表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/416

49.“①リヴィル、酔う②ラティア、早とちり③織部、カロリーならぬ関心ゼロ”の3本でお送りします!

来週もまた見てくださいね、じゃんけんポンッ!!

うふふふふふ……。


――冗談です、次話が1週間後ということは流石に無いと思います。

ではどうぞ。



「……ただいま」


 椎名さんには、近くのコンビニで降ろしてもらって。

 俺はそこから考え事をしながら、歩いて帰って来た。

 

 逆井と、主に織部のことだ。

 立石は……まあいいだろう。


 

 兎に角、もう一度織部には意思確認をしておいた方がいい。

 織部の存在を伝えるのか、それとも現状維持か。




「――あっ、ご主人様」



 リビングから顔を覗かせたのはラティアだった。

 ただ、少し困ったように眉を寄せており、俺の帰りを確認してホッと息をつく。



「……何だ、何かあったか?」



 今日は一人で攻略済みダンジョンへ向かった。


 そしてそれ以降も。

 用事があったために、二人は一日中家で寛いでもらっていたのだが。



「それが……」


 ラティアは何やら言い辛そうに視線を、俺とリビング内へと往復させた。

 ……中で何か――






「――へぇぇ……マスター、帰って来たんだぁ」



「……リヴィル、か?」

 

 ラティアを避けるようにしてリビングから顔を出したのは、リヴィルだった。 

 ただ……どこか、おかしい。



「うん、ふふふ……マスターの、マスターだけのリヴィルだよ~……えへへ」


「…………」




 ――何か、リヴィルが壊れてる。




 頬がほんのり火照っていて、目は焦点が合っていない。

 足もどこか千鳥足のようになっており、見ていて危なっかしかった。



「あぁぁ、リヴィル、フラフラじゃないですか……ほらっ、しっかりしてください」


   

 ラティアが慌てて肩を貸して、転んでしまわないよう介抱する。


 ……ってか。

 “介抱”なんて表現が当てはまるってことは……。  




「――もしかして、リヴィル、酔ってる?」


「はい……一切アルコールは摂取していないはずなのですが」


 親父たちがいないのだ、家にアルコール類を購入できる人間は誰もいない。

 それに二人ともお酒は飲まないはず。


 なら、ラティアの言う通りだとすると――



「も~う! マスターさぁぁ、帰ってくるの遅くない? 一緒に飲もうと思って、折角ジュース買って来たのにさ……フンッ」


 虚ろな目をしながらも、酔ったリヴィルは普段では考えられない程に饒舌だった。

 しかも甘えるような声で、可愛らしく頬を膨らませてだ。

 

「いや、その、悪かった。えっと……ジュースってのは?」


 俺が尋ねると、意外にも反応はきちんとしてくれるようで。

 リヴィルはラティアを促して一時リビングへ。

 

 そして、戻ってくる。

 ラティアに回している方とは反対の腕に、瓶ジュースを一本、リヴィルは手に携えていた。




「…………」


「ふ~んだ、一緒に飲んでくれないマスターなんて知らないもん、一人で飲んじゃったもんね~! フフッ」


 子供のように拗ねては、突然笑ったりと忙しいリヴィル。

 だが、俺はその手の物を見て、衝撃を受けていた。








 ――オレンジジュース、だと!?








「えっ、嘘っ、リヴィルって柑橘系ジュースで酔っちゃうの!?」



 あの普段凛としていて。

 滅茶苦茶クールなリヴィルが……。


 

 お子ちゃまご用達のオレンジジュースで!?


 確かに“○○だもん!!”とか言っちゃってるリヴィルなんて新鮮で物凄く可愛いが、その原因もまた衝撃だぞ!!


「……すいません、どうやらそのようで。私も全く気付きませんでした」  


 どうりで、ラティアが困惑しながら俺の帰りを待つはずだ。

 これはどう反応すればいいか分からん。


 

「フフッ、フフフ……知ってる、マスター? “酔ってる”とかいう人が酔ってるんだよ? だから私、酔ってないんだ、実は。むしろマスターが酔ってる。フフフ……」

 

「いや、そんなツッコミ待ちのセリフは良いから。――リヴィル、もう今日は寝た方がいい」


「そうですよ、足取りも覚束ないじゃないですか……」


 二人掛かりで説得すると、リヴィルは一瞬ボーっとして、ワンテンポ遅れた反応を返す。



「……今日マスター、一緒に寝るの? フフ、それとも今夜は寝かしてくれないのかな」


「…………」


「フフッ、嘘で~す! ジュース飲んでくれなかったマスターとは、一緒に寝てあげないもーんだ――」


「ほらっ、リヴィル、上に――ご主人様、失礼します」


 ラティアが肩を貸しながら、何とかリヴィルを二階へと運んでいく。


「お、おう……頼んだ」


 リヴィルのテンションの差だとか、ギャップに圧倒され、俺はそれだけを何とか告げた。   




 

 ……酔った人は本音が出やすいというが。

 あれも、全部リヴィルの思っていたこと、言いたかったこと、なのだろうか。



 


「……偶には、オレンジジュース差し入れもアリ、だな」


 

 酔ったリヴィル、可愛かったし。



□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆



「「ふぅぅぅぅ……」」


 ラティアと二人で、長い息を吐く。

 あの後、何とかリヴィルは自分の布団に入ってくれた。

 

 暴れたりとかはなかったが、寝る寸前に――

 

『……マスターは? マスター手、繋いでくれないの……?』

 

 とまるで幼子のように不安がってグズりそうになった。

 なので、寝付くまで手を握ってやり、ようやくさっき、安らかな寝息を立ててくれたところだった。


 

「お疲れさん。まさかリヴィルにあんな一面があるとはな……」


「ですね……まあ可愛らしい一面、でしたが」


 先ほどのリヴィルの寝顔を思い出してか、ラティアは頬を緩めた。


 

「ま、だな。――ところでラティア、これからなんだが、時間あるか?」


 丁度織部と連絡を取ろうと考えていたのだ。

 織部と顔合わせも済んだことだし、ラティアも前回の件で頑張ってくれたからな。

 

 一緒にいてくれた方がいいだろう。

 そういう意味で声を掛けたら――

 


「え……あの、えっと、ご主人様、それはその……」



 何故か、ラティアはモジモジし出す。

 えっと……。



「何か予定とか、あったか?」


「いえいえ!! そ、そんなもの、あろうはずがありません!! はい!!」  


 食い気味で、物凄い勢いで首を横に振る。

 別に嫌だったら断ってくれてもいいんだが。

 

「じゃあ、一緒に、頼めるか?」


 そう言葉にする。

 するとラティアは、今まで見た中でも一番じゃないかと思うくらいに顔を綻ばせた。

 そしてすぐにハッとなり、何やら独り言をブツブツ呟き出す。




「気を引き締めないといけません、いきなりがっつくとはしたないサキュバスだと引かれます……先ずは口で、次に胸、足と順序を追って、そうして最後に……」



「…………何か良く分からんが、じゃあ行くか」 


 話しかけて良いものかどうか迷ったが、声をかけるとすぐにラティアは我に返って恥じらった。



「……初めては、お風呂に入ってから、と思ってましたが……お互いの匂いを感じ合いながらも良いですね」



「…………」


 何か勘違いしてないだろうか。

 まあ、直ぐにわかることだし、いっか。









『――あれっ、今日はラティアさんだけですか? リヴィルさんは?』


「申し訳ございません、カンナ様……今、リヴィルは寝ています」


『……何か様子おかしくありません? 新海君、何かありました?』


「……いいえ、“何も”ありませんでしたよ? ええ……“何も”無かったんです。カンナ様と連絡を取るために、だったんですからね」


 ……ラティア、“何も”という部分、物凄い強調してるな。

 

『えっ、これ私が悪い感じなんですか!? 何もしてないと思うんですけど!!』


「ですね、“何も”無かったんですよ。ですから悪いのは私の早とちり、早とちりですよ……うぅぅ」


 今度は自己嫌悪気味に俯いてしまう。

 ……本当に、今日は二人とも何だか落差が凄いな。 


『ええっと……ラティアさん、一度落ち着かれては?』


「……そうした方が、いいでしょうか――ご主人様」 

 

「あ、ああ……先に風呂でも入って、ゆっくりしてきたらいい」


「分かりました……失礼します――ぅ~~~!!」


 ラティアは数歩だけゆっくり足を動かした後は。

 火が出るのを隠すように顔を手で覆って、一気に部屋から出ていってしまった。




 しばらく、一人になった自分の部屋と、あちら側で沈黙が続いて。



「えーっと……悪いな、ちょっとドタバタしてて」



『……いえ、そちらもそちらで。色々あるんですね……』  



 ちょっと気まずい雰囲気が流れた。

 



□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆



「――って、わけだ。逆井、結構参ってたぞ?」



 俺は、つい先ほどまで乗っていた車内での会話や、その後の様子を手短に話した。


『うーん……そうですか』


 流石に織部も即答はできずに、唸るように考え込む。


「まあ、今すぐに結論を出せということじゃない。織部に一応伝えておこうと思っただけだ」


 できればちゃんとした意思も聞いておきたい。

 ただ今話して、それで今この場でそれを求めるというのも酷だろう。


 現状維持にしても、別の結論を出すにしても、多少考える時間を置いた方がいい。



『……そう言っていただけると助かります。基本的には今の状態を維持しますが、少し、考えさせてください。梨愛(りあ)は……大切な親友ですから』


「……分かった」


 まあ、今のところはそれくらいが妥当なところだろうな。


「……それで?」


『……はい?“それで”というのは? えっ、今の回答じゃダメですか?』


 あれ? 

 何か今日は話が噛み合わないことが多いな。


 えっと――


「いや、そうじゃなくて。お前の大事な幼馴染の方は、どうすんだ?」


 俺がそう告げると、固まったようにポカーンとする織部。 

 一瞬DD――ダンジョンディスプレイの不具合を疑ったが、そうではなく。

 

 本当に織部自身が何を言われたのか、分からなかったらしい。



『えーっと……何で私に聞くんです?』


「…………」



 今度は俺がポカーンとする番だった。

 ……え、どういう意味?


 俺、今何かの謎かけでもしてる?


「……“何で”というのは、その、どういう意味だ?」


『だって、それ、私が何か決断・判断することなんでしょうか……』


 織部が困ったように答えを返してくれたので、ようやく少しだが、どこがおかしいのかがわかり始めた。



「……いくつか質問して良いか――ああっ、いや、答えたくないことなら勿論答えなくていい」


 そう前置きすると、織部は軽くため息を吐いて首を振った。


『はぁぁ……私と新海君の間でしょう。今更答えられないことなんて、もうないんじゃないですか?』 


「……まあ、確かに、そうだな……」


『誰かさんは、私のスリーサイズも、変身したら卑猥な衣装になることも、全部知ってますものね』


「………さて、質問を――」 


 それ以上発展させたらお気に入りの下着・肌着や、洋服の話にまで飛び火する。

 なので、俺は素早く話題を変えた。


『……逃げましたね』


 こういう場合、スルーが一番。


「えっとだな……織部、一応確認するが、立石とは幼馴染なんだよな?」


 一番前提の前提な質問なんだが。

 それでも織部は即座に首肯せず、渋い顔をして唸る。


『うーーーん……どうなんですかね。小学校の3年生くらいまで、家が近かったんです』


「なら、幼馴染じゃないのか?」


“幼馴染”の明確な定義があるわけじゃないが、普通に肯定していいんじゃないのだろうか。


『“幼馴染”、だとは思うんです。でもそこまで親しかったわけでもなく。引っ越して、それでたまたま高校で一緒になったんですよ』


 おおう。

 王道展開じゃないか。


 それで、久しぶりに会った幼馴染の男の子がカッコよく成長した姿にときめいたりなんかしたりして――。


「……何だ、何かしっくりこないのか?」


『“幼馴染”という属性は肯定してもいいとは思うんです。ただ、今はもうほぼ赤の他人レベルなんで……どう言えばいいんですかね』


 ……何となく、言いたいことが分かって来た。


「――要するにこうか。幼い頃にお互い接点はあったから“幼馴染”という言葉自体は当てはまる」


『……そうですね』


 俺の要約を否定せず、先を続けてくれという風に頷く。


「でも今は、特に接点はない。だから今も親しいようなニュアンスで関係性を語られるのは何か違う、と」


『……ですね、そう言う感じです』


「はぁぁ……なるほど」


 肯定を得られて、俺は胸の奥から来るくらいに、深く息を吐いた。





 ――ヤバい。



 

 何がヤバいって、織部が抱いている印象が、だ。

 いや、この表現は適切じゃないか。


 織部が正も負も、どちらの印象も殆ど抱いていなかったのがヤバい。



 

 俺が思ってた程、織部の中での立石の存在感が大きくなかったのだ。

 ってかほぼ0なまである。


 うっわ、これじゃあ何か俺が恥ずかしくなってくるじゃないか。


 織部のことは今までそう短くはない期間見ているからな、照れ隠しでもツンデレでも何でもなく。

 これがマジの反応なんだということがわかるのだ。


 

 何だよ、“織部、お前の大事な幼馴染には、ちゃんと言わなくてもいいのか?”って。

 俺がアホみたいじゃないか!



「でも、その……あっ!!」



 俺は思い出したようにスマホを開く。

 そして先ほど見た記事を検索。


 そうそう、これこれ。

 えっと――



“――アイツはどこかで今もまだ生きていて、俺の元へと、帰ろうと頑張ってる、そんな気がするんです。アイツが帰ってきたら、一番に先ず、抱きしめてやって、それで、その後、言えなかったこの想いを――”



 これだよ、これ!!

 ってか俺が必要以上に配慮した大本の原因はそもそもお前じゃねえか!!

  

 何か心が通じ合ってるっぽいセリフ言ってるから、てっきりそういう間柄なのかと思うじゃん、普通!



 えっ、これむしろ“死人に口なし”を逆に利用してない!?

 織部が生きてると信じてますよ、とか言っといて織部いないし、適当言っても大丈夫だろ、みたいな。

 

 いや……流石にそこまで腹黒くないか?

 

 じゃあ……単にナルシストなだけ?


 どっちもどっちだな――



『――新海君、それ、何を読んでるんですか?』

 

「……なあ、織部、お前こっちに帰ってきたとして、その時、一番最初ってどこに行く?」


 ちょっと確認せずにはいられなかった。


『何ですか、藪から棒に……えっと……普通に自宅に――あっ、でもそれだとちょっと家が大騒ぎになりますか……』


 俺がふざけて聞いてるわけじゃないと分かってくれて、織部は真剣に考えてくれていた。

 ……つまり、この回答も、織部の本心。


 マジなのである。





『――そうですね、しばらく様子を見るために、新海君の元にお世話になるんじゃないかと思いますが』


 ……Oh Jesus!!


「…………ちなみに、幼馴染の元には?」


 最後の希望をぶつけると、なぜか眉をひそめられた。



『えっ、何でですか?』


 ……これはアカン。

 この記事、見せたらアカン奴や。


『――あっ、私がお邪魔すると嫌なんですか!? いいじゃないですか、ラティアさんやリヴィルさんと一緒に、私も少しくらい匿ってください!!』


 何を勘違いしたのか、織部は必死になって言い募りだした。


「いや、そうじゃなくて――」


『あれですか!? 新海君は奴隷少女じゃないとお断りなんですか!? いいですよ、分かりましたよ! 異世界攻略して戻る場合は、奴隷になって新海君に買われて戻るルートを選べば――』


 また変な方向に暴走し出した織部。

 この場に今、それを止めてくれるサラはいない。


 

 そう、思っていると――




『――ほう、奴隷の少女をご所望、かな?』





 画面の外から、知らない女性の声が入って来た。 

今現在確認した限りでは……。


881名の方に、ご評価いただきました!

ブックマークの件数は……7681件、ですね!


ふぅぅぅ……。


夜に書き始めて、そうして今のように書き終えて投稿する時にはいつもクタクタなんですが。

それでもこうして堅調に増えていることを確認できると明日以降もまた頑張る気力みたいなものが出てきます。


本当にありがとうございます!


気力の湧きも増すかと思います、ご声援・ご愛読を今後も頂けましたら、幸いです!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 相変わらず日常パートはほのぼのしていて読んでいて癒されます。 異世界の少女と共同生活を送るうえでのハプニングに新海が振り回されるのも面白いです。 [気になる点] 今回、リヴィルが酔ったよ…
[気になる点] リヴィルには色々な種類のフルーツジュースを飲ませてみたいものです [一言] 立石君、主人公補正が無い結果がこれだよ!(無慈悲)
[一言] >  ……これはアカン。 > この記事、見せたらアカン奴や。  どうしてそこでやめるんだそこで!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ