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43.お約束、みたいになってるけど!

日を跨いでしまい申し訳ありません。

夜から書き始めるとどうしても遅くなりがちで。


では、どうぞ。


『見ちゃダメです、新海君っ!!』



 織部のかつてないほどの悲痛な叫びが耳に届く。

 何かとんでもないことでもあったんじゃないか。

 

 そんな不安が自分の中で駆け巡る。

 

 思わずDD――ダンジョンディスプレイを掴み、画面を凝視した。

 して、しまった。


 織部の言葉の意味が、頭の中で形作られる前に。



「無事かっ!?」



 画面に向かって叫ぶ。

 


『無事ですっ!! 無事ですから、一旦――』


  

 織部から返答があったことで、命に関わることではないのだと一先ず安堵した。

 ただ、画面には未だ誰も映らない。


 場所としては、俺たちが攻略したあのダンジョンのボスの間に似ているが……。



『っ!? しまっ――ああ!?』



 聞こえてくる声の様子からして、織部が何かミスったらしい。

 クソッ、今織部の傍にいてやれないことがもどかしくなってきた。



 そこに――





『――ブニュニュニュニュ!』




「うげっ」


「っ!!」 

 

「……出たね」



 ようやく画面に映ったのは、巨大なナメクジだった。

 青汁の濃い部分を塗りたくったような気持ち悪い体色をしている。


 そして何と言っても目玉が8つある。

 グロい。

 

 ただひたすらにグロい。

 


「あれが……キングスラッグか」


 今回、織部達の討伐対象があの大ナメクジである。


「うん……Aランクダンジョンとかだとよく見かけるらしいけど、人里近くまで湧いてくるのは稀だよ」


 リヴィルが隣でその知識を提供してくれる。

 ただ、リヴィル自身も本物を見るのは初めてらしい。


「見た所ダンジョン内っぽいけど、多分外ではこれの子分たちがうようよしているはず」


「とすると、織部達はボス戦中ってことか。他の雑魚敵は別に相手する人がいるのか、それとも……」

 

 既に織部達が片付けた後か。

 どちらにしても、今一体どういう戦局なのか。



「当の本人たちはどこに――って!?」


 

『ブヌヌヌヌ……』



 近づいて来てる!?

 やべぇやべぇ!!


 画面越しのことだけど何か普通に怖いんだけど!!



「おいっ、これ――」



 大丈夫なのか、そう言おうとした時――







『――はぁぁぁぁ!! 【シールド・ライト】!!』



 



 画面とモンスターとの間を隔てるように。

 織部が割って入って来た。


 勇者の衣装に変身している織部は、半透明な壁を展開。

 その城壁程の大きさがあるシールドで、大化けナメクジの突進を見事防いで見せた。 


 その背中がこれほど頼もしく見えるとは。



 織部、やっぱり勇者としてちゃんと頑張ってんだな。

 俺は織部のことを改めて凄い奴なんだと思った。




『すいません新海君、少し怖い思いをさせました。でももう大丈夫。私が――』




 シールドを維持しつつ、安心させるように振り返った織部を見て、俺は――







 ――やっぱり痴女か。






 そう思ってしまった。

 





「……服、虫食いだらけになってんぞ」



『あぁぁぁぁぁぁ!! み、見ないでください!! こんな私を見ないでぇぇぇ!!』



 忘れていたというように、また織部は渾身の叫び声をあげていた。




□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆ 



 溶解液。

 端的に言うと、それがこのモンスターの一番厄介な部分だった。



 本当はあの8つあるギョロギョロした目も物凄く面倒なんだが。


 それは織部の【光魔法】と“白グローブ”で対応できると聞いた。

 多重詠唱による連続魔法も、魔力封じを得意とする織部の戦闘態勢に不備はなく対処可能だ。


 なので、基本的にはあの溶解液さえ何とかなれば攻略できるモンスターなのだが――



「何で見事に服の部分だけ溶けてんだよ!?」



 あの溶解液、普通に人体も触れたら溶かすって言ってなかったっけ!?

 なのに何で器用に服だけ溶かすの!?


 そもそもが際どい衣装だったのに、更に痴女度が増してるぞ!?



「本当に見事に溶けてますね……この状況でなければ悔しがっているくらい見事にいやらしい外見になってます」


「……凄い、その、えっちぃね。カンナ」


 ラティアとリヴィルも驚きの解け具合である。

 本当に大事なところ以外が液で溶かされていて、アクシデントでそうなってしまったという感じが上手く表されていた。


『だってしょうがないじゃないですか!! あのモンスター何か無茶苦茶上手く絶妙な場所に液を吐くんですもん!! 狙って卑猥な攻撃してません!? もう――あっ!?』


 

 話ながら器用に戦っていたが、集中しないといけないのか、再び前を向く。



「大丈夫か!? おりっ――ブレイブカンナ!?」


『今何で言い直したんですかっ!? “織部”で良いですよ、新海君、この状況で喧嘩売ってませんか!?』


 いや、変身してるから身バレしたらいけないと気遣ったんだが。


「兎に角、戦ってみて分かった情報をくれ! 何でもいい!!」


 戦闘を継続するブレイ――織部に声をかける。


 すると、これまた別方向から声が返ってくた。



『あのモンスターは! っ! 体内に、魔法石を宿した! 生きた【結界】なんです!!』



 この声はサラか!!


 息を切らしながらも懸命に織部を支えるエルフの少女。



 彼女もまた画面に現れた際には、随分とその神官服の生地面積を溶解液に食い破られていた。


「魔法石に【結界】……あれか!!」


 俺はラティアの方へと顔を向ける。

 するとラティアも同じことが思い浮かんでいたようで、視線が合い、頷き返した。

 

 確か、志木と一緒に皇さんを助けに行ったダンジョン。

 あの攻略の際に同じようなものがあったはずだ。


 それをラティアに壊してもらって、それで攻略ができた。



『なので、カンナ様が体内に入って直接、それを潰さないと、このダンジョン攻略が出来ないんです!!』





 そこから、織部があのボスモンスターを牽制している間に。


 サラが手短に戦闘で知りえた情報を纏めて伝えてくれた。

 このダンジョンが、そもそも次の街を苦しめるモンスターを毎年生み出し続けている元凶だと突き止める。

 そこで、今、織部とサラは二人で攻略を決行。


 それ以外にも、必要だと思われることを素早く話していった。




「――なるほど……分かった。こっちでもできるだけ直ぐに何か手はないか考える」


『はい! よろしくお願いします! それまで、一度、引いて時間を稼いでおきますね!!』



 サラはそう言ってDD画面付近を離れていった。

 この通信を繋いだ今が、アタック3回目だという。

 


 様子見1回。

 そして軽く攻撃を仕掛けるので1回。

 

 攻撃、離脱、攻撃、離脱を繰り返している。

 なので、持ち堪えることもそう難しくはないそうだ。




□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆




「――二人とも、どうだ?」



 事前に話し合っていた様に、DDの通信は繋いだまま。

 俺は二人に向き直り、考えを聞いた。



「うーん……私の“導力”なら関係なくあの分厚い皮膚も切り裂けるんだけど」


 リヴィルは何が攻略の糸口となるか分からないと、できる限り思ったことを口にしてくれる。


「まあな……ただ織部達を見る限り、二人で攻略しようとしてる」


「そうなると……どうしても火力不足でしょうか」


 織部達がモンスターの皮膚を傷つけて、そこから侵襲することを考えていないことからすると。

 ラティアの言う通り一撃二撃では押し切るのは難しそうだと判断したから。


 だから一撃で解決できそうな体内侵入という作戦を、念頭に置いているのだろう。



「“ポーションを飲みこぼした部分は、その時だけ溶けなかった”っていうのは、何かヒントになりそうだけど」



 リヴィルが言うように、サラが伝えてくれた情報の中には、そのような話があった。

 確かに、それは何か攻略する際のカギになるような気はするが――


「ですが、ただの水分では魔法の余波などですぐに乾いてしまいます。防げたのも偶然でしょう。服以外も溶かす可能性がある以上、長く体の表面に残ってくれないと……」



 そこだ。

 織部が相手の体内へと侵入して退治することを想定する以上、織部の身の安全を考えないといけない。



 下手すると溶かされるのは服だけに留まらない可能性もあるからな。



「“ポーションの効果”が機能したのか、それとも“水分”が膜のようなものを作ったのか……」



 どちらかに絞れないと、対応策も中々思い浮かばない。

 



『――ブニュニュゥゥゥ……』




 DDの画面では、石造りの大広間を歩き回る大化けナメクジの姿が。

 息を潜めて隠れている織部とサラを探しているのだろう。


 二人も俺たちから何とか見える位置にいるが、全く見つかる気配はない。



 なるほど、前に2回の攻撃を仕掛けた際に、それはちゃんと確認済みのようだ。




「カンナが一番危ないけど……サラも、気になるよね」


 リヴィルが画面に目を向けながらそう呟く。

 確かにそうだろうな。



「まあな……織部が体内に入ったら、外で標的になるのは彼女しかいなくなる」


 そうすると。

 溶解液の対策は織部だけじゃなく。

 サラに対しても、してあげなくてはならないわけだ。





「――“ポーション”……“膜”……“持続性あるもの”……」



「……ラティア?」

 

 

 俺たちの話を聞きながら、ラティアは何かを考え込むようにして黙り込んでいた。

 そして何か大事な要素らしい言葉を呟いていく。




「――行ける、かもしれません」




 ラティアは、立ち上がり、俺とリヴィルの目を見た。

 力強く頷いたその表情からは、少しだけ不安はあるものの、自分の考えに自信を持っているということがしっかりと窺えた。




「ご主人様、リヴィル! 揃えて欲しいというか、用意してほしいものがあります!!」

次回でこの話も決着つけるつもりです。


それが終わると、多分次にダンジョン関連の話をして、逆井さん達との絡みになって……という予定になってます。


3人目?

はて、何のことやら(すっとぼけ)


本当は今日も投稿お休みしようかなという誘惑に駆られましたが、そういう時こそ踏ん張るのも大事ですね。


王道中の王道みたいな話を書いた方がいいのかな、とか色々書きたい物もあるけど上手く平行できなし、とか考えたりもしますが、とりあえずは書いていきます。



ご評価いただいた方も819名に!

また一気に増えました、本当にありがたいことです。


ブックマーク7454件も、増えているという事実が大事です!

中には投稿しても増えない日もあるという経験もしておりますので、余計に。


本当に皆さんのご声援・ご愛読に支えられて続けて書くことができています。

ありがとうございます。


今後もご声援、ご愛読頂けますようよろしくお願いします!


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― 新着の感想 ―
[一言] ローションかけるのかな?
[一言] 拡大するハーレム。誰と結婚するんだろうなぁ。それともしないのかなぁ。はっ!?異世界に行けば一夫多妻制も合法!?これは……期待してますぜ。
[一言]  エロい格好になってるはずなのにサービスシーンではなくギャグシーンと認識してしまう辺りが納得の織部さん。 > 「大丈夫か!? おりっ――ブレイブカンナ!?」 >『今何で言い直したんですかっ…
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