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404.青年のいない、初めてのボス戦……!

お待たせしました。

ボス戦に入ります。


※すいません、新海さんは出ません!


ではどうぞ。



□◆□◆Another View ◆□◆□ 



「4階層、1~3階層に比べれば随分楽だったね!」


「うん。本当に。戦闘だけじゃなくて、探索全体って意味で私たち、新海君に助けられてると思う」



 逆井の軽い調子の呟きに、赤星が割と真面目な様子で賛同する。


 

 4階層の奥深くまで進んだ先遣隊。

 きちんと横になって休んだこともあり、極めて順調にいっていた。


   

「その場にいずに、モンスターの大体の居場所や全体構造まで把握できちゃう。……改めて新海君って凄い人なのねぇ。フフッ」


「ですね。陽翔様のお力添えは直接・間接にかかわらず有難いです」


「……それはそうだけど。六花さん、何か良からぬこと、考えてませんか?」 

 


 青年が別の場所にいながらにして、自分たちに影響をもたらしていることには同意しながらも。

 逸見の意味深な笑みには不穏な気配を感じ取る白瀬だった。


 

「そんな、良からぬことなんて心外だわ飛鳥ちゃん。ただちょっと、新海君と二人っきりで、色々と大人なお話をしたいなって思っただけで。……ねぇ、ラティアちゃん?」


「……えっ? あっ、はい。私も常々、ご主人様はもう少し異性の方とお話される機会を持つべきだと考えております」



 本人が聞いたら“これ以上になってどうすんだ……”と顔をしかめて渋るだろうが、今この場にいるのは恋する乙女のみ。

 こういう雑談で緊張を解し、リラックスする時間も重要だろうと、ラティアも乗っかったのだった。


 ……青年が攻略に直接関わらないということは一方で、こういう副次的な効果も出てくるらしい。





「――皆、チハ達が来たよ」



 5階層へと通ずる階段前。

 赤星の声とともに賑やかさが増す。



「おはようございます! 律氷ちゃん、梨愛先輩っ! チハちゃんが来たからには、もう安心ですよ!」


「うぃ~っす、応援に来ました~。……フレー、フレー、梨愛ちゃん。頑張って頑張って梨愛ちゃん」 


「ツギミー、増援的な意味じゃなく、マジの応援だけだし!?」


「あ、あはは……。“頑張れ頑張れ”じゃない所に他力本願さが強く窺えるよね……」



 お互いに、想定していたよりも早くに合流をすることができ、笑顔でその無事を確認しあう。

 特に桜田達は一切の戦闘を経ていないだけあって、一際活力に溢れていた。



「ラティアお姉ちゃん、お疲れ様! 4階層、どうだった?」


「ロトワ達、戦闘が無かったでありますから、ピンピン・ビクンビクンであります!」

 

 

 元気一杯のルオと、腕まくりしてアピールするロトワ。 

 二人がやって来たこともあり、更に集団は明るさを増す。


 ……ちなみにロトワの独特な擬音語について、犯人は“ウチは悪くねぇ! お兄さんが悪いんだっ!”と心の中で意味不明な供述をしている模様。

 


「樹木のモンスター、それにミノタウロス、後はジャイアントフロッグ。この3種が出てきました。強さは……3階層までと変わらないように見えましたね」 


「なるほど……つまり牛は美洋(みひろ)さんの得意な柄で、飛鳥(あすか)ちゃんはカエルさんの吐く液体でドロドロになってそうってことでOK?」 


「美桜ちゃん!? 牛柄が得意って何の話!? 私確かにホルスタイン柄のビキニとか着るけど!?」


「液体でドロドロって……はぁぁ。美桜、あんた私で変態チックなこと想像すんの止めてよね……」



 笑いも起こってリラックスした後は、きちんとダンジョンに関する情報の共有・擦り合わせも行われたのだった。

  


□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆



「陽翔様や御姉様のいないボス戦……緊張、しますね」




 一行が合流を果たし、いよいよ5階層へとやって来た。

 そして彼女らや青年が睨んだ通り、待ち受けていたのはボスの間。


 一番頼りになる青年や志木の不在はやはり、彼女らに緊張と不安をもたらしていた。



「フフッ、大丈夫だよリツヒ! 危なかったら、ボクもロトワも、それにラティアお姉ちゃんもいるから!」

 



 ラティア・ルオ・ロトワがそれぞれ抜けて、班が再編された。 

 ルオ達は保険という立ち位置であることや、既に幾度も経験済みということもあり、ボス戦に向けて気負いはない。


   

「さっ、後もうちょっとだ。頑張ろうね」


「ハヤちゃん元気だねぇ。……まぁ、アタシも、かおりんと新海がちょっとでも安心できるように頑張る! ……あっ、あとなっつーも!」


「……立花さんのついで感」


「フフッ。まあいいじゃない飛鳥ちゃん。……律氷ちゃんも、頑張りましょうね?」


「はい!」



 逸見を司令塔とする先遣隊は、このまま5人で構成することになった。

 後発隊が3人なので、4人ずつを二班に分け直すことも可能だったが、空木がこのままで行こうと提案したのだ。



「……まぁ、ずっと休ませてもらってたからねぇ。その分は働かないと」


「おぉっ!? 珍しいっ!! 美桜ちゃんが、美桜ちゃんがやる気になってるよ!!」


「美洋さんっ、ボス出現の直後、注意がいりますね! チハちゃんの近くから離れないでください! 美桜ちゃんのせいで天変地異が起こってもおかしくありません!」



 空木が珍しく働こうと重い腰を上げると、同班である飯野・桜田からこの扱いである。

 ……普段からどう思われているか、お互いを知るいい機会になったのではないだろうか。




「……皆っ、来るよ!!」 



 一番索敵に優れる赤星が叫ぶ。

 全員がその声に応じるようにして構えた。



 直後、広間全体を覆うヒリつく雰囲気の中、全てを照らすような光が落ちる。


 赤星やロトワ、それに桜田などは他の者よりも早く、この場に増えた存在の気配を察した。

 


 3つ。

 今までの階層で戦ったモンスターたちよりも、強い存在感を放つものが。

 

 


「っ! ――美桜ちゃんっ、敵っ、3体っ!!」


 

 一番に叫んだのは桜田だった。

 ルオとロトワが抜けて3人、少数の班となった彼女たちの司令塔へと指示を仰ぐ。



「うわっ、デカい蜂の巣……あれは梨愛ちゃんたちの班に任せる!」



 瞬時に状況を把握。

 3体の内とりわけ大きな1つ、黄緑色をした気味の悪い巣は他班にと即断した。



知刃矢(ちはや)ちゃんはあのデカい茶色の猿! ゴリラ的な奴を相手して。――美洋さんっ、援護するから、青色のヤバそうなカニを牽制! 無理して前に出過ぎなくていいからっ!」 

 


 矢を射かけながらも、空木は素早く声を飛ばす。



「了解っ! おサルさん、覚悟っ!――やあぁぁぁぁ!!」


 

 ノームから贈られた特殊な槌を、桜田が勢いよく振るう。

 


「GIRAAAAAAAAAAA!!」



 狙うは両腕が肥大した、巨大なゴリラのモンスター。

 空木は身体的特徴を見て、桜田の扱う武器なら相性が悪くないと踏んだのだ。


 桜田が身に纏う、踊り子のような極めて露出の多い衣装。

 それも茶色コングの欲望を刺激したのか、注意は完全に桜田一人に向いた。



「そやぁっ! ――わわっ!? 泡っ、泡吹きましたよ!?」


「BKURRRRRRRRR!!」



 一方、巨大な斧で叩き切ろうとした飯野はしかし、もう一体のボスに上手く近寄れない。

 水色をした大きなカニは口以外にも、ハサミの部分から泡を吹きだす。


 斧を上下に、時には左右に。

 とにかくブンブン振り回して泡を叩き、潰し割る。



「美洋さん、それでいいです! 知刃矢ちゃんや、梨愛ちゃんたちの所に泡の攻撃を通させないで!!」



 空木もドンドン弓で矢を放っては泡を割るのに加勢する。

 水色ガニが無理して前に出てこないのを見て、物理攻撃よりも特殊な攻撃に特化していると踏んだ。


 

 ――倒す必要はない。うちら3人で2体をコントロールできれば、梨愛ちゃんたちがその間に1体を必ず潰す。 



 空木は俯瞰(ふかん)で、ボスの間全体の戦況を把握する。


    

 左半分では、逆井達が5対1で、黄緑色をした蜂の巣と戦っていた。

 あちらは精霊の装備持ちが赤星・皇と2人もいる。


 更に逆井は実質、志木も含めたシーク・ラヴの中で、ずば抜けて戦闘センスがあった。

 

 そこに負けん気が強く体力もある白瀬に、全体を統率できる視野と知性を持つ逸見がいる。



 ――大丈夫、うちらは疲労0で来たんだから。3人で2体の時間稼ぎくらい、可能でしょ。それに最悪、お姉さんたちもいるしねぇ。



 援軍として体力が有り余っている状態に加え、保険のラティアたちがちゃんと控えて戦況を見守ってくれている。

 だからこそ、空木は普段よりもリスク多目に見積もって、戦略を考えることが出来ていた。



「――うわっ、ヤバッ!? 美桜ちゃんっ、何かおサルさんの腕っ、光りだしましたけど!?」


「っ! 美洋さんっ、ちょっと一人で頑張って! 無理は禁物っ! いのちだいじに、で」



 茶色ゴリラは、大樹の幹のような太い腕を発光させ始める。

 怒りの声を上げながらのそれは、何か次に大きな攻撃を予感させるモーションのように見えた。



 ――えっ、必殺技ゲージの充填でもしてんの? 分かり易っ!  

 


 ゲーム大好き空木は簡単にそれを見抜き、班としての戦い方を微修正。

 飯野にしばらくの間は一人で対応させ、その間に桜田を援護する。

 

 矢で目を狙い、チャージの邪魔をすると、光は徐々に収まっていった。

 それが終わるとまた原則形態に戻す。


 こうしてボスの間の右半分、土と水を司るボスを相手に、上手く戦況を管理することが出来ていた。


 


「っし! ハヤちゃんナイス切り込みっ!! ――律氷ちゃん、魔法、決めちゃって!!」



 ――そしてそれは空木の狙った通り、左半分、先遣班の戦いを圧倒的に有利に進めさせたのだった。


次でボス戦は終われますね、よしっ!


なんか、新海さんが出てない回だと、ツギミーが主役みたいな扱いになってる?

……おかしいなぁ。



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なにとぞ...なにとぞ続きをぉ....
好きな作品なので続きを書いてもらえると嬉しいです
続きが欲しい…頼む…!!
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