら話した。
『で、一度色んなモンスターについて調べたことがあるんです。その中で“ドッペルゲンガーは色んな擬きに化ける。擬き全てを倒しきらないと、本体自身は倒せない厄介なモンスター”と、確か記述があって』
「へぇぇ……なるほど」
それはつまり、本体は無事だからストックを潰したい場合は遠慮しなくてもいい、ともいえる。
『うーん……イメージとしては、ストックって、能力を司る仮面みたいなものですか?』
また織部が変な例えを用いだした。
“仮面”って……。
その例えが自然に出てくるって、ブレイブカンナさんはSMの素質もあるんですか?
『例えばですね、付けたら火の超能力が使えるようになる仮面があるとします!』
「……そうだな、つけるとするな」
もうこの例えで行くようだ。
サラは“超能力”という単語を耳にし、頭に疑問符を浮かべている。
俺が付き合わないとダメか……。
仕方なく俺が答えることに。
『その仮面自体は厄介なので、破壊します――すると、どうなりますか?』
「……まあ、素顔になるな」
『ですよね!! じゃあ、破壊された方は今度は風と水の仮面を重ねてつけるとします!』
そもそも顔全体を覆うのか、それとも夜の大人な世界で付けるような主に目元覆う仮面なのかで変わるとも思うが、それでも――
「……まあ、変態になるな」
『じゃなくてっ!!』
……いや、二つも超能力使えるようになるとか、十分変態だと思うんだけど。
でもこの場でそれに言及すると、ブレイブカンナが鬼部さんを召喚するすることになるからな。
流石にそれはやめておこう……。
『もう!! ですから、この考えを進めると、どれだけ仮面を次々に付け替えようと、本人の素顔は最終段階になるまで傷つかないって、そういう例えで言ったのに……』
あっ、織部が拗ねた。
「悪い悪い、別にふざけてるとかじゃないから。えーっと、そうだな……」
本当にふざけている訳ではないことを示すためにも、俺は頭を働かせる。
そして――
「なるほど……“仮面”って例えはある意味的を射てるかもな。或いは、俺ならストックは自分を守るための“殻”か“薄い膜”みたいなもんだと例えるかな」
『はぁ……確かに』
『……なるほど、そうとも表現できますね』
俺の言葉に理解できる部分があったのだろう。
織部もサラも頷いて、自分でも考えを深めてくれている。
『人間社会、とりわけ思春期の青少年なんかそうですが、“誰しも自分が傷つくのが嫌で、自分以外の誰かを演じている”なんてよく聞きますからね』
“演じている”か。
近々学園祭でウチの学年は演劇を選択するクラスが多いから、かなりタイムリーな単語だった。
誰か別人を演じている間に、自分自身が分らなくなる、か……。
「だな……」
二人は今の例えで満足してくれたが。
別の表現ができなくもない。
今の彼女は、要するにスマホや携帯なんかでいう容量満タン状態なのだ。
主要なアプリ・機能は置いておくとして。
どうでもいいアプリやデータ、ファイルを入れ過ぎている。
そのせいで本来の主要な機能に影響が出ているわけだ。
だから、やるべきことは無駄なデータ類の削除・消去。
「うん……大体やるべきことは見えた――スマン、ちょっと今から行ってくるわ」
結構話し込んで時間も遅い。
だが、これを明日以降に持ち越すのもどうかと思い。
俺は今すぐ緊急に対応することにした。
『分かりました……まだ私達は起きていますので』
『ニイミ様、私にも、遠慮なくご相談ください』
「ああ、助かる」
俺は二人に礼を述べ通信を切る。
その後、ラティアとリヴィル。
そして少しだけ落ち着きを見せ始めた彼女を連れて出た。
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すんません……感想の返信も、後半を上げた後にまとめて行います。
今は……寝ます!!
申し訳ありません!!
後半で名前も判明し、解決ですので、後数時間お待ちを!




