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396.心中お察しします……。

お待たせしました。


ではどうぞ。


「ほれっ、ルオ、イタズラはダメだからな」



 ラティアとの気まずさを振り払うべく、主犯だろうルオを捕獲した。

 俺が脚を開き、そこに出来たスペースに座らせる。

 

 相対的に俺がコタツに入れる部分は少なくなるが、一方でルオの体温が直ぐ側に感じられるから、トントンだと思う。



「あぅぅぅ……ご主人に、捕まっちゃった」



 言葉の割には、ルオからは嫌そうな印象を受けない。

 むしろ嬉しそうな、それでいてくすぐったそうな雰囲気さえ窺える。


 ……悪いことをして捕まったのに嬉しいとはこれ如何に。



「……あー、私、ラティアの恥ずかしい映像、マスターに送っちゃった。これはマスターに捕まって叱られちゃうなぁ~」 



 何を思ったか、リヴィルが棒読みで自身の罪を告白してくる。

 ……いや、それ、既に捜査機関(おれ)にバレてるから。

 

 自首する随分前から勝手に自白してたじゃねぇか。



「っっ~~!! リヴィル!? 私の恥ずかしい映像って――やっぱりあれ、ご主人様に送ってたんじゃないですか!!」



 そして向かいに座るラティアが再び顔を真っ赤にする。


 可愛らしく怒る姿に、リヴィルは微笑ましい物を見る顔をしていた。

 ……全く反省していないな。


 犯人の自供がとれても、誰の幸せも生まないこともあるんだな……。 

  


「えーっと……それを言うなら。あたしもこの前、ロトワが寝ぼけたフリして隊長さんの部屋に入って行ったの、止めなかった罪があるな、うん。これは、やっぱり隊長さんに捕まって怒られるかなぁー?」


「はわっ!? れっ、レイネちゃん!? あっ、あれは違うであります!! 本当に疲れてくたぁ~ってなってて、それで間違えただけで!」



 レイネも自分を捕まえて欲しいのか、自白の体を装ってロトワを巻き込み事故にしたいのかどっちなんだ……。  

 


「わっ、悪いことをしたのは、ぼっ、ボクだからね! ご主人は、ボクを捕まえてなきゃで手が離せないんだよ、ねぇ!?」


 

 リヴィルとレイネの言で、ルオは慌てたように俺の腕をとり、自分の体の前へと持って行く。

 あの……これだと後ろから抱きしめるような形になってしまうんですけど。

 

 ……凄く恥ずいです。


 

 まあでも、遊び相手が奪われるのを抵抗して止めるみたいなもんだろ。     

 子供の時にはよくある奴だ。



 ……俺には奪い合う程の遊び相手なんていなかったけどね。

  



□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆



『――はい、というわけで! “候補生vs1期生!! ガチバトル鬼ごっこで勝ち取れ、2期生のイス!!”、よーい、スタートッ!!』



 テレビ画面では、ゲストとして呼ばれた女性アイドルが始まりの合図を告げている。

 探索士・ダンジョンとは全く関係ないアイドルグループ、その中で人気の女性だ。

 バラエティーなどで特に露出が多く、テレビ的なNGがないことから製作陣に重宝されているらしい。



『おぉっと!? 早速情報が入ってきました!! ――赤星・白瀬の“紅白ペア”が逃走中の候補生一人を確保っ!! えっ、早っ!!』



 自分もアイドルだが他のアイドルグループ、特に“シーク・ラヴが大好き”だと公言していた彼女が、驚きと共にゲームの動きを伝える。


 番組は撮影済みの動画を編集し、それをスタジオで改めて出演者が視聴し、コメントするという構成となっている。

 画面が切り替わり、スタジオにいる同じ女性が短く感想を口にしていた。


『いや、本当始まったばかりだったから、これ、凄くビックリしちゃって。“赤星ちゃん本物の鬼かっ!?”って思っちゃいましたよ』

 


「うわっ、本当、ハヤテの奴、えげつないな……人の動きじゃねぇぜ」


「捕まった人も可哀そうだね……ハヤテお姉さんに目を付けられたんじゃ、直ぐに確保されちゃうよ」



 この企画のために貸し切ったという無人島の砂浜が直ぐに映し出される。

 

 丁度捕まえる直前から再生され直す。

 必死に逃げる、候補生の少女。

 

 それを鬼役の赤星が、物凄いスピードで追いつき、タッチ。


 始まって1分としない確保劇となったのだった。




「ペアのアスカ様は微動だにせず……やはり優勝候補はハヤテ様のチームですかね?」


「でもアスカはあんまり大きくは動かなそう……。――マスター、あれって体操服、だよね? 胸の大きさもあって、何か動き辛そうじゃない?」



 おぉっと、リヴィル。

 白瀬の胸へのディスリはそこまでだ。



 白瀬は巨乳。

 三乳士の一角。


 不遜(ふそん)な表情で胸を持ち上げるように腕組してるのも、自信の表れ。

 隠し事がある人は無意識に自分を守るような仕草が出てしまう、的な奴では決してない。


 いいね?



『これで赤星・白瀬の“紅白ペア”に1ポイント入ります! ――さてっ、改めてルールを説明しておきましょう!』



 画面が切り替わる。

 細かく何分割にもされた枠の中に、無人島を逃走中の少女達が映し出された。  

   

 

『ただいま画面上に映っているのは、100名を超えるシーク・ラヴ2期生志望の少女達! 先日発表されたばかりの選抜ポイントを獲得のため、制限時間一杯までの逃亡を目指します!!』


「合計12人だっけ……? これ以外にもまだまだ“なりたいっ!”って奴はいるんだろ? 狭き門だよな……」


「リツヒからは“最大で”って聞いてるよ? だから、もしかしたらもっと厳しい道かも」



 番組内のゲームが本格的にスタートしてからは、ルオもレイネも落ちついていた。


 無人島という大きな土地を貸し切っての鬼ごっこ。 

 スケールの大きさがあり、ワクワクして見ているようだ。



『対するは説明するまでもない程に今や大人気となった彼女達――シーク・ラヴ1期生のメンバーです!!』 


「あっ、お館様っ! また、またミオちゃん映ってるでありますよ!!」



 画面が6分割され、その内の一つに、ロトワの大好きな空木がいた。

 

 12人いる正規メンバーが2人ずつ、計6つのチームに分かれて鬼役を担当。

 彼女達は彼女達で、捕まえた候補生達の数に応じて勝者を競っているのだ。


『優勝チームは既に配付されている“1期生投票権”を更にプレゼントします! 自分が推す候補生を2期生にするために、奮って捕まえに向かっているようです!!』



 2期生枠12人の内、2人分の枠に“1期生からの投票ポイント”というものがあった。

 つまり赤星や空木達は、捕まえれば捕まえる程、自分が好きな候補生を2期生へと推す投票権を多めに得られるから頑張る。

 

 候補生達は候補生達で、少しでも長い時間逃げてれば、それだけ長くテレビに映ることが出来る。


 それに――



『鬼の様に運動能力がある追跡役の彼女達から逃げられれば、それだけダンジョン探索への適正もあると“ダンジョン適正枠”での選抜にもグッと近づきます!! 皆、頑張って逃げてね!!』     



 選抜枠は6つの基準に2人分ずつ割り振られている。

“1期生からの投票枠”で期待できないと思っている少女達は、だから必死で逃げて、運動能力をアピールできる絶好のチャンスなのだ。



「ミオお姉さんがやる気を出せば、このチームが一番の優勝候補だと思うんだけどな……」


「“かおりんと愉快な仲間ペア”……このペア名からしても、空木がやる気の欠片(かけら)もないのが窺えるなぁ」

 

 

 他のチームはドンドン逃げ足の遅い研究生達を捕えていくのに。

“かおりんと愉快な仲間ペア”だけは、未だに確保数が0だった。


 

『ちょっと美桜さん!? 何で抱き着くの!? 追いかけられないでしょ!?』


『花織ちゃん、ウチ、体操着で鬼ごっこなんて恥ずかしいようー。ウチとユリユリしてよう~』


 

 ペアである相手――志木にしがみ付き、棒読みでやる気無いですよアピール。


 むしろ妨害している節すらある。

 ペアの総合的なスペックからしたら、志木と空木ペアが優勝候補の筆頭ではあるのだ。


 ……だがだからこそ、空木は足を引っ張るような行動に出ているのかもしれない。



「うぅぅ~ミオちゃん、おさぼりさんでありますか?」


「あ~ロトワ。あれは要するに――“うぬら如きに全力はいらん。どれ、ハンデをくれてやろう。何分欲しい?”……って感じの奴だから、うん。空木がデタラメにサボってるわけじゃないから、あんまり気落ちするなよ?」



 悲しそうにするロトワをフォローするのが大変だった。 


 空木ぃぃぃ……。



□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆



『おぉっと!? ここでお助けアイテムが入った宝箱を発見!! 逃走者No.22は……ややっ、夏生(なつき)さんです!! さてっ、中身は何が入っているのでしょう!?』


「シイナ様、早く捕まりたそうなお顔をなさってますねぇ……」

      

「一秒でも早く体操服から着替えたい気持ちがヒシヒシと伝わってくるなぁ……」



 ゲームが適度に進んでいく。

 中だるみ回避のためか、逃走者のためにアイテムが置かれていたらしい。


 鬼役に、知り合いであるシーク・ラヴのメンバーが(かたよ)っているので、そちらに気が行きがちだった。


 だが椎名さんを見て、正式には候補生の肩書だったことを今、改めて再認識する。



 鬼役も逃走者も、このクソ寒い中、競技衣装として体操服を着用していた。


 ただでさえ“2X歳”などと年齢イジリされるのを嫌う椎名さんだ。

 若かりし学生時代を嫌でも思い出させる“体操服”など一早く脱ぎ去りたいに違いない。



「わざと捕まるのはリツヒが許さないからねぇ……うんうん、わざと捕まるのはダメだよ」

  


 ルオが俺の目の前でしみじみとそう呟く。

 ……さっき自分は簡単に捕まってませんでしたかね?


 どうなってるの。


 まあそれは良いとして……。



 椎名さんは、立花や光原姉妹と同じく、ダンジョン探索で戦力となるため、地道な努力を繰り返していた。


 志木や皇さんに付いて行って、ダンジョンでモンスターに攻撃を加えることを繰り返し繰り返し……。


 その甲斐あってか、他の候補生・志望者よりも明らかに上手く逃げることに成功していた。


 ……それが皮肉にも、“椎名さん・体操着スタイル”を世間へと(さら)し続ける羽目になっているが。



「ロッカやミヒロも普通に体操服、着てるのにね。シイナ、もっと自分に自信持てばいいのに」


「だよなぁ……。あっ――」



 画面内、お助けアイテムの正体を見たレイネが、小さく声を上げる。

 と同時に、宝箱内に設置されていたカメラから、椎名さんの顔がドアップで映し出され――



『…………』


「あらっ、可愛らしい“ブルマ”ですね」


「ニーソックス付き。……どうやら別の衣装が、お助けアイテム、だった?」



 ――うわっ、凄い絶望した顔!!


  

 中にあった1枚の紙を拾い上げ、更に椎名さんの表情からは生気が抜け落ちていく。


 逃走に役立つアイテムを手に入れて、逆に気力を奪われるとは、何たる逆転現象。




 書かれていた文章が、映し出される。



“温かい場所とはいえこの季節。それに汗もかいてきた頃! そこで、お助けアイテムを用意したよ! これから5分間、お着替えタイムに突入! その間鬼達は君を捕まえられない! ゆっくりと着替えて英気を養ってね!”



 途端に、女性エキストラ数人がやってきて、椎名さんを囲う。

 円形になるカーテンを足元から持ち上げて広げ、カメラを含めた外界からの視線を遮断。

 

 椎名さんの、強制お着替えタイムが始まってしまったのだった。



「あぁぁぁ……」



 椎名さんの気持ちを思うと、俺も同様の絶望感に支配される。

 椎名さん……心中お察しします。



 ……ですから、放送後は俺に当たらないでくださいね?

 

 今の内にスマホの電源切っておこう……。



「コスプレの衣装自体がお助けアイテムってよりも、それに着替えるための時間がお助け効果を持ってるってことなんだろうね」


「ははっ、シイナの顔、凄かったな。ブルマ、穿けば可愛いと思うんだけど、そんなに嫌なのかな?」


 

 普通の体操着でさえコスプレ感が強いのに、ましてやブルマは……という心境なんじゃないかな?


 

 まあ既に撮影・編集済みのものだ、どうこう言っても結果は変わらない。

 後は椎名さんが早く捕まって退場できることを祈ろう。



 それは置いておいて――




「…………」



 さり気なく、視線をラティアやリヴィルに向ける。



「…………」


「…………」



 二人も気付いたらしく、レイネに勘付かれないよう小さく頷き返してくる。


 

 今のレイネの発言。   

“ブルマ、穿けば可愛いと思うんだけど”。


   

 これは、“レイネが地球(こっち)に来て1周年記念”で何をしようか考えていた俺達に、大事なヒントとなった。


 以前、レイネは動画内で、桜田相手に“可愛い服を着たい”と言っていた。


 


 ――つまり……“レイネ、1日コスプレDay”もアリか?


 

椎名さんが読心術の異能力を手にしたら、真っ先に死ぬのは新海さんだと思う……(白目)



もう発売から1週間ですか……凄く時間の流れが速く感じますね。


ですが勿論、まだまだご感想等、お待ちしております!

ゴールデンウイーク、長い自宅時間のお供にお一ついかがでしょうか?


てつぶた先生が描いて下さった、最高にえちちでカワイイヒロイン達がご覧いただけますよ!!


是非、よろしくお願いいたします!!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] キャラが増えすぎて整理しきれないし、1キャラの登場が薄まって内容も相対的に薄くなった。 アイドル活動ばかりで、序盤にあったダンジョンやばいっていう緊迫感が伝わらない。
[一言] > 俺が脚を開き、そこに出来たスペースに座らせる。  これ絶対入ってるよね……脚の間に! > ……俺には奪い合う程の遊び相手なんていなかったけどね。  一人しか遊び相手がいなかったんだな!…
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