51.えーっと……それもはや人間ですか?
何とかキリがいいので、ここまでは書きました。
明日以降は1週間内のどこかで1日休む可能性ありです。
ご了承ください。
ではどうぞ。
「……えーっと、何これ?」
あれから1日経って、日曜の朝。
まだ頭が働ききっていない俺は、不思議な物を目にしていた。
それを指摘すると――
「あ、あはは……」
ラティアは困ったように笑って、チラッと背中を見ようとする。
そう、ラティアの背中に、くっついているのだ。
何がって?
それは――
「…………」
「えーっと、リヴィル、どした?」
サキュバス正装をしたラティアの背中に、リヴィルがしがみついてるのだ。
……しかもラティアの背中はほぼ生まれたままの姿で、胸を隠すトップ部分しか生地がない。
なので、リヴィルはラティアの素肌部分に顔を、鼻を、押し付けていることになる。
……何それ羨まエロい。
「…………(ふるふる)」
そんなリヴィルにどうしたのか尋ねてみるも、ラティアの背中にくっついた顔を上げようとせず。
いやいやと顔を横に振るばかり。
……クッ、単に鼻や顔をラティアの肌に擦り付けて、クンカクンカしているようにしか見えない。
朝から息子が再起動しかねないぞ、これは……。
「えっと……ラティア?」
何か知っているか、と尋ねると。
後ろのリヴィルの動きをくすぐったそうにしながらも、ラティアは小さく頷いた。
「あの……おそらく昨日のことを、気にしているようで」
「……そうなのか、リヴィル?」
「…………(ふる、ふる)」
ラティアの背中に頭のうなじを擦り付けるようにして、自分の首を、縦に動かした。
いや、しゃべらないのかよ。
「そうか……でもまあ、気にしなくていいんだぞ? あれは――」
――ささっ。
……。
「えーっと……誰にでもちょっと恥ずかしいなと思うことは――」
――さささっ。
…………。
「えっ、何で逃げるの!? ってか何このケンタウロスごっこ!?」
気にすんなと肩を叩こうと俺が動くと。
リヴィルはサササッと足を動かし、間に必ずラティアが入るように逃げるのだ。
客観的に見ると、ラティアとリヴィルが2人でいることで、何だかケンタウロスっぽい形に見えてしまう。
合体って、女子同士でもOKなんだな……。
そんなアホっぽいでも意味深なことを考えていると――
「――…………だって、物凄く、恥ずかしい、から」
沈黙が流れ、ようやく蚊の鳴くようなリヴィルの声が聞こえた。
消え入るようなものではあったが、何とか口を利いてくれた。
「……昨日のこと、覚えてるの、か?」
「…………うん。“今夜は寝かしてくれないの?”とか“一緒に寝てあげないも~ん”とか――死ぬほど恥ずかしい」
うわぁお。
あの変わりようで、しかもそれを全部詳細に覚えてるっぽい。
そりゃ本人からしたら恥ずいか。
……っていうか、今の姿勢はどうなんですかね?
その引き締まった綺麗なお尻をプリッと突き出してるわけですよ。
凄くその……二人ともエロい恰好してるんですよ。
そんな体勢をずっと続けてるのも、俺は恥ずかしいと思うのだが……。
「いや、あれはあれで可愛かったと思うけど……」
「……私、もっとクールなキャラのはずなのに。“導士”だし。自分の認識としても、もっとキリっとした感じ、なのにな……」
なるほど……。
客観と主観に齟齬があって、それに戸惑っている、と。
ああ、だからウサギをはじめとした可愛い動物を愛でたい気持ちみたいなのも、他の人に知られると恥ずかしかったのかもしれない。
これ……リヴィルが異世界の英雄の遺物を元に造られたってことと、関係してんのかな?
「――俺は、そんなリヴィルもアリだと思うけど? というか可愛かったぞ、無茶苦茶。な、ラティア」
「はい!! ギャップが大きくて、兎に角可愛いです!! とてもいい武器だと思いますよ?」
それは何の武器なのかな?
ははは……。
それは良いとして。
「マスター……ラティア……」
俺たちの言葉で、心のひっかかりや恥ずかしさが少しでも取れたのか。
リヴィルは隠れるのを止め、ラティアの背中からピョコっと出てくる。
「大丈夫。リヴィルの凛々しくてクールな部分も。実は可愛い動物も好きで――」
「――柑橘系ジュースで酔って、可愛い一面を覗かせてくれる部分も。どちらもリヴィルの素敵な要素です」
俺とラティアが、リヴィルを、リヴィルの在り方を肯定する。
何でもないようなことのようで。
でも、リヴィルには意外と大事なことだと思う。
この子は“導士”であるあまり、他者を導いてあげることは多分得意なんだろう。
でも、自分自身のことについては、まだまだ生まれたてのひよこ同然で。
だから、今、一番傍にいる俺たちが、時として、手を引いてあげるんだ。
「――ありがとう、二人とも……うん。直ぐには難しいかもしれないけれど、ゆっくり、慣れていくから」
受け入れてもらえたという事実に、どこか戸惑いながらも。
はにかみながらそう答えたリヴィルは、やはりとても綺麗で、そしてとても可愛らしかった。
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「邪魔っ――はぁぁぁっ!!」
リヴィルは腕に靄を纏わせた。
瞬時に何色にも変わっていくそれが、リヴィルの攻撃の威力を圧倒的なものにする。
「gigigi――」
丸盾そのものが意思を持ったようなモンスターは、自らが突進することで迎え撃とうとする。
それが3体重なって、盾の層を形成した。
「へぇぇ……まあ、関係ないけど」
――しかし、それでリヴィルの直進を妨げることはできなかった。
ピンと伸ばした手を槍に見立てて、それを真っすぐに突き刺したのだ。
「gagiga!?」
盾のモンスターは真ん中から貫かれ、勢いを殺すこと叶わず。
どんどん突き破り、そして3体全部がリヴィルの腕のアクセサリーみたいになってしまった。
「ふんっ!!」
そして、それ以上抗う力が残っているはずもなく。
リヴィルが腕を引き抜くと、モンスター達は地にズサッと落ちていった。
〈Congratulations!!――ダンジョンLv.13を攻略しました!!〉
「良し、攻略だな……」
いつもの音声を耳にして、ふぅぅと息を吐いて緊張を解く。
「お疲れ様です、ご主人様、リヴィル」
近寄ってきたラティアが労いの言葉を掛けてくれる。
「お疲れ。って言っても、戦闘面は基本リヴィル無双だがな」
今のモンスターも。
全部片づけたの結局はリヴィルだし。
俺はそれまでに走り回って、ヘイト溜めて。
それで一か所に固まるようにしてリヴィルが倒しやすくしただけだ。
兎に角、今回はボスもいなかったし、難なく攻略することができた。
さて、残るは台座まで行って後処理するだけだな。
俺たちはあの後、朝食を食べて紹介してもらったダンジョンに来ていた。
3人目の奴隷について相談する前に、もう一度ダンジョンに来ておきたかったからだ。
どういう部分が攻略において欠けているのか、何が足りないのかの最終確認だと言っていい。
今回はDPへの変換で2700ポイント程を得て、現在63132ポイントとなっている。
【火魔法Lv.1】や【業火】で1500ポイント、それに以前薬草100枚とポーションを10本買って600ポイント使っている。
なので収支としてはそれほどDPが増えているわけではないが、まあこんなもんだろう。
そして“紹介してもらった”と言ったが、それは――
『――えっ!? もう!? まだ連絡を貰ってからとしても3時間経ってないわよ!?』
「……フフッ、嘘だと思うのか、“志木”?」
志木が珍しく驚く姿を見せたので、得意げにそう告げる。
『……いえ、貴方がそんなことで嘘を吐くとは思ってないわ。――分かりました。攻略、ありがとうございます』
依頼主たる“志木”が改めてそう言ったことで、正式に攻略は完了したわけだ。
要するに、これも志木と皇さんが試験的にやっていることの一環で。
ゲームやラノベで良く出てくる、ギルドの前身みたいなものを作ろうということなのだ。
志木や皇さんが。
あるいは志木グループや皇グループが把握している未公開のダンジョンを、紹介してもらう。
俺たちはそれを攻略する。
単純だ。
「おう……じゃあ、拾った物はまた後で椎名さんに買い取ってもらうってことで良いんだな?」
俺は先ほど拾って、今手の中にある、鈍く緑色に輝く石――“魔石”を見せてそう確認する。
『ええ、そういう約束ですから――でも、出来ればふっかけないでね? 資金はあるとはいえ、有限だから』
ダンジョンから出て、家に戻って繋いだテレビチャット。
その画面越しに、志木は冗談を言うようにして笑って見せた。
「ああ分かってる。継続的に買い取ってもらうんだったら、ある程度妥当な値段の方がお互いのためだろう」
頷き返しながら、頭の中でもう一度整理する。
志木達は、未攻略のダンジョンの情報を提供する。
俺たちはそれを攻略。
そして攻略過程で得た拾得物は、俺たちが自由にしていい。
その自由にするという一環で、志木達がギルド的機能の一つ、買い取りを更に行ってもらう。
志木達は志木達で、攻略したダンジョン自体を自由にできる。
発表して手柄にするも、置いておいて後で政争のカードにするも、正に自由。
これでお互いが利益を得られるというわけだ。
「今後……どんどん戦える奴は増えていくっていうか、増やしていく予定なんだろう?」
『ええ……ダンジョンの増え方は異常よ。対抗できる数を増やした方が、あなた達の負担も減るでしょう。人は選ぶけど、国という観点から見ても、その方が得策なのよ』
まあ言わんとすることは分かるし、負担が減るのは大歓迎だ。
要するに、今はどんどん売れる物は売ってくれってことだろう。
「分かった。またこれとは別に、ポーションや薬草類を幾つか見繕っておくよ」
『無理はしなくていいけれど、そうしてもらえると助かるわ』
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「――さて、で、どうだろう?」
夜。
食事も食べ終えてゆっくりした時間。
俺は昨日の話を踏まえて、今後どうすべきかを、ラティアとリヴィルに聞いた。
主に、もう一人購入を考えるのか、考えるとしてどういう人材が必要かを、だ。
「購入資金に余裕があれば、考えてもいいと思います」
「うん、そうだね。増えると賑やかになって、良いんじゃないかな?」
二人の意見は購入に概ね肯定的。
資金的な面も、更に志木達との連携が加速している今、親父たちに頼らなくても大丈夫になっている。
「なるほど……分かった。じゃあ、購入するとして……どういうタイプがいい?」
それを尋ねると、一瞬二人は考える間を挟む。
先に口を開いたのはリヴィルだった。
「――今日のダンジョンで、やっぱりはっきりした。買うならアタッカーを担える人が、もう一人欲しい」
そのリヴィルの言葉に、ラティアも直ぐに同意する。
「あっ、それは私も思いました。火力という面では、リヴィルがいれば十二分でしょう。ですが――」
そして、それを引き継ぐように、リヴィルが何かを思い出しながら口にする。
「うん……“手数”が問題。あのボス戦――ゴブリンみたいに数が一気に押し寄せてくると、一瞬じゃ片付けられない」
「私の魔法は、詠唱がいりますから。やはりその間にご主人様に皺寄せがいくのがどうしても……」
「私もそれが一番嫌。どれだけ一直線にボスを攻め立てようと、他にも数がいたら、マスターに一番負担が行く。特化してる必要はないけど、アタッカーはやっぱりいる」
うーん……なるほど。
あんまし俺のことは気にしなくていいんだけど。
でも二人がそれだけ俺の体を気遣ってくれてるってことか。
兎に角、要するにアタッカーを担える人材、と。
「――あっ、でも回復系統の能力を使える人も、俺的には来て欲しいんだよなぁぁ……」
薬草やポーションがあるとはいえ。
俺が万が一に何かあった場合、治癒か回復魔法かは分からんが、それをできる人が別にいてくれると心強い。
その想いを伝えると、二人は頷いてくれた。
「……確かに、そうだね」
「はい……二人体制だと、安心感がグッと変わります」
なら……アタッカーができて、なおかつ回復系統にも通じてる人材か。
「それと……マスターだけじゃなくて、ラティアの負担も減らしたいし、可能であれば攻撃魔法も使えたらなおいい、かな?」
「ふむふむ……じゃあアタッカーで、回復能力を備えていて、それと魔法攻撃も覚えてる、っと」
何だか段々候補の現実味がなくなってきたな……。
「――あっ、すいません、このような要望をしていいのかどうかわからないのですが」
「ん? いや、遠慮なく言ってくれよ?」
今後一緒に暮らしていくかもしれないんだ。
今のうちに不安や懸念は話し合っておいた方がいい。
そういうと、ラティアは安堵したように話し出す。
「そうですね……あの、前提として、次に購入するとして、女性、なんですよね?」
「あっ、それは私も気になってたんだけど――」
リヴィルもラティアの疑問に同調した。
「――私……できればマスター以外の男と共同生活は、したくないな」
「その、私もサキュバスとしての特性や【チャーム】があるので、ご主人様以外の異性はちょっと……」
「ああ……そうか」
まあそもそも奴隷“少女”を前提として話を進めていたので、特にこの件に関しては問題ないのだが。
「――じゃあ……纏めると……近接戦闘が出来て?」
「――マスターとは別に、回復魔法か、それに類する能力を扱えて……後、攻撃魔法も使える」
「――そして、ご主人様にお仕えするんです、容姿に優れた女性の奴隷、ですね!」
おぉぉぉ……なるほど。
――何それ、どこのラノベの万能チート系ヒロイン?
次話、あるいはその次、おそらく3人目の少女が初登場!(多分)
そんな沢山の要望を満たせて、なおかつ物語が破綻しないくらい都合のいい少女なんているのだろうか!?(いやいるまい 反語表現)
ということで、過多な期待は禁物です!
ごゆるりとお待ちください。
それと、体力殆どを生贄に捧げて、今話を召喚しました。
なので、感想返しは次ターン以降の召喚をお待ちください……。
すいません、明日の昼くらいには何とか時間が取れると思いますので、折角送ってくださった方々には申し訳ありませんが、今しばらくお待ちを!
後、どうでもいいかもですが、ラティア関連で調べ物してたら、体力にはアルギニンがどうも良いらしいです。
1kgのパウダーを通販でポチリました。
今後体力面が改善されればもう少し書く面がマシになるかも……。
さて――
おおぅ!?
896名!?
あとちょっとで900名ですよ!!
一気に来ましたね……。
ブックマークは7763件!
惜しい、7777までちょっとだった!
少しずつでも日々ご声援・ご愛読頂けている方が増えているとの実感が、作者の活力になります。
ありがとうございます!
今後もご声援、ご愛読いただけましたら幸いです!!




