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45.織部っ、無事か!? 色んな意味でっ!!

一応後半部分になります。


ふうぅぅ。

よかった、一度で終わって。


……2話に分けはしましたが、今回の投稿だけで終わらせましたので、勘弁してください。

ではどうそ。


「――では、ペットボトルに、これを詰めていきましょう!!」


 家に戻ると。

 風呂場では既に、ラティアが殆どの準備を終えていた。


 

 一杯に溜められた湯には、リヴィルが【風魔法】で切り刻んだ100枚の薬草が漬けられていた。



『≪風よ、一陣の刃となれ――≫【ウィンド・スラッシュ】!!』



 目には見えない刃が上手くコントロールされ、束になっていた薬草が一瞬で半分に裂かれた。

 その断面から、青緑の体に良さそうな液体が染み出る。


 それが200ℓはある透明のお湯を、薄っすらと緑に近い色へと変えた。


 当初、このお湯自体を『ポーションⅠ』だけで賄おうかという話が出た。

 だが、それだとかなり現実的に厳しい問題があったのだ。


 1つポーションを『Isekai』で購入するのには40DPが必要。

 ポーション1本で大体200ml。

 200~250ℓあるのお風呂一杯を満たすとなると、単純に考えて1000本ポーションを買わないといけない。

 すると、DPにして40000ポイント。

 


 別の観点からも、問題があった。

 つまり、瓶の蓋をわざわざ開けて、それを1000本移し替える手間が酷くかかる。

 

 それらを考えて。

 

 ポーションって、元々は薬草の成分を抽出して作ったものだよね、との話に。

 それで、俺たちは代替として薬草を使い、ポーション自体は10本入れるだけにとどめたのだ。 




 そして、俺たちが買ってきた『お風呂で簡単! スライム風呂』を入れ、かき混ぜれば――



「ああ……正に『ポーション・ローション』だな――よし!」

 


 ラティアが湯船に入れた手を引き上げると。

 その指先から滴り落ちる粘性を持った水分はトロットロで、ちょっとやそっとじゃ拭えないしつこさが感じられた。




「うん、じゃあ、私とラティアが入れるから、マスターはそれを、二人にお願い」


 リヴィルは家にあった空の2ℓペットボトルを手に取りながら、そう言った。



「おう!」



 対する俺は、未だ繋いだままとなっているDD――ダンジョンディスプレイを手に持ち、織部達へと転送する手続きを担うことに。



 これで、行けるといいが……。








『――言いたいことは分かります。ラティアさんの説明自体も納得できるものでした。ですが――』


 画面前の織部は、メロンジュースのような色の液体が入った2ℓペットボトルを手に。

 物凄く嫌そうな顔をしていた。


『……カンナ様、今は不満を言っている場合ではないかと』

 

 サラが、別の一本を手に取り、不満を漏らす織部を諫めた。



 既に5本分――計10ℓ分のポーション・ローションをあちらへと転送済みだ。

 

 足りなければ何本でも送ってやる。

 そういう意味が込められていた。


 ローション自体が、魔法などの余波で吹き飛ぶ対策のつもりだが。

 それでも消し飛ぶこともあるだろう。


 なので、今後必要とあれば何本でも、それこそ200ℓ分が無くなるまで送ることができる。



 ただ、空のペットボトルの方が無くなってしまいそうなので、リヴィルが近くのスーパーへと走って行ったが。


「ご主人様、また3本追加です。ここに置いておきますね?」


 ラティアがバスタオルで拭った3本の2ℓペットボトルを俺の近くに置いてくれる。


「……織部、スマンが俺たちができることはサポートだけだ。実際に一緒に戦ってやれない」


 また浴室へと戻るラティアの後ろ姿を見送りながら。

 俺は織部に申し訳なさ一杯にそういった。



『――ブニュ? ブニュッ、ニュニュ……』



 画面からは遠い所にいるからか、あの大化けナメクジは少し小さくなって、未だ二人を探している。



『……分かってます。新海君たちには凄く助けてもらってます。感謝してもしきれません』

 

 織部は頷き、そう返しながらも――







『でも仕方ないじゃないですか!? なんで溶けたこんなエッチな服装の上に、更にローションを自分から被らないといけないんですか!?』


 




 不満をぶちまけていた。






『新海君、っていうかラティアさんとリヴィルさんも!! 私をド変態の痴女か、メス豚か何かかと思ってませんか!? ローションを浴びて喜ぶ性癖とかありませんからね!?』


「いや、それは分かってるけど――」


『“分かってる”!? 私が“ああ、温かいローションか、それも新海君の心遣いが感じられて嬉しいけど、触ってヒヤッとするローションも一回試してみたいかも……”なんて思ったことをですか!?』


 ああ、アカン。

 暴走し出した。



『……ニイミ様。すいません。私が何とかしますので――』



 苦労人感があるサラが、自ら率先してローションを頭から被り出した。

 タプタプと落ちていく液体は、確実にサラの服や体表を濡らしていく。



『んっ……あっ、凄い、ヌメヌメしますね……』


 そして画面越しに、サラは自分の体全体に行き渡る様に、手でローションを広げ、塗っていく。

 特に大きな胸の部分を、服の上から何度も何度も撫でる様は――



『――もう! 私も被ればいいんでしょう! 良いですよ、ローション!! 全身に浴びますよ!!』


 

 何か声を抑えながらも自棄クソになった織部が、ペットボトルを一気に二本も開封。

 そしてビールかけでもするかのように、二本同時に頭から浴び始める。


 数秒後には、織部の全身もサラのように、いやらしいテカリを帯びていた。



『これ……防御のためというのは分かるんですが、武器、握れませんね?』


 サラは自分の体を見回すように視線を動かした後。

 自分の両手の親指を、他の指をなぞる様にしてからそういった。


『サラが心配する必要はありません!! 直ぐに倒してきます!! その間隠れるか逃げるかしててください!!』


 これまた自棄気味の織部が立ち上がると、自分の武器の一切を地面に置いてあのボスに向かっていった。

 両手には2本の2ℓペットボトルを構えて。



「……大丈夫なのか、あれ?」


『……おそらくは』




 二人で織部を見送る。

 とりあえずあちらのペットボトルを補充すべく、傍にある10本を追加で転送しておいた。


 相手も織部の存在に気づき、魔法を発動する。


 あの8つある目が厄介なのは、他の目が行動している間に一つの目が詠唱すること。

 目一つ一つが詠唱を担えるので、一つでも空いた目があればその目が行動してくれる。


 

 つまり、最悪7つ同時詠唱をしながらモンスター自体も動き回ることができるのだ。

 加えて、動きを止めるならば、8つ同時詠唱も可能ということに。



 なので、織部がその魔法対策ができていなかったらと思うと、ゾッとする。


『ブニュゥゥゥ!!』


『――ふんっ、魔法なんて、何度やろうと無意味です!』



 突進と共に発動した炎系統の魔法を、織部は難なく光の壁で防いで見せる。

 中にはわざと素通りさせて、その濡れた白い手袋で吸収して見せたりもした。

 その際――


『ほらっ、さっさとあのいやらしい液体を吐いてみてはどうです!! ほらっ、ほらっ!!』 


 そんな煽りを告げながらも。

 自らはペットボトルを手刀で切り裂き、中身を浴びる。



 おいおい……自分がどんなセリフ吐いてるのか、分かってんのかアイツ。



『ブニュウ! ブニュ――』



 その言葉に応えるように、ナメクジ野郎は口と思しき部分から透明の液体を吐き出した。

 織部はそれを確認し、作り出した壁を消し去り、あえて受けてみせた。


 主に左腕にかかったそれは、何かを溶かすような音を発することはない。



 流石に俺も一瞬何かの間違いで、織部自身が溶けてしまわないかと心配になり。

 うっ、と目を逸らしそうになる。



 だが、そうなる前に――




『ふっ、ふふふっ……溶け、ませんでしたね』





 織部の不敵な笑いが、場に響き渡る。




『服を溶かされ! ローションをなみなみと浴びて!! 挙句モンスターの体液まで自分からかかって見せたんです!! もう……限界です――サラッ!!』


『ッ!! ――はいっ!!』



 両手に今あるペットボトルをできるだけ抱えて、サラは避難地帯を飛び出す。

 そして織部と合流すると、それらを全てその場に置いて、事前の話し合いの通り逃げに徹した。




 

『フフフフッ……これから入るのはあのモンスターの体内、ですか……もうお嫁に行けませんね』



 あれだけ凄い【光魔法】を無詠唱で使って見せたにしては、光のない瞳で何かを呟く織部。

 

 ……うん、大丈夫。

 今の織部を受け入れてくれる人は必ずいるさ。



 そんな適当な感想を抱きつつ、俺は立ち上がり、その場を離れた。







「――ふぅ、ただいま。ペットボトル、一杯譲ってもらったよ?」


 丁度玄関から、戻って来たリヴィルと鉢合わせる。

 その手にはゴミ袋に入った大量の空のペットボトルが。

 

 浴室に行くまでに簡単ながら話を聞くと、どうやら丁度リサイクル回収に出そうとした人がいて、譲ってもらったそうだ。

 それを見ていた他の人が自分も、俺も、と貰っていくうちに、これほど大量になったと。


「何か男の人からかなり貰ったけど……男の人って、そんなに独り暮らしでペットボトル使うの?」   

「……さあ?」


 単にリヴィルに良い恰好をしたいだけの気がしないでもないが。

 そんな話をしつつ、風呂場のラティアに声をかけた。



「ラティア、もう大丈夫そうだ」


「え? そうなのですか? まだ実際に始まってそう経ってないように思えますが……」


 確かに俺たちが“ペットボトルにローションを入れて、送って”を始めて1時間もかかってないだろう。


 だが――








『――……フッ、フフフッ。最後はナメクジの体液まみれ。私、一体何のために異世界に来たんでしたっけ』


『カ、カンナ様!! 大丈夫です!! カンナ様は凄いことをなさったんですよ!? Aランク依頼達成じゃないですか!?』


 DDの置いてある前まで戻ってみると。

 画面には、体内で爆弾でも爆発したのかというくらいに、あちこちにナメクジの死骸や体液が飛び散っていた。


 そしてその中で悲し気に佇む織部。

 サラは何とかその瞳に光を取り戻そうと必死だった。



「本当ですね……終わってしまってます」


「……一応作戦は成功ってことで、いいんだよね?」


「ああ……」


 これが、ポーション――薬草の成分によるものなのか。

 それともローションが膜のようになって、溶解液が触れることを防いでくれた結果なのか。

 

 それはどちらかは分からない。

 わからないが、ポーション・ローションはそのどちらをも兼ね備えていたのは確かだ。


 なので、あの溶解液がどういう内容のものだったとしても、それは特に関係ない。


 

 この虚しい光景を前に、そんなことはもう意味を成さなかった。







「――あっ、でしたら、余ったローションは私達で使ってもいいんでしょうか?」

 

「……いいんじゃないか? もうあっちはいらないだろう」 


 

 もう何でもいいんじゃないかと、気軽に答えてしまったが。

“この後残ったもので、ラティアが美味しく頂いちゃいました!”みたいなことに、ならないよな……。




 俺はそんな場違いな感想を抱いたのだった。



これで一応織部さんとサラが次の街へと行くための障害を排除し、功績を上げました。

と、言うことは……。


どういうことなんでしょう?(再びすっとぼけ)



すいません、今回の話で織部さんの戦闘回を終わらせると予告していたので、頑張ったら疲れました。

感想返しはまた明日以降、順次行っていきます。


ちゃんと目を通してはいますので、しばしお待ちを!



ご評価いただいた方が831人に。

1000名という数がかなり現実味を帯びて近づいてきました。

本当に嬉しい限りです!


ブックマークの件数も7478件!

あと少しで7500件に!

10000件まで後1/4というところまで来ましたね!



本当にありがとうございます!


このお話は、勿論私も書く努力はしていますが、それだけでは絶対続きません。

そこまでモチベーション高く維持できませんので。

それにも関わらず続いているのは偏に皆さんにご声援・ご愛読頂いているという事実を実感できているからにほかなりません。


今後も、ご声援、ご愛読頂けましたら嬉しいです!

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― 新着の感想 ―
[一言] 好きな男が新しい奴隷の女を連れてくるためにいやらしい液体を浴びまくって頑張った織部さん。 かわいそう。かわいい。
[一言]  > 「ああ……正に『ポーション・ローション』だな――よし!」 ……うん、ポーションとローションって似てるよね? > 『“分かってる”!? 私が“ああ、温かいローションか、それも新海君の心…
[良い点] 織部たちが次の街へ……ということは?3人目が?
感想一覧
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